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101 『犯罪者』・ハナエル


「(いや、まさかそんな訳無い。落ち着け、呼吸を整えるんだ)」


「星の悪魔……?」


イオリは憮然としたまま首を傾げる。聞いた事のない単語だ。


「…お前、あのゴミ箱の()()がどこから来るのか気になったことは無いか?」


「ありゃ俺たち魔界の奴らからも唾棄されてる禁足地だ。誰も好き好んで入ることは無いから中身は分からん。それに妙なことを言うな、来るっつーとまるでどっかから()()()()()()()じゃねーか」


「…ふふ、だいぶ身体がラクになった。敵の目の前でお喋りに夢中になるとは、いささか悠長じゃないかい?」


のそりと倒した筈の呪魔が起き上がり、不意にイオリの背後を取るが、イオリは振り返ることも無く裏拳を一発当てると呪魔の首は爆散し塵に消えた。


「なっ…なっ…なんだ、なんなんだお前…」


今までの小さな少年とはガラリと変わった余りにも巨大な体躯。


「なんなんだはこっちのセリフだよカス野郎。テメェ、この世から絶滅する準備は出来てんだろうな?」


そして圧倒的な暴力の大気。

気のせいか口調まで普段と変わって荒々しくなっている。


ゴキ、と拳を鳴らしてアダムを見下ろす。彼は腰が抜けたのか地面に尻もちをついて震え始めた。


「あれが…イオリ…?」


思わずネブラスカは呟く。


ネブラスカの第一印象こそ最悪なものであったが、徐々にそれは払拭され、彼女の中でイオリは『悪党ぶりたいお人好し』のイメージに固まりつつあった。


だがしかし。


()()はもうおよそヒトと呼べる者では無い。


まさに暴力。まさに力。まさに悪魔!!


「や…ヤギの角…」


アダムは震えながらぼそりと呟くと、イオリはその存在に今まで気づかなかったのか、頭を不思議そうに撫でながらギョロリとアダムを睨み付けた。


今、彼の身体に宿っている者。ソレこそが彼の天司の弾丸(リング)空のおとしもの(エンゼルハート)の一つ、『犯罪者』の権能を司る磨羯宮(ハナエル)その者だった。


イオリ自身、自覚すらしていないが前回の発動を経験した事により、身体がその権能の使い方を本能で、細胞で理解していた。


「さて、それじゃ」


「な、何を…」


引き攣る笑顔を浮かべるアダムにイオリは反吐を吐き捨てるように答える。


「あ?決まってんだろ。お前を殺すんだよ」


「おごぁっ…!?」


鋭いキック、なんて生易しいものじゃない。


文字通り必殺のような前蹴りがアダムの身体にめり込んだかと思えば、彼の身体は呪魔同様、ミシミシと音を立てて内臓・脂肪、骨も散り散りに砕けて辺り一面に飛び散った。


「次はそこか」


憑依先でも見えるのか、イオリは新たに転生するアダムが産まれることすら許さず、その死体ごと叩き潰す。


一面、おびただしいほどの数あった死体が次々に消え失せる、否。()()()()()()()


繰り返すこと数刻。


血と肉と、脂肪の散乱した辺り一面にの地獄がそこに形成されていた。イオリの半身は返り血で赤黒く染まり、頬についた汚れをイオリはペロリと舐め、消耗したアダムに近付き、目を合わせるようにゆっくりとしゃがんだ。


「で、終わりか?」


「〜〜〜ッ!このッ!クソ人間があっ!!」


「おっと」


アダムの不意打ちにも近いコンマ0.1秒にも満たない呪文詠唱による最上級水魔法【海より来たりて(ドラガ・パンジャーブ)】。音すら置き去りにするその閃光のような水の豪槍は鈍い音と共にイオリの背後にある木々にヒットし、数秒後に大爆発を起こした。


「水素爆発って奴か?成程、亜音速で最上級魔法を使えば水素と酸素のパーセンテージがひっくり返ってああなんのか。勉強はしとくもんだな。んで、」


イオリはアダムの頭をゆっくりと掴む。


「奥の手は終わりか?じゃあ、殺すぞ」




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