ごんぎつね〜復讐〜
この作品は、中学の頃、国語の教科書に乗っていた(ごんぎつね)をテーマにしたお話です。
高校の国語の授業で久しぶりに、話題になり、ごんの立場を深堀して、オリジナルで書いてみました。
実際の話と読み比べてみるのも面白いかもしれません。
小説を書いたのは2回目ですが、読んでいただけると嬉しいです。
これは、私が小さい時に村の茂兵というおじいさんに(ごんぎつね)の話を聞いた後に知った、ごんぎつねの裏の話です。
昔々、ある山に狐の家族が暮らしておりました。
しかし、人間が山を切り崩し村を広げる事で動物達の居場所もなくなって行き狐の数もどんどん減っていきました。
ある夜の事です。人間が焚き火の火を消し忘れた事で酷い山火事が起こりました。
山の動物たちは、大慌てで避難していきました。途中で怪我をする者や焼け死んでしまう者もいました。
そんな中、狐の家族も避難しなければならなくなり、必死に逃げました。
「あなた、サン、ヤン、ごん、逃げるわよ!」
「ああ」「はい」「はい」
「あれ?」
その途中、末っ子の1人の小ぎつね(ごん)が、家族と離れ離れになってしまいました。
「お母さん?お父さん?お姉ちゃん?お兄ちゃん?どこ行ったの?」
「怖いよ」
この日から、ごんは、1人で寂しく暮らしていくことになりました。
それからごんは、生きていつか家族に会うために、必死に火が届いていない所を探し、しだのいっぱい茂った森を見つけその中に穴を掘って暮らしていきました。
それから、10年が経ち、ごんはあの日人間のせいで家族と離れ離れになった事を知りました。
そして、人間に恨みをもち、村に出てイタズラをするようになりました。
ある秋のことです。二、三日雨が降り続いたその間、ごんは、ほっとして穴からはい出しました。空はからっと晴れていて、もずの声がキンキン響いていました。
ごんは、村の小川のつつみまで出てきました。ふと、川を見てみるといつもは水が少ないのですが三日もの雨で水がどっと増していました。川べりは水が染み込みぬかるみになっていました。ごんはそのぬかるみ道を歩いていきました。
ふと見ると、川の中に人がいて何かやっています。ごんは、見つからないように、そっと草の深い所へ歩きよってそこからじっと覗いて見ました。
「あれは…誰だ…あっ」
「兵十だな。」
兵十は、ごんがイタズラをしに行く村に住んでいる青年です。ごんにとって兵十はイタズラの邪魔ばかりするので、鬱陶しい存在でした。
ごんは、しばらく兵十を観察していました。
すると、兵十は、川に袋のようなものを入れました。そして、持ち上げ中身を見ては籠に入れ中身を見ては籠に入れとその過程を何度も繰り返していきました。
「あっ、かかった」
ごんが、飽きてきた頃、兵十は1つの袋の中身を見て飛び上がり、何かを取りに川上の方にかけて行きました。
「兵十のやつ、どうしたんだ?」
「あの袋の中、何が入ってるんだろう。」
ごんは、それが何なのか気になり、草の中からぴょいっと飛び出して、袋のようなものの傍へ駆けつけました。すると、中には太いうなぎが入っていました。ごんは、珍しいものを見たので触りたくなりそれを掴もうとします。
すると、ヌルヌル滑って、手では掴めません、ごんは、焦れったくなり袋のようなものに頭を突っ込み、うなぎを口で加えました。うなぎは、キュッといって、ごんの首に巻き付きました。その瞬間後ろから怒鳴り声がしました。
「うわぁ、盗人ぎつねめ。」
ごんは、びっくりして飛び上がりました。その勢いで後ろにあった籠が倒れ、中に入った魚が川へ逃げていきました。
また、ごんは、うなぎを袋に返して逃げようとしましたが、うなぎは、ごんの首から離れません。ごんは、そのまま横っ飛びに逃げていきました。
「はぁ、はぁ、ここまで来れば…」
洞穴の近くで振り返ってみましたが、兵十は追いかけてきませんでした。ごんは、ホットしてうなぎの頭を噛み砕き、首から外し、草の葉の上に乗せておきました。
それから10日ほどたって、ごんが今日も村にイタズラをしに行こうと歩き回っていました。すると、兵十の家の前で大勢の人が集まっていました。
「ははぁん、秋の祭りか〜?」
しかし、よく見てみると、皆よそいきの着物を着て、暗い表情でした。中には、手ぬぐいで顔を覆ってる人もいました。ごんは思いました。
「ああ、葬式だ。」
「兵十の家で誰かが死んだんだろう。」
お昼を過ぎると、ごんは、山の近くにある村の墓地に行って、村の様子を見ていました。すると、村の方からカーンカーンと、葬式の出る合図が鳴り響きました。
やがて、白い着物を着たそう列の者たちがやってくるのがちらちら見えはじめました。話し声も近くなり、ごんは、人々に見えない所に隠れ列を見ていました。すると、列の中に兵十がいるのを見つけました。しかし、兵十は、いつもとは違く酷くやつれていました。
「ははん。死んだのは兵十のお母さんだ。」
ごんは、そう思いながら、頭を引っ込めました。
ごんは、小さい頃に家族と離れ離れになってしまったため、家族の愛情という感情が欠落していました。そのため、兵十の気持ちが全くわかりませんでした。
その晩、ごんは、考え事をしながら山を歩いていると、いつもは来ない道に来てしまいました。
「ここは、どこ?」
ごんは、昔のことを思い出しました。そして、急に怖くなり走り出しました。すると、一本道を抜けたところに大きな洞穴がありました。ごんは、朝になるまで、その洞穴で過ごそうと思い中に入りました。
「すみません、失礼します。」
「朝まで、泊めてくださいませんか?」
洞穴に入ると、2匹の狐の夫婦がいました。そして、夫婦はごんを見て驚いた顔で、ごんに言いました。
「あなた、名前は?」
「えっ?」
「名前は?」
「ごんです。」
「もしかして、あの山火事ではぐれた、ごんか?」
「えっ?どうして?」
「ごんなのね。(泣)」
「もしかして、お父さん?お母さん?(泣)」
「えぇ、生きてたのね。」
「ごん、ごめんな。」
「ずっと、会いたかった、お母さん〜お父さん〜(泣)」
ごんは、この日、10年も離れてた家族と再会しました。ごんは、産まれて初めて泣きました。涙が枯れるまで泣きました。
そしてごんが落ち着くまで、お父さんと、お母さんは抱きしめてくれました。そして、今までどうしていたのか、どうしてここに居たのか話しました。
お父さんとお母さんは、ごんを探すためいろんな山を転々としていた所、今回、この山に来ていたそうだ、兄と姉は、他の山で留守番をしているらしい、だから数ヶ月後に兄と姉のいる山へ戻るそうです。
だから、ごんも、数ヶ月後、家族のいる山へ両親と共に帰ることになりました。
ごんは、1度自分の洞穴に帰ることにしました。その帰り道、ごんは、10日前兵十から盗んでしまった、草にかかった腐ったうなぎを、発見しました。それを見て、ごんは、昨日の兵十のお母さんの葬式を思い出しました。
そして、こう思いました。
「兵十のお母さんは、床についていて、うなぎが食べたいといったにちがいない。」
「それで兵十は、川に取りに行った」
「ところが、僕がいたずらをして、うなぎを取って来てしまった。」
「だから兵十は、お母さんにうなぎを食べさせることができなかった。」
「そのままお母さんは、死んじゃったにちがいない。」
「ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいと思いながら、死んだんだろう。」
「僕はなんてことをしてしまったんだ」
ごんは、兵十の様子が気になり見に行くことにしました。すると、兵十は、1人寂しく米をといでいました。その後ろ姿を見てごんは、昔の自分と重ねました。
「前の僕と同じ一人ぼっちの兵十かぁ」
「この山を去る数ヶ月、せめて兵十に少しでも償いをしよう。」
ごんは、家族の愛情を知った今、兵十の最後の親孝行を潰してしまったことを心から反省しました。そしてこの日から、毎日兵十の家にものを届けることにしました。
最初に道端でイワシを売ってる人間がいたので、並べてあるイワシを5〜6匹貰い急いで走り兵十の家へ投げ込みました。
ごんは、1ついい事をしたと思いました。
次の日、ごんは、山で栗をどっさり拾い、兵十の家へ持っていきました。
そして、兵十の様子を少し見ようと、こっそり影から除きました。すると、兵十の顔に昨日まではなかった傷がありました。そして、ボソッと兵十は独り言を言いました。
「いったい、誰がイワシなんかを俺の家に放り込んだんだろう、おかげで、俺はイワシ泥棒扱いされたじゃないか。」
ごんは、これはしまったと思いました。
「僕のせいで兵十は盗人扱いされて酷い目に遭わされた。これじゃあ罪滅ぼしにならない」
そう思い。そっと、物置の方へ周り、栗を置いて帰りました。
そして、次の日もその次の日も栗を持って兵十の家へ向かいました。その次の日には、栗だけではなく松茸も2〜3本持って行ってあげました。
数ヶ月が経ちました。ごんが、両親とこの山を離れる日です。ごんは、この日は最後なので、栗と松茸と頑張って川で取ったうなぎをもって兵十の家へ行きました。
そして、いつもの場所に栗や松茸を置くと、しっかりお辞儀をして両親との待ち合わせの場所に行こうと走り出しました。
その時です。
ドン!
ごんは、倒れました。何が起こったのかわかりません。
ただ、体に電気が走ったような感覚で、立ち上がることが出来ません。体からは赤い何かが出ています。ふと頭の中に両親の顔が浮かびました。
「もしかして、僕死ぬの?」
どんどん意識がとうのいていきました。そして、薄ら目を開けると兵十がいました。
「なんで?」
そして、兵十が、驚いた顔で言いました。
「ごんお前だったのか。いつも栗をくれたのは」
ごんは、力を振り絞って頷きました。
そして、ごんは目から一筋の涙を流し息絶えました。
兵十は、火なわじゅうをばたりと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。
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ごんは、暗闇の中で、無の感情で数日間歩き続けました。そして、ある時、糸が切れたように、いろんな感情が流れ込んできました。
両親はどうなったのか、姉と兄に会いたかった、両親とせっかく会えたのに…僕が死んだこと知っているのか?とどんどんどんどん未練を膨らませていきました。
そして、最後には、「どうして僕を殺した」と兵十への恨みに変わり、悪霊になっていきました。
そして、ある時目を開けると、元いた村に、ぽつんと立っていました。しかし、体は浮いていて幽霊状態でした。
ごんは、最初に兵十を見に行きました。兵十は、何事も無かったように日々を過ごしていて、ごんは、より一層恨みを募らせていきました。
そして、兵十を殺そうと暗殺を企て始めました。
ごんは、他の霊とは違って、現世への執着が強かったので、力を込めれば物に触れられました。なので、まず初めに、食べ物に毒を忍ばせて殺すことにしました。
ごんは、兵十の家に毒を着けたタケノコを持っていきました。そして、いつも栗を置いていた場所におき兵十が来るのを待ちました。
「なんでこんな所にタケノコが、まさか?」
「そんなわけないか」
兵十は帰ってくるなり、タケノコを見つけてびっくりしていました。そして、それを家の中へ持っていき調理し始めました。
ごんは、早く食べろと兵十の周りをウロウロしていました。
兵十は、調理をし終わると、庭に出ていきました。そして、庭にある小さな山に備えました。そして、数分手を合わせ、家へ入っていきました。
ごんは、聞こえるはずもない兵十に
「何故食べない?」
と、怒鳴り、イライラして飛び出していきました。
そして、兵十食物毒混入殺害は、失敗で終わりました。
次の日、兵十が、庭に出てみると、庭の小さな山の横で野良猫が1匹死んでいました。昨日備えたタケノコを食べたらしい、兵十は、タケノコに毒が入っていたことに気づき恐怖を覚えました。
ごんは、1回目の暗殺は失敗したものの兵十へ恐怖を与えられたことに少し満足しました。そして、ほかの暗殺の作戦を考えていました。
考えている途中、ごんは、家族の行方が知りたくなり、あの洞穴に行きました。
しかし、行ってみたものの、もう誰も住んでおらず、両親の行方は分からなくなりました。ごんは、大声で泣きました。
「お母さん、お父さん、やっと会えたのに…」
「親不孝でごめんなさい(泣)」
「お兄ちゃんお姉ちゃん、会いたいよ」
「なんで、僕が殺されなきゃ行けないの?ねぇ、なんで〜なんでよ〜(泣)せっかく会えたのに、どうして僕ばっか不幸なの?(泣)」
「兵十〜絶対許さない」
ごんは、この日から復讐以外考えないことにしました。
いや、復讐以外考えられなくなっていきました。
そして次の暗殺方法が決まりました。それは、屋根から大きい石を落とし兵十に当てるというものです。
兵十は、1回目の毒殺の時に感じた恐怖が頭をよぎっていました。
そしてあの日から食べ物は、自分で購入したり取ったりしたものしか食べなくなりました。近所の人の貰い物なども全て口にしませんでした。
そのため、兵十は少しずつ痩せていったのです。そんな兵十をごんは、しめしめと見ていました。
ごんは、暗殺方法決定から、念入りに計画を練りました。そして、月明かりが、照らすある日の晩、遂に決行することにしたのです。
作戦はこうです。兵十が、ここ数日毎日、晩御飯の時間になると庭の小さな山に手を合わせに来るので、その時屋根の上から拳8つくらいの大きさの石を上から落とすという。
「スタンバイOK、後は待つのみ」
ガチャ
兵十が、家から出てきました。
「よし今だ」
ボソッ
ごんは、下にいる兵十を見て見ました。すると…
「うわっ」
「なんで、こんなところに石が?」
下にはびっくりして腰を抜かした兵十がいました。
状況を整理すると、兵十は生きていました。しかも当たっていなく無傷です。
何故かと言うと、ごんが石を落とした瞬間、運が良かったのか兵十は、忘れ物をしたのに気づき、家の中へ入ったというのでした。
そして、後ろに何かが落ちる音がしてびっくりして腰を抜かしたという。
ごんは、逆にびっくりしました。
「なんて運の良い奴なんだ」
「あーーーなんで死なないんだよ、許せない許せない許せない」
こうして2回目の石落下暗殺も失敗に終わりました。
ごんは、怒りで村を飛び回りました。
そして、恨みの分悪霊の力が強くなり、ごんは、この日、村に大雨を振らせました。この雨は、数日間降り注ぎ大洪水が起き村の農作物や人々の生活を大きく変えたのでした。
そして、この洪水によって、山に行くまでの道と村と村の間にに大きな崖が出来ました。
ごんは、自分の力のせいで起きた大洪水で、村の人々の家族が、離れ離れや、亡くなったりするのを見て、あの山火事を思い出しました。そして、何故か申し訳なくなり、これ以上他の人を巻き込まないよう最後の決心をしました。
「よし、これで最後」
それは、兵十暗殺は、この崖から落とすと言うので最後にしようと言うこと。
別にまだ、兵十への恨みが無くなった訳ではありません。なので、これで死ななかったら、大人しく諦めて成仏すること、そういうことにしました。
そして、その日がやってきました。
村の男達は、山と村を繋ぐ橋を作るのに借り出されました。兵十も、そこに参加するみたいです。
ごんは、兵十が、1人になるのを待ちました。
ひたすら待ちました。そして、夕方、ごんは、他の男たちが帰っていくのを見届けて、兵十に近寄りました。
そして、大きく息を吸って、念を込めて背中を押しました。
ドン
兵十は、何かに押された気がしました。
その瞬間目の前には、地面がありました。
バタ
身体中に痛みが走りました。最初は何が起こったのかわかりませんでした、しかし、今まで、何度も殺されそうになったのでふと理解しました。
「俺は、死ぬのか」
頭から血を流した兵十はゆっくり目を開きました。すると、薄れゆく意識の中、死に際になり兵十はごんがかすかに見えました。
「ごん、お前だったのか。俺を殺そうとしたのは。」
ごんは、憎しみの涙を浮かべて言いました。
「お前のせいで、お前のせいで、僕は死んだ、せっかく家族と会えたのに。」
兵十は、ぐったりと目をつぶったまま言いました。
「本当に、ごめんな」
「あの時、お前を殺してしまって、俺はなんて馬鹿な事をしてしまったんだって、凄く悔やんだ、だから、せめてもの償いで、庭にお墓を作って毎日毎日…ごめん」
そこで、兵十は、息を引き取りました。
ごんは、今までの憎しみから解放されたのか力が抜けたように床にばたりと、倒れました。そして、2人の魂の煙が細く長く天へ昇っていきました。
最後まで読んで下さり誠にありがとうございました。
このお話のごんは、もしかしたら、ずっと誰かの謝罪が欲しかったのかもしれません。
このお話の、前半は実際の教科書に乗ってるごんぎつねとは、少し違う、話も混ぜているので、本当の話が知りたい方は本家を調べてください。