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シーン20 マリアVSラライ・フィオロン

 指定した時間よりも少し早くに、アタシ達はレバーロックの宇宙船に到着した。

 開いたハッチの所に、この間の戦闘で回収した敵のプレーン、・・・足の折れたモッドスタイプが横たわっていた。

 その周りを、セミプレーンよりもさらに小さな作業用モビルが二台動き回っている。

 どうやら、折れた足の部分に、ビーノが倒したフロッガーカスタム機の足を、どうにかして接続しようと試みているらしい。


「へえー、これがもと宇宙船でやんすか、レバーロックって名前は、この船からついたでやんしたね」」

「そう、赤く焼けただれてるから、まるで巨大な肝臓みたいに見えるでしょ、だから、レバーロックなんだって」

「なるほどでやんす~」

 ホバートラックを停車させて、運転席を降りたバロンは、そそり立つ金属の山を見上げて、感嘆の声を上げた。


「あちらさんは、先に到着しているみたいだぜ」

 ルナルナが、格納庫の前の広場に立つ人影に気付いた。


 マリアにビーノ、それにアブラムの親方か。

 あれ? もっといる。

 目を凝らすと、広場を取り囲むように、人だかりができていた。

 どうやらアタシとマリアのやり取りを見に来たやじ馬連中のようだ。


「なにせお前は、蒼翼と互角の腕のパイロットっていう触れ込みだからな、そりゃあ、どんな奴が来たのかって、町の連中も興味があるだろうさ」

「ってーか、それってルナルナの過大広告のせいだよね」

「過大って事も無いだろ」

「まったくもう」

「それに、昨夜のやり取りを見てた連中なら、やっぱり続きを見たいだろうさ。女同士のガチの喧嘩なんて、良い話のタネだ」

「アタシ、喧嘩する気は無いんですケド~」

「あの感じだと、むこうは、その気みたいだぜ」


 確かに。

 遠目にも、マリアは腕組みをして、アタシの到着を待ち構えている様子だった。

 アタシだって早く来たはずなのに、どれだけ待たせるんだ、って、噛みついてきそうな雰囲気だ。

 アタシは小さく肩をすくめて、それから気合を入れ直した。


 とりあえず、向こうがどれだけ喧嘩腰でも、アタシはアタシのやり方を通すだけだ。

 まずは、あのマリアって子に、本物の戦場を生き抜いたプレーン乗りの腕ってもんを、見せつけてやりましょうかね。


 アタシは彼らの前に立った。

 バロンとルナルナが、まるでアタシのセコンドのように、後ろに並んだ。


「遅れちゃいないわよね」

 アタシは、開口一番に、ちょっと強気を装った。


「ああ、ぴったりだ。時間に正確なのは良いこった、この町にはルーズなのが多くてね」

 アブラムが笑みをこぼした。

 隣で、マリアは澄ましきった表情を浮かべていた。

 昨日よりは落ち着いて見えるものの、瞳の中には隠しようのない敵意が宿っている。


 アタシ達は正面から睨み合うように立った。

 ちょっとだけ、不思議な緊迫感が満ちた。


 周囲のヒマな見物客たちの間に、無責任なざわめきが沸き起こる。

 今から何が始まるのか、という興奮に紛れて、野卑た笑い声も聞こえた。

 自分で言うのもなんだが、こんな町には似つかわしくない二人の美女が並び立っているのだ。男女比率が著しく偏った辺境の開拓地において、男達が興奮するのは仕方が無いのかもしれない。


 けど、正直あんまり気分は良くない。


 アタシは、やじ馬どもを睨んだ。

 凄みを聞かせたつもりだが、どうやら伝わらなかったみたいだ。


「あー、昨日の人だ、へー、あの子が~」

 頓狂な声が聞こえてきて、見ると、カルツ酒の醸造所で説明をしてくれたスタッフが数名並んでいて、アタシと目が合うと嬉しそうに手を振ってきた。

 思わず笑顔になって、手を振ってしまった。


 ・・・。


 まあ、そんなコトはどうでもいい。



「ところで、ラライだったな。これから何を始めるんだ」

 アブラムが聞いてきた。

 マリアの目が、更に厳しさを湛えた。


「そうね、本当はあのプレーンで実際に腕を見せてあげようかと思ったんだけど」

 アタシは格納庫に視線を向けた。

 開け放たれたハッチの内側に、傷だらけの重機型のプレーンが並んで見える。

 腕を破損したのはビーノの機体だけだと思ったが、・・・おや、意外ともう一台も損傷が激しい。


 状態を確認して、アタシは計画を変えざるを得ないと判断した。

 これは駄目だ。

 きっちりとメンテナンスをしてからでないと、機体に無理をかけたら、本気でスクラップにしてしまう。

 幾らなんでも貴重な戦力のプレーンを、腕試しで壊しては元も子もない。


 それに加えて、周囲には人が多すぎた。

 これでは、セミプレーンと言っても、ちょっと間違えたら町の人を危険にしてしまう。

 さて、どうしたものやら。


 アタシは少しだけ思案して、それから、さっき見かけた作業用モビルを思い出した。


 うん。

 ちょうど二台あったな。

 あれなら好都合じゃないだろうか。


 作業用モビルは、せいぜい高さも3メートルくらいの小型機だ。

 この広場でも十分に動き回れるし、その操縦方法はプレーンと大差ないから、プレーンのテクニックを披露するにはもってこいだ。


「親方さん、向こうで作業中の、プレーンモビルは借りたりできますか?」

「プレーンモビル・・・、ああ、あの作業用のマシンか」

 アブラムは頷いた。


「アイツらは、ウチの作業員だからな、大丈夫だ」

「良かった」

「ただし、壊したりはしねえでくれよ、あれだって結構高えんだから」


 アタシはにこりと微笑んだ。

 壊すつもりはないが、そればっかりは、相手次第だ。

 アブラムは一瞬不安そうな顔になった。

 とはいえ、それが無くては始まらない。

 彼が無線機で指示を飛ばすと、仕方なさそうに、作業用モビルは作業をやめた。


「摸擬戦でもする気か?」

 アブラムはアタシに話しかけながら、ちらりとマリアを気にした。

 彼女は押し黙ったままだった。


 集中力を高めているのかしら。

 ううん、というより、あれは意外と緊張しているのかも。

 クールに見えるけど、もしかして見えるだけだったりして。


「ペイント弾はないわよね」

 アタシはアブラムに訊いた。


「塗装用のスプレーガンならあるけどな」

「それだと後始末が大変になるわね、じゃあ、そうね、鬼ごっこでもしましょうか」

「はあ? 鬼ごっこだあ?」


 アブラムの声が大きくなった。

 マリアの目が険しくなった。

 馬鹿にされてるとでも思ったのか、不快そうに舌打ちをする音が聞こえた。


「マリア、鬼ごっこだとよ、良いか?」

 アブラムが多少戸惑いながらも彼女に確認をとった。

 マリアはようやく、重い口を開いた。


「ラライさんでしたね。鬼ごっこなんて、私を馬鹿にしてるんですか」

 静かな口調だが、そこにはピリピリとした怒りが滲んでいた。


「バカになんかしてないわ。これも立派なテストよ」

「テストですって・・・」

「そう。まずは初級編。アンタがどの位プレーンを乗りこなせているのか、それを見極める為のね」

「随分と上からモノを言うんですね」

「まあね、アタシ、これだけは自信あるから」

 アタシは臆せずに胸を張った。


 あと、もう一つだけ、射撃の腕前も自信はあるのだが。

 そっちの方は今のところ、アピールする必要はないので、黙っていた。


「ルールを説明するわ。お互い、この作業用モビルに乗って、相手の背中に素早くタッチした方が勝ち。ねえ、簡単でしょ」

「つまり、相手の背後をとりあうって事ですね」

「まあ、そういうコト」

「なるほど・・・」

 マリアは思案顔になった。


 実のところ、この背中を取り合うってのは、プレーン戦の基本中の基本だ。

 宇宙であれ、陸上であれ、相手の死角に入る事は、戦いにおいて最も重要な戦法の一つ。

 見えない所や、背後から撃つ。

 汚いなんて言っていられない、生き残るには、卑怯であることも許されるのだ。


「それなら、機体を壊すことも無さそうだし、面白そうだな」

 アブラムが、微かにほっとした様子で言った。

 それから、まだ思案顔のマリアを見た。


「どうするマリア、当然、受けてたつよな」

 彼に促されると、彼女は、キッと眉を吊り上げた。


「もちろんです。同じ機体なら、純粋に腕を競えます」

「よし」


 アブラムは大きく頷いた。

「ラライさんよ、じゃあ、そのルールでやってみよう。言っておくがな、このマリアはこう見えて、レバーロック自警隊の中でも一番の腕利きだ。舐めてかかると痛い目に合うかもしれんぜ」


 多分、それはお世辞でもなんでもない。

 彼女がこの町でナンバーワンのプレーンパイロットなのは、おそらく事実だ。

 彼の言葉だけではない。

 周囲を取り囲む町の人々の視線には、アタシに対する期待感の裏側で、自分の身内ともいえるマリアに対する信頼と自信が込められていた。


「それは楽しみだわ」

 早口にそれだけ言って、アタシは作業用モビルの狭いコクピットに乗り込もうとした。

 その肩を、ルナルナが軽く叩いた。

 彼女はアブラムとマリアに、挑戦的な瞳を向けた。


「マリア、それに親方あ、オレから一言だけ言っておくぜ」

「何ですか、ルナリーさん」

 同じくコクピットに向かっていたマリアが足を止めた。


「今から何が起こっても、ちゃんと受け止めろよ。どんな目にあっても自信を無くすな」

「それはどういう意味ですか!?」

 マリアが更に険しい顔になった。

 アブラムはルナリーがそんな事を言い出すとは思っていなかったらしく、微かに驚いた顔になった。

「言葉通りの意味さ」

 ルナリーはそれだけ言うと、自分も安全な所まで退避した。


 アタシはモビルプレーンの操縦席に座り、軽く呼吸を整えた。

 モビルプレーンは、通常のプレーンのように人型をしているが、やはり頭部はなく、ボディの胸元から上は、角ばった風防がついただけの、むき出しの状態になっている。

 しかも、その風防も全周囲ではなく、前半分だけという簡易なものだ。

 このままだと砂混じりの横風を受けるので、アタシはゴーグルをかけて、スカーフで口元を隠した。

 ぱっと見が不審者になったけど、そこは仕方ない。

 見ると、マリアも同じような格好で、コクピットに着いていた。


「それじゃあ、始めるとするか・・・」

 アブラムが片手を上げかけた。


「待って!」

 アタシは彼の声を遮った。

「どうした、まさか今になって怖気ついたわけじゃないだろうな」

「まさか、せっかくだから、もう少し面白くしてあげようと思ってね」

 アタシは不敵に笑った。


「ハンデをあげるわ、あまり早く終わったんじゃ、つまらないでしょ」

「ハンデですって・・・」

 マリアの声に、明らかな憤りが滲んだ。


 クールなんてウソ。彼女ってすごく頭に血の登る性格ね。

 ごめんね、ハンデをあげるってのも、アタシの戦法の一つ

 冷静さを失わせることも、戦いにおいては重要な事なのよ。


 アタシは心の中で舌を出した。


「三回チャンスをあげる。もし、一回でもアタシの背に触れる事が出来たら、そっちの勝ちで良いわ」

「何ですって・・・」

「良い条件でしょ。 アタシが3回アンタの背中を叩く前に、一度でもアタシの背中にタッチすればいいのよ。それで、貴女の勝ちになるんだから」


 ひゅう、と、アブラムが口笛を吹いた。


「バカにして、後悔させてあげる!!」

 マリアが声を荒げた。


「よし、じゃあ今度こそはじめるぞ、二人とも準備は良いな」

 アブラムが片手をあげて、それから、一気に降ろした。


「一本目、はじめっ!!」


 アタシは操縦桿を握りしめた。

 マリアは、思ったよりも早く冷静さを取り戻したように見えた。

 機先を制して、突っ込んでくるのかと思ったら、踏みとどまって、アタシの動きを見ようとした。

 なるほど、本番になったら、気持ちの切り替えは出来るってコトね。

 まあ、そこまでは合格点にしてあげる。


 だけど、それだけじゃ、アタシは追えないわ。

 動きを見る?

 ふふ、見えるかしら。


 アタシの手と足は、ほぼ無意識に動いた。

 機体を左右に細かく振らす。

 と、次の瞬間。

 ほんの数十センチのフェイントに、あえなくマリアは喰いついた。

 アタシの動きに合わせて、機体の向きを変える。


 ・・・頃には、アタシは反転してブーストを終えていた。

 ほら、見失った。


 アタシがどこにいるかって。

 決まってるじゃない、貴女の後ろよ。


 ぽんっと彼女の背中に触れた。


 はい終了。


 おそらく、その場を見ていた人々の殆どが、その光景を理解する事が出来なかっただろう。

 開始から、まだ2.5秒。

 まばたきをさせる間もなく、アタシは最初のターンを終了した。


「え・・・」


 何が起きたのか分からないまま、マリアはただ、それだけ言葉を洩らした。


「ら・・・ラライに・・・一本目?」


 ようやく、アブラムが言葉にした。

 歓声は、起こらなかった。

 かわりに、一瞬、あたりが不気味な程に静まり返った。


 それから、しばらくして静かなざわめきが生まれ、それが、徐々にどよめきへと変わっていく。

 アタシを見つめる好奇の視線が、驚愕の眼差しに変わった。


「なんだ今の・・・」

 誰かが呟く声がした。


「動きが見えなかったぞ、瞬間移動でもしたみたいだ・・・」

「バカ言うな、あれ、ただの作業用モビルだぞ・・・」

 周囲のやじ馬たちが漏らす感嘆の声が、久し振りにアタシの自尊心をくすぐった。


 ふふふ。

 驚いたか。

 まだまだ、これからが本番だ。


「ねえ、次はまだ?」

 アタシは呆けてしまったアブラムに声をかけた。

 彼は、はっとして、慌てて腕をあげた。


「そっ、それでは、二本目、開始っ!!」

 動揺を隠しながら、再び知蒼開始の声をあげる。


 さーて、次は何を見せるかな。

 アタシはマリアの機体の微かな動作に目を凝らした。

 モビルプレーンの関節には、破損を防ぐための直圧骨格が用いられている。そこを見れば、どう動くのかは簡単に予測できるのよね。

 こういう時、メカニックの知識ってのも役に立つわ。


「こんのおーっ!!」

 マリアの気合が聞こえてきた。

 彼女はまだ混乱しているようだった。

 だが、よくわからないうちに一本目を取られた事だけは理解したのだろう、今度は先制攻撃とばかりに突っ込んできた。


 まあ、こんな猪攻撃なら、さっきのムーブを繰り返すだけでも勝てる。

 けど、もう少し実力の差を教えてやるか。

 それじゃあ、サービスタイムよ。


 アタシの悪戯心に火がついた。


 せまりくるマリアの機体に対して、アタシは。

 背を、向けた。

 で、逃げる。


「なっ、馬鹿にしてっ!!」

 マリアは追ってきた。


 ははーん。

 直線で追ってくるなんて、やっぱりまだまだ甘いわね。

 機体が同じなんだから、そう簡単には追いつけっこない。

 リズムを変えないと、動きを読まれるわよ。

 ほら。

 こんな風に。


 アタシはトップスピードに乗った瞬間を狙ってフルブレーキをかけた。

 猛スピードで迫る彼女の、その僅かな感覚をずらす。

 アタシの背に触れようとした彼女の手は、僅か数十センチ届かず空を切り、気付けば再びアタシに背後を取られていた。


 はい、これまでよ。

 ここまで、さっきよりは持ったわね、約12秒か。


「二本目・・・、二本目も、ラライっ」

 アブラムが叫ぶように言った。

 再び、静けさとどよめきが、交互にアタシ達の周囲を取り巻いた。


 ふむ。

 やっぱり歓声は聞こえないな。

 アタシのすごさに感動するより、マリアが手玉に取られているのが、町の人々にはショックなのかもしれない。

 けど。

 ここで止めるわけにはいかないわよね。


「どうしたの、レバーロックの一番って、・・・こんなもの?」

 アタシは挑発するように言った。


「こ・・・こんな馬鹿な事って。嘘だ・・・あり得ない・・・」

 マリアがうわごとのように呟くのが言見えた。


 あれは、もはや茫然自失って感じだな。

 よしよし、このまま鼻っ柱を折ってあげよう。

 人生、屈辱も必要よ。今を乗り越えて強くなるには、時には負けることも大切。


 ああ、もちろん。

 アタシはじゅうぶん苦労人だし、これ以上の困難は願い下げだけど。


 ぺろりと唇をなめ、彼女が戦意を取り戻すのを待った。


 言っておくけど、アタシはマリアって子が憎いわけでもなんでもない。

 だけど、彼女の無自覚な自信は、あまりにも危険すぎる。 

 この間の戦闘も目にしたからこそ言えるのだ。あんな程度の腕前で過信していたら、実戦ではすぐに死んでしまう。

 そうなってほしくないから、ちゃんと自分の弱さを知ってもらって、今度からは、もっと死なないような戦い方を、覚えて欲しい。

 そう。

 アブラム親方の頼みをかなえるには、一度こうする事が必要だ。


「三本目、始めっ」

 アブラムが腕を振った。


「うわああああっ!!」

 彼の号令を待たずに、マリアは気合の声をあげて突っ込んできた。

 さすがに混乱してる。

 追い込まれたから、なんとか打破したい一心で突撃をしてきた。


 うーん、でも。

 これも予測済みなのよね。


 アタシは迫りくるマリアのモビルに対して、避け・・・なかった。


 アタシは受けて立った。

 突撃してくる瞬間、機体を咄嗟に沈み込ませた。

 まるで、スライディングのような体制だ。

 そこから相手の機体の下に滑り込み、、ボディを掴んで、反動ですくい上げる。


 マリアのモビルプレーンは綺麗にダイブする形になって、そのまま前のめりに倒れた。

 シートベルトも無い機体だし、結構なダメージになったかもしれない。

 機体に傷をつけてしまったかもしれないが、そこはゴメンというしかない。


 アタシは素早く機体を起こした。

 マリアは、起き上がれなかった。

 倒れている相手の背中に近づき、そっと触れる。


 はい。これで、三本目。


 危なげなく、アタシは完全勝利した。

 全所要時間、25秒。

 まあ、こんなもんだろう。


「しょ、勝負あったっ・・・」

 アブラムが、動揺を隠せないままにアタシの勝利を告げた。


 歓声が・・・・予想通り、起こらなかった。

 もう少し賛辞が飛んでくればうれしいんだけど、まあ、仕方ないか。

 今のところ、アタシは余所者なんだろうからね。


 機体を降りると、向こうからバロンとルナルナが駆けてきた。


「すげえなラライ、やっぱり腕は鈍っちゃいねーな。つーか、前より強くなってんじゃねえか」

 興奮した調子で、ルナルナがアタシの肩をバンバンと叩いた。


「さっすがラライさんでやんす、見惚れたでやんすよ」

「まあね~、って、こりゃ、カンペキにやりすぎたかな。アタシってもしかして敵みたいに思われちゃった?」


 一瞥して、ルナルナが「心配ないさ」と呟いた。


「みんな度肝を抜かれちまっただけだ、じき、すごい事になるぜ、この町の連中は脳みそが単純にできてるからな」


 彼女がにやりと笑った意味を、アタシはまだ理解できずにいた。


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