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師匠(仮)〜唯一の技術持ってるのに獣になった〜  作者: 杞憂らくは
弟子のスカート生活〜師匠は嵐の夢を見るか〜
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32.過程が伴っての結果なのです。

ちょっとセンシティブな内容。


(⋯⋯⋯⋯危惧していた日が、来てしまったな)


 今は基礎数学の授業である。その授業の終了まで、あと1分⋯⋯30⋯⋯15⋯⋯10⋯⋯3、2、1、


「よし、では今日はここまで」


 数学教師のその言葉と共に、終了の鐘が鳴った。


(急げ!)


 ベリルは布袋を抱え、一目散に教室から飛び出した。身体強化魔法を使い、誰の目にも止まらずに廊下を走り抜けた。

 そして、辿り着いた先は運動場近くの外トイレである。

 勘の良い方ならお察し戴けるだろう。2-Eの次の授業は、基礎体練の授業である。ベリルはこのトイレで着替える為に教室を飛び出したのだ。

 幾らなんでも、流石に女子更衣室で着替える訳には行くまい。女子の着替えを見る訳にも行かないし、女子の前で着替えるのも問題である。

 顔がいくら女顔だとしても、ベリルが脱いだら流石に男だと知られてしまうだろう。なにせ下着は男物なのだから。


(⋯⋯⋯⋯いや、別に、勿体無いとか、考えてないし⋯⋯)


 女物の下着ならば、堂々と更衣室に潜り込めたなぁ、と、一瞬頭に過ったが、無理矢理振り払う。もし男と知られて、着替えを共にしていたなんて事実が有った場合、ベリルの社会性信用は地に落ちる。

 これで良かったのだと、己を納得させながらトイレの個室で体練用のキュロットスカートに手早く着替え、着替えた制服をキュロットスカートを入れて来た布袋に簡単に纏めたベリルは、その布袋をトイレ近くの大木の上へ置いた。此処ならば、盗まれる危険性も無いだろう。


(でも、まだ授業の時間まで間があるな⋯⋯)


 呼び止められてはならない、見咎められてはならない、そんな思いで此処まで走り抜けた。お陰で随分早く支度し終わって、手持ち無沙汰になってしまった。何せ前の授業で運動場を使っていた生徒達が未だその辺を歩いているのだ。

 これでは運動場へ行っても悪目立ちするだろう。あまりこの周辺を回った事も無かったので、ベリルは少しぶらつく事にした。

 屋内運動場の隣は屋外運動場があり、その裏手には囲うように小さな森が広がっていた。


「あ、コケモモ!」


 その森の中、ベリルはコケモモが成っているのを目敏く見付けた。これぞトンデモ腹ペコ胃袋。食べるものを探すのは人一倍優秀である。


(⋯⋯まだ、時間平気だよな⋯⋯?)


 ベリルは辺りを見回し、コケモモを収穫すべく森に分け入った。放課後にすれば良いのに、ちょっと味見したくなったのだ。


(うん、酸っぱい!)


 ひとつを摘まんで口に入れると、ほのかな甘味と強烈な酸味でいっぱいになった。


(ジャム、作ろう。砂糖買ってもらわなきゃ)


 ひとつだけだと思っていたのに、ついついもうひとつ、もうひとつと口に入れてしまう。木の実の生食は、過ぎると腹痛を起こし兼ねないので、「これで終わり!」と、強く思い、ベリルは立ち上がった。まだ時間はあるが、此処で食べ続けていたら遅刻する可能性もある。

 それでも何となく、キュロットスカートのポケットにひとつ忍ばせたのは、まだ食べていたいと云う願望の表れだった。

 運動場へ行ってももう問題は無いだろうと、森を出ようとした時だ。


「⋯⋯ち、違います⋯⋯」


 女の子の声が何処からか聞こえて来た。


(どっかで聞いた声だな⋯⋯?)


 何故かその声が無性に気になり、ベリルは声の主を探す事にした。やはりまだ時間が余っているので、暇だったのである。

 声を辿って行くと、どうやら男もいると分かった。2人は何か言い争っている様だ。


「何を言ってるんだ?要はお前、オレの邪魔をしようと言うんだろ?」

「どうしてそうなるのですか⋯⋯!」


 2人は森の中、樫の大木の影でまるで隠れている様だった。


(ん?あの子⋯⋯昨日の日傘の子か?)


 女子生徒の方は、聖女に付き従っていた少女であった。近くに聖女の姿は無い。ベリルと同じくキュロットスカートを穿いている所を見ると、前の授業で運動場を使っていたのだろう。

 言い争っている相手は、教師⋯⋯だろうか。40代くらいのその男は、だらしなくジャケットを羽織り、とても教師には見えない。だが、中等部にいる成人男性は教師以外にいないだろう。⋯⋯いない筈だ。

 不審者の可能性を考え、ベリルは息を潜めながら2人を観察する事にした。


「で、ですから、聖女様を惑わせるのは止めてください⋯⋯!」

「惑わせるなんて、そんな事はしとらんよ⋯⋯人聞きの悪い⋯⋯」

「それなら選択授業、変えさせてください!」

(⋯⋯選択授業?)

「何を言ってる。そんな事をしたら、聖女サマとの繋がりが切れちまう」


 聖女の選択授業は魔法戦闘実技論だ。授業を受ける、と云うより、野次を飛ばして掻き回しているだけにしか思えないが。

 兎に角話を聞いていると、聖女があの授業を受ける事になったのは、この男が原因らしい。

 男は正真正銘体練科の教師で、学術都市(パンテオン)に来たばかりの聖女に取り入り、舌先三寸であの授業を受けさせた。聖女を取っ掛かりに聖王国に仕官するつもりなのか、ただの金蔓と見ているのかは解らないが、やはりあの授業はただの接待らしい。


(⋯⋯もしかして、エグマが頭上がらないって云う主任教師か?)


 面倒臭い事(接待)は部下に丸投げで、美味しい所だけ持って行こうと云う事だろう。汚い話である。


「聖女サマだって楽しそうだろう?聖王国じゃ中々お目に掛かれない魔法の授業なんだからな。ちょろい小娘で助かるよ」

「貴方は⋯⋯!もうドルセーラを良い様にはさせません!学長様に全てお伝えします!」

「まぁ待て待て」


 怒り心頭とその場を離れようとした日傘っ子を、その教師は自身の身体を使って止めた。


「ひっ⁉︎」

「お前もあの聖女サマには、迷惑を被ってるだろ?少しくらい良い思いしたっていいだろう?」

「は、離して⋯⋯きゃあ!」

「騒ぐなよ⋯⋯?見られるのが好きならいいけどな?」


 教師は日傘っ子のシャツに手を掛け、無体にも(ボタン)を引き千切った。

 これ以上は全年齢対象に障りが出ると判断し、ベリルは思いっ切り棒読みで声を上げた。どんな状況にも対応出来る様に、魔力を練る事も忘れずに。


「あー変質者ーロリコンだー!」

「あ⁉︎」

「大して良い顔でもないのに、自分イケてますって思ってるに違いない変態だー!」

「誰だ⁉︎そこにいるのは!」


 ベリルの煽りに反応し、教師は日傘っ子を突き飛ばしてベリルの隠れている繁みに大股で近づいて来た。

 教師は繁みに無遠慮に手を入れ、ベリルの腕を掴み繁みから引っ張り出した。


「きゃー!」

「なんだ、女子生徒か⋯⋯」


 あからさまに(わざ)とらしい悲鳴だったのにも関わらず、教師は馬鹿みたいに安堵した。それは、女子生徒ならば如何(どう)とでも出来ると云う、舐め腐った考えがあるからだった。

 この教師⋯⋯ヒルバリー・ノックスはかなりの問題教師である。実は教師となった日にちは浅く、昨年度からの大凡(おおよそ)半年程である。その半年の間、体罰紛いの行為、女子生徒への性的嫌がらせ、よくこの短期間でこれ程までと、呆れるより感心すらしてしまう所業の数々である。

 今まで問題が表面化しなかったのは、ヒルバリーが持つ金と権力、そして女子生徒が被害を秘してしまうからであった。


「おっ⋯⋯これは、掘り出し物だ」


 そして今もベリルの顎を掴み、顔を覗き込んだヒルバリーは歓喜の表情を浮かべて喜んだ。

 まずは簡単に助けを求める等出来ない様に、そのシャツを破ってしまおうと手を掛けて、


「無理キモい」

「うぶぅっ⁉︎」


 シャツを破る前に、ベリルの拳がヒルバリーの鼻面を打ち抜いてしまった。

 魔力を乗せた痛烈な一打は、ヒルバリーの顔面をぐしゃぐしゃに潰したばかりか脳を激しく揺さぶり、淫交教師は仰向けになって昏倒した。


「⋯⋯あっ!しまった!」


 ベリルは思わず殴ってしまった事を、その場で後悔した。いや、結果的に殴った事は良いのである。問題は、過程にある。


「不味い、これじゃあ正当防衛って言い張れないぞ⋯⋯!」

ベリルは女装して(させられて)ますし、普通にしてても女の子扱いされますが、感性はちゃんと男です。

女の子にドキドキする事もあります。

更衣室に入るのは流石に躊躇います。(女子トイレは普通に入るけど⋯⋯)

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