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シーン21 ある意味、一つの頂上決戦

 調子に乗ってばかりもいられない。

 マリアのプレーンの腕前は、この間の戦闘を見て、ある程度想像はついていたし、こういう結果になるのは最初から目に見えていた。

 それよりも、倒れたままの作業用モビルから、マリアがいっこうに出てくる気配がない。

 思ったより勢いよく転倒させちゃったし、もしかして、怪我をさせてしまったんじゃないだろうか。


 アタシは気になって、彼女の作業用モビルに近寄った。

 正面から突っ伏した形になっているが、そこは頑丈な作業用だけあって、大きく破損は見られない。

 マリアが、狭いコクピットのなかで、小さく丸まっているのが見えた。

 声をかけようとして、アタシは手を止めた。

 膝を抱くその肩が、小刻みに震えていた。


 異常を感じて、アブラムとルナルナ、それにバロンが駆け寄ってこようとした。

 アタシは顔をあげて制した。

「ごめん、バロンさんと、アブラムさんはそっちで待ってて。ルナルナっ」


 ルナルナ一人が、側に立った。

 二人でコクピットの中に手を伸ばし、マリアに触れた。


 マリアは。

 コクピットの中で号泣していた。

 端正な瞳から大粒の涙をあふれさせ、まるで、しかられた子供のように肩をすくめて。


 彼女はアタシに気付いた。

 しゃくりあげながら、それでも唇を開いた。

「こんなの・・って、私、プレーンの腕、だけは、じ・・自信あったのに、まる・・で・・・手も、足も・・・でない、なん・・・ひっ・・・ひぐっ」


「おい、マリア大丈夫か」

 ルナルナが声をかけた。

「る・・・ナリーさん・・・わ。わたっ・・・私っ・・・」

 彼女の声はますます言葉にならなくなった。

 周囲を取り巻くやじ馬たちが、遠巻きに、何が起きたのかとざわめき始めた。

 ルナルナは咄嗟にタオルを彼女の頭にそっと被せて、泣き顔が周囲に見られないように気を配った。


「ショックだろうが、仕方ない。マリア、相手はプロ級のプレーンパイロットなんだ」

 ルナルナは優しく言った。

 顔をあげようとしない彼女の頭越しにアタシを見る。

 ほんの少しだけ、非難めいた眉になっていた。


 やりすぎでしょ、って言いたいのよね。

 まあ、アタシ自身も、今さらながら、そう思ってるけどさ。

 でも、あれだけ挑戦的な態度を続けられると、こっちとしても少しは面白くなかったわけで。

 ちょっと鼻っ柱を折ってやろうって、なっちゃうじゃない。

 まさか、彼女のプライドが、こんなに脆かったなんて、思わなかったしさ。


 さあて、どうしたものかしら。

 自分の心を折られるのには慣れているけど、他人を泣かしたのは初めてかもしれない。

 ちょっと、困っちゃったぞ。


 アタシがお手上げって顔をすると、、ルナルナは仕方なく、もう一度彼女に声をかけた。


「マリア、お前のプレーンの腕だって、世の中じゃ上手い方だ。はっきり言って、この町じゃナンバーワンだった。それは、オレも認めてる」


 見えてはいないだろうけど、アタシは頷いた。

 そう。

 マリアの腕は決して悪くない。きちんとしたトレーニングを積みさえすれば、軍のプレーン部隊に入っても、それなりには通用するだろう。


 けど。

 アタシに言わせれば、所詮そのレベルだ。


「だけどな、このラライって女は別格だ。見た目はこんなだけど、腹が立つくらいの天才パイロットなんだ。その上、お前とこいつとじゃ、どうしても埋められないものがある、マリア、何だかわかるか?」


 諭すように言われて、ようやくマリアは微かに顔をあげた。

 タオルの下から、涙で濡れた瞳が、アタシを見あげた。


「差? 私と、この人の・・・」

「そうだ」

 ルナルナの強い声は、彼女の注意を引き戻した。


「実戦経験って奴だ。マリア、おまえ今年で何歳になる?」

「わ・・・私、23です」

「プレーンの操縦歴は?」

「え・・・と。 彼がまだ街に居た時だから・・・よ・・・4年です」


 マリアは指を折って数えた。

 4年か。

 まあ、短くも無いが長くも無い。


「ラライ、お前が初めてプレーンで実戦を経験したのはいつだっけ」

 ルナルナが質問を振ってきた。


「あ、アタシ? ハイスクール1年の夏だから、15才かな」

「ってコトは、プレーン操縦の経験値は、マリアに比べて、倍以上はあるわけだ」

「まあね。ちなみに半分以上の年数は、ほぼ毎日が実戦だったし」


 アタシは頷いて見せた。

 実際には、プレーン操縦歴=プレーン操縦の技量ってわけではないけれど、少なくともマリアのショックを和らげるには効果的な言い方かもしれない。


「じゅ・・・15歳から?」

 マリアの目が信じられないものを見るかのように見開かれた。


 まあ、普通だったら、あり得ない話よね。

 アタシは得意の愛想笑いを浮かべたまま、当時の出来事を、あらためて脳裏に思い浮かべた。

 15の時、はじめてプレーンの操縦桿を握った日の光景。


 ・・・・・。


 その日。

 通っていた全寮制のハイスクールから、アタシは半年ぶりに実家へと帰郷した。

 テア星系の中でも、やや辺境に位置する田舎めいた衛星に、アタシの家はあった。


 ハッキリとは思い出せないが、昔のアタシは、体が弱くて、人見知りな性格だったようだ。

 両親は、そんなアタシの為に、わざわざ環境の良いその星に移り住んでくれて、多少の不便さはあったとしても、満ち足りた生活を送っていた。


 血のつながりは無くても、アタシにとって最愛の両親・・・。


 二人に会える喜びに、アタシの足は自然と早まった。

 玄関の扉を開けて、二人が待つリビングへと駈け込んだ。


 言葉は失われ、笑顔は凍り付いた。


 待っていたのは、あまりにも凄惨で、絶望的な光景だった。


 血にまみれた室内。

 床に倒れ伏し、既に命の灯火を失った、二人の愛すべき人。


 そして。


 血に染まった剣を手に、アタシを見つめ返す、宇宙海賊スカーレットベル。


 そう。

 後にアタシの相棒となり、ともに蒼翼の旗を掲げる、リン・スタンスフィールだった。


 恐怖と悲しみは、アタシから人の感情を奪い去るほどに激しいものとなった。

 いってみれば、あの瞬間、アタシの心は一度死んだ。


 炎が全てを包み込んだ。

 アタシは煙に巻かれ、そこで終わるはずだった。

 終わりたい、とさえ、思った。

 けれど、運命の皮肉さは、アタシを生き残らせてしまった。


 救ったのは、・・・リンだった。


 ・・・・・。


 ・・・・アタシの両親を手にかけた筈の彼女が、アタシを救ったのだ・・・



 アタシ達は、逃げた。

 生きるために、手を握った。


 リンはアタシにとっての敵だ。

 それでも、生き延びるためには、彼女に縋るしかなかった。

 戦う術をアタシは知らなかったし、彼女は知っていた。

 そして、彼女を憎むことが、アタシの生きる力へと変わった。


 今でも時々、あの時の自分の判断を不思議に思う時がある。

 結果論だけで言えば、それは正しい選択だったのだろう。

 ただ、それは今だから言える事であって、リンはその時、間違いなくアタシにとっての仇だった。


 運命というのは、本当にどう転ぶか分からないものだ。


 結局、アタシはリンを許すことになった。

 それだけではない。

 時を重ねるごとに、アタシは真実を知り、彼女の心に触れた。

 そして、いつの間にか、お互いを心の底から信頼し合えるパートナーにまでなっていた。


 その辺のいきさつは、ともかく。


 アタシとリンは、燃え盛る屋敷の地下へと逃げ込み、そこに隠されていた軍用プレーンの実験機を起動させ、無我夢中で飛び出した。

 三機のプレーンから追撃を受けたのは、その直後だ。

 アタシは生まれて初めての格闘戦を経験し、相手のレイライフルを奪い取った。


 それは凶悪な対艦用の破壊兵器だった。

 躊躇いなく衛星内で撃ち放ち、戦闘に勝利した。


 代償は、安くはなかった。

 プレーンとともに奪った、三人の敵パイロットの命。

 それと、破壊に巻き込まれた、罪もない人々の命と、怨嗟の声だ。


 ・・・・。

 ああ。

 最低な記憶。


「実戦経験の差だ、こればっかりは埋められない」

 アタシのちっぽけな感傷を、ルナリーの乾いた声が飛ばした。


「だけど、これは現実だ。ラライが敵だったなら、マリア、お前は死んでる」

「私が・・・死ぬ?」

「そうだ、本物の戦闘ってのはそういうもんだ。昨日のシャフトだって、死ぬ直前まで、自分が死ぬなんて考えもしなかったろうぜ」

「私達は・・・自警隊です。その位の覚悟・・・」

「死ぬ覚悟なんて出来っこねえし、する必要はねえ」


 ルナルナが声を張り上げて、マリアがびくっとなった。

 ついでにアタシもなった。


「オレも、アブラムの親方も、もちろんリップロットの旦那だって、そんな覚悟なんか望んじゃいねえ。望んでるのは、お前が死なねえ方法だ」


 それから、ルナルナは諭すような口調に変わった。

 マリアの目元に溜まった涙が徐々に乾き始め、赤らんだ目の下に薄い膜を張った。


「お前が嫌だとしても、ラライの腕は、俺達にとって必要だ。 生き延びてこの生活を守るためには・・・。少しでも強い奴の力を借りて、お前たちも、みんなで強くなることが必要なんだ」

「そ・・・そんな事・・・」


 マリアが唇をかんだ。

 溢れ出している感情を必死に抑え込む。

 拳を固く握りしめて、小さく二度左右に頭を振った。


「本当は分かってる。・・・・分かってるんです!」

 マリアは叫ぶように答えた。


「強くならなきゃいけないなんて事、私にだってわかっています。・・・。だけど、・・・だからこそ、私はジェリーの事を、彼に対して街のみんながとった行動を、・・・許せないんです・・・」

「マリア・・・」

「ルナリーさんだって、彼が出ていくのを止めてくれませんでした」


 ルナルナは、その言葉には何の反論もしなかった。

 かわりに、そっと彼女の手を引いて、コクピットの外に降ろした。

 マリアはタオルで顔を隠したまま、それでも気丈に立ち上がった。


 ジェリーか。

 昨日も出た名前だな。

 リップロットが、その名前を聞いて激怒したのを覚えているが、どんな仔細があるのだろう。これは、あとでルナルナに話を聞いてみなければならない。


 マリアが立ち上がったのを見て、アブラムがほっとしたような顔をした。


 とりあえず、一件落着かな。

 と思ってみたが、そうは問屋が卸さなかった。

 周囲のやじ馬が、なんだか大声をあげているのが聞こえてきた。

 ちょっと気になって耳を澄ますと、とんでもない無責任な言葉が飛び交っていた。


「なんだよー、もう終わりかよー。おいビーノっ、次はビーノの出番だろっ」

「そうだそうだー、ビーノっ、相棒の仇をとらねえでどうするんだーっ!!」


 声をあげているのは、ガラの悪い鉱夫風の男達だ。

 街の人っていうより、流れ者の一団にも見えるが、その声に巻き込まれて、他の人々も同調した声をあげはじめている。

 いくら娯楽の少ない街だからって、アタシは別に見世物をやったわけでは無いんだぞ。



「マリアが勝てねえってのに、俺が勝てるわけないっしょー」

 ビーノがいつもの調子で、それでも律義に声をあげた。


 だがそれは、火に油を注ぐ様なものだった。

「この腰抜け」だの、「レバーロック男子の恥」だのと、聞いているこっちの方が腹ただしくなってくるような罵声が増えてくる。


「ったく、馬鹿どもが」

 アブラムが頭を抱えた。


「言わせとけばいいっすよ」

 ビーノはそういって知らん顔を決め込んだ。


 その姿を見て、彼は思った以上に信頼に足る人物かもしれないと、アタシは思った。

 彼は身の程を知っている。

 プレーン操縦の腕前は、自分でも言う通り、決してマリアと比較して上手いとは言い難いが、突出しないのは臆病さからではなく、常に冷静さを保っている証拠だ。

 とんでくる野次を困り顔で躱してみせる姿に、アブラムが強く頷いて見せた。


「やじ馬どもっ、見世物じゃねえんだ、とっとと解散しろっ!!」

 アブラムが怒号をあげた。


 普段なら、それで事足りるはずだった。

 だが、周囲を囲んだ人々の輪がほどけないのは、思った以上に、アタシが見せた操縦テクニックが、人々の心に衝撃を与えたからかもしれない。


 そのうちに。

「それじゃあ、ひとつ、今度は俺が相手してやるぜ!!」

 やじ馬の中から、そんなコトを言い出して、飛び出してくる奴が出始めると、さすがにアブラムの額にも困惑の汗がにじんだ。


「おい。やめろ手前ら、坑道の採掘とはワケが違うんだ、素人が出る幕じゃねえ」

 更に声を荒げてはみたものの、騒ぎの声にかき消されてしまう。

 もともと短気な荒くれ者ばかりだから、こうなってくると、いよいよ収拾がつかなくなってくるぞ。


 この展開は予想外だし、何とも面倒くさい気持ちでいっぱいになった。

 プレーン戦をする以上、どんな相手が来た所で怖くはないけど、いちいち勝負なんかしてたらキリが無いし、それに、弱い敵をどれだけ倒しても、ぜんぜん面白くもない。


 アタシはルナルナと顔を見合わせた。

 彼女はまだマリアを慰めていたが、町の連中がこれほどエキサイトしてくるとまでは思っていなかったようだ。マリアもまた、普段とは違った人々の興奮に驚きを隠せない様子になっていた。


 仕方ない。

 こうなったら一人か二人を相手して、とにかく実力で黙らせるしかないか。


 と、思った時だった。


 急に起動音が響いた。

 何の音、と思って視線を向けると、マリアの乗っていた作業用モビルが、むくりと起き上がるところだった。


 あれ?

 誰が動かした?


 風防の向こうに、見覚えのある赤い人影が乗っていた。

 照り付ける太陽光をサングラスに反射させ、なぜか気障な仕草で、つば広帽子を斜めに上げる。


「ば・・・バロンさん? どうしていきなりそんな所に」

「この機体なら、あっしでも操縦に支障は無いでやんすね」

 バロンはアタシの質問をスルーして、満足気に操縦桿を握りしめた。


 それから、口元に不敵な笑みを浮かべた。


「どうでやんす、あっしとラライさんで模擬戦闘をするってのは? ・・・本物のプレーン乗りの腕って奴を、ひとつ、ここの連中に、みせつけてやるでやんすよ」

 きらんと、歯を光らせた。


 その姿がカッコいいかどうかは別にして、アタシはなるほどと納得した。


 確かに。

 馬鹿正直に一人一人に腕前を披露するよりも、目の前でレベルの高い模擬戦闘を見せつける方が、てっとり早いかも。


「いいわね、その考え、乗ったわ」

「おい、良いのか、ラライっ!?」

 ルナルナが驚いて声をかけてきた。


「大丈夫か・・・、お前の彼氏って、プレーンなんか乗れる感じじゃねえだろ? だって、カース人だよな、あいつ」

「何言ってるの、プレーンの操縦に人種なんて関係ないわよ」

「そうかもしれねえけど。お前の相手になんのか」

「心配しないで、彼、強いわよ」


 アタシは言いながら、思わず口の中に溜まったつばを飲み込んだ。


「プレーンの腕はアタシと同等・・・かもしれない」

「まさか!?」

「ううん、本当」


 そう、シャクだけど、これは事実だ。

 ルナルナが信じられないのも頷ける。

 アタシだって、最初は信じられなかったくらいだ。


「・・・ルナルナ、ねえ覚えてない?」

「何を・・・だ?」

「昔トーマ星系で、赤い重量型プレーンと何度か戦ったことあったでしょ。重量級遠距離支援型のくせに、接近戦がやけに強かった奴」

「ああ、そいつなら覚えてるぜ。・・・確か、あれだろ、結構しつこかった野郎だよな。倒したと思っても、3回くらいつけまわしてきやがったし、・・・確かロアのウラヌスなんか中破させられてさ。・・・あの子、思い出すたびにムカつくって。お前もしつこくて嫌いとか言ってただろ」


 ・・・そんなコト言ったっけ。そこまではアタシの方が覚えてなかったが、うん、言われてみればそんな記憶が蘇ってきた。


「そう・・・彼よ」

 アタシはそう言って、彼を真剣な瞳で見返した。


「・・・へ」

 彼女の顔が点々になって、動きが止まった。

 どうやら、アタシの言葉を受け入れるのに、時間がかかっているようだ。


「まあ、そういう事なのよ」

 アタシは作業用モビルに飛び乗った。


「お、お前マジかよ。ええっ? あん時のむなくそ悪い野郎と、そっ、そのなんだ、お付き合いしちゃってるってコトか!?」

「おっきい声で言わないの、彼の方は知らないんだから」


 彼女は慌てて口を押えた。

 アタシはあらためて、バロンの乗る作業用モビルに対峙した。


 周囲では、アタシ達が何かを始めたのに気付いたやじ馬たちが、再び距離をとり、囲みの輪を広げ始めた。

 アブラムが少しだけ安堵した顔になった。


「さて、と、じゃあ、どういうルールで行くでやんすかね」

「さっきと一緒で良いんじゃない」

「背中を取り合うってコトでやんすね。あっしはオッケーでやんすよ」


 彼がぺろりと唇をなめるのが見えた。

 静かな闘気が、機体全体に溢れ出す。

 なるほど、パイロットが変わるとここまで雰囲気も変わるものなのか。

 アタシは、あらためてバロンの技量の並外れた高さに舌を巻く思いだった。


 アタシは、ふと、少し前の出来事を思い出した。

 もう、半年以上前の事だ。

 アタシと彼は、警備員と海賊という立場になってしまって、お互いにお互いと気付かずに戦闘をした事があった。

 結果は、一応痛み分けという事になっている。

 けど。

 あれは、明らかにアタシの負けだった。

 彼がどう認識したかは知らないが、アタシの胸に、生まれて初めての敗北感を刻んだことは間違いようもない事実だ。


 そうだ。

 アタシは彼に対して、あの時の借りがある。

 だとしたら、いかに摸擬戦でも、アタシは彼に負けることはできない。


「さて、行くでやんす。覚悟は良いでやんすか」

「そっちこそ。言っておくけど、ゲームみたいにはいかないから、覚悟してね」


 アタシは操縦桿を握りしめた。

 これは、ある意味じゃ、アタシにとっての最大の対決かもしれないな。

 うぬぼれるわけじゃないけど、頂上決戦と言っても過言ではないかもしれない。


「一本勝負でいいわね」

「望むところでやんす!」


 アタシとバロンは、同時に機体を走らせた。

 その初速の速さに、集まった野次馬の半数は目が追い付いてこなかった。


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