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師匠(仮)〜唯一の技術持ってるのに獣になった〜  作者: 杞憂らくは
理想の王国と似てない王子様
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間話:理想の男らしさ

本当は本編の予定だったのですが、くだらない内容が広がりすぎました。

何となく間話は、読まなくても分かるもの。と、云う体で考えてます。


 公爵邸に無事に戻って来た訳だが、フレーヌが居ると思われる応接室へ向かう間、ジークベルトは、それはもう機嫌が宜しく無かった。


「⋯⋯⋯⋯ジーク様、そんなに気に食わないですか」

「当たり前だろう」


 今や頬も腹と同じ様に丸々と膨らませて、ジークベルトは感情を顕にしていた。

 そしてジークベルトに追随する様に、エレナも首を縦に振っていた。


「そうですわよね!やっぱり私だけじゃ有りませんのよ!」

「エレナさんまで⋯⋯」


 まさかお前は違うだろうと、ベリルは肩に乗っかったフェルニゲシュに視線を向けた。フェルニゲシュは巻き込むなとベリルを睨み、そしてエレナへと視線を向け、簡単にエレナに(おもね)った。


【此処は乙女の言う事が正しいだろう。そもそも我は反対していたのを忘れたか】

「⋯⋯っお前⋯⋯!」

「ほら見ろ、満場一致だ!」


 ベリルによって小脇に抱えられたジークベルトは、肥えた事で短く見える前脚をベリルに向けた。

 ジークベルトだけでなく、エレナもフェルニゲシュもベリルに対して当たりが強いので、ベリルは()()しおらしい表情を作り、大きく溜め息を吐いた。


「⋯⋯そんなに似合いませんか、この髪型」

「えっ⁉︎いや、似合うか似合わないかなら⋯⋯似合うよ?」

「でも私達からすれば、長い方が良かったのですわ⋯⋯とっても綺麗で、アレンジのし甲斐が⋯⋯」

「⋯⋯そうですか、そうですよねぇ。僕としては女の子みたいに扱われたく無かったんで切ったんですけど⋯⋯怪我で上手く切れなくて失敗したんですよねぇ」

【⋯⋯いや、それは⋯⋯済まんと思っとるぞ⋯⋯?】


 ちょっと拗ねた様な雰囲気のベリルに、1人と2匹は少し慌てた。ジークベルトとエレナは純粋にベリルを心配し、フェルニゲシュはベリルの怪我の原因をエレナに知らされ兼ねない心配をした。

 三者の反応を確認したベリルは、此処で決定的な一言を告げた。




「やっぱり髪の毛なんて全部剃り落とせば良かったです」





「────だめえええええ‼︎⁉︎」

「そ、そうだ!早まっちゃいけない!」

【そ、それは止めれと言うたぞ⁉︎】

「そうですか?僕としては結構理想なんですよね、坊主頭って。まず女の子に間違われないし、一々梳かさなくて良いし、風呂でも一気に洗えるじゃないですか?」


 1人と2匹を揶揄う為に言い出した事だったが、口に出している内に中々良い案の様な気がして来た。髢屋の親爺にも止められたが、今夜思い切りやってしまおうか。


「よ、よく見たらベリル!その髪型凄い男らしいぞ!」

「⋯⋯適当に言ってませんか?」

「ほ、本当だって!ねぇエレナ!女の子から見てもそう思うでしょ⁉︎」

「え、ええ、ええ!とっても格好良いですわ!」

「⋯⋯⋯⋯本当ですか?」

「いやもう、本当に!よく似合ってるし!」

「独創性が有って素敵ですわよ!」

「⋯⋯⋯⋯そうですかねぇ?」


 とは云え、髪型が似合うと言われて悪い気はしない。それでもやっぱり、まだ坊主頭の方が良いのでは無いかと考えていた。

 そこに、フェルニゲシュがそっと耳打ちをした。


【⋯⋯⋯⋯⋯⋯おなごが好きそうな髪型とは思わんか?】

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ゛?」

【坊主が良いと言う娘も居るだろうが⋯⋯ほれ、ドワーフの所でも言うたろう?若い娘はしてぃーぼーいに憧れるのだ。よう思い出せ、あの“あちっとコーン”でおなごに人気の有った男を⋯⋯!」


 多分“学術都市(パンテオン)”と言いたいのだろうなと思いつつ、ベリルは記憶を呼び覚ました。あの学校で女子に人気が有ったのは、勿論「スパーダ様」である。

 確かロビンと劇場へ行った際、ベリルは「お慕いし隊」の女子達に、スパーダの髪型として似合うものとしてスケッチやら鬘やらを見せられた。その中に坊主頭は無く、短くてもサラサラの前髪は必須の様だった。

 中には独創的で派手な飾りを着けていた物も存在した。確かスケッチをした女子は、「個性って大切です。シルエットで誰か分かるくらいじゃないと!」だなんて言っていた気がする。

 それに、アデラはフレデリカ(ベリル)に不毛な恋をしている。時々ベリルを見て、フレデリカに思いを馳せるなんて事もしていた。この髪型になった時点で、髪を下ろす事の多かったフレデリカの面影は一切消えたのでは無かろうか。


「⋯⋯この髪型、個性的だよな?」

【そうであるな】

「⋯⋯⋯⋯男にしか見えないよな?」

【⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ソウデアルナ?】

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯女の子受け、良いと思うか?」

【それは確実である】


 ベリルは特にモテたい訳では無い。いや、モテたく無い訳でも無い。それは勿論男からでは無く、同年代の女子から好かれたい。

 思春期の少年からすれば、当たり前の感情であった。


「⋯⋯⋯⋯僕、この髪型を維持しようと思います」

「本当⁉︎良かった!」

「出来れば伸ばして頂きたいのですけど⋯⋯今はそれで良いですわ!」


 1人と1匹は無邪気に喜び、ベリルの髪が全て損なわれずに済んだ事に安堵した。

 ベリルとしても、これで無理に髪を伸ばせと言われ続け無くて済むし、女装の苦難からは解放されると胸を撫で下ろした。

 フェルニゲシュに囁かれるまでは。




【⋯⋯かぼちゃ娘に好かれると良いのぅ⋯⋯キケケケケ⋯⋯】




 フェルニゲシュの長い尻尾を掴み、ぐるぐると振り回したベリルの顔は、それはそれは美しい女神の様な微笑みを湛えていた。

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