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雨乞いは日照りと共に

暗い部屋の中、僕は一人天井を見上げていた。

隣の方ではカチカチと規則的な時計の針金の音だけが辺りを(こだま)している。

何をしているかと聞かれても答えようが無い。何もしていないのだ。

眠りにつこうかななんて思っても中々つく事が出来ず半ば参ってる様な状況下だ。

どれだけ時間が経ったんだろう。

時間を確認しようにも明かりを付けたら余計眠れなくなるので夜中は時間の感覚が分からない。

もう随分こんな感じな気がする。

カチ……カチ……カチ……カチ……。

真っ暗闇の中、空間はあやふやで時間の流れを掴むことが出来ず見渡せるものは何一つない。

自分の居場所をつかむ……とでも言えばいいのだろうか?

暗闇で何も見えないものだから自分と周りを紐付ける事が出来ず地に付いてる感覚がない。

例えるなら浮遊している様な感覚。

……いやこれに関してはふかふかのベッドで横になっているせいもあるだろうが。

だから”夜”と言うのは如何せん不思議なものなのだ。

普通だったら明日の為を思い躍起になって寝付く努力をする筈だ。

だけど僕はそんなことはしない。

明日の予定なんて気にしないし僕は僕のやりたいように生きていくだけだ。

そんな生き方誰に責められようものか、そんなこと余程自分の生き方に胸を張れる人間でなければ出来やしない筈だ。

だから僕はそんなことで焦ったりしない。

つまるところ流れに乗ってるだけなんだ。

流動的なんて言い方をすれば聞こえはいいが身も蓋もない言い方だと流されてるだけ。常に何かに。

考えなし、とも言える。要は莫迦なんだろうな。

────……ああ、また、くだらないことを考えてしまっている。

もうホントそろそろ寝なきゃな。

何度か寝返りをうち、暫く経ってから僕は眠りについた。



尿意と周りの眩しさに目を覚ます。

古びた時計を見ればすっかり午後の1時を差していた。

「ふあぁ〜……よく寝たなぁ〜」

とりあえず”僕の朝”の支度をすませることにした。

顔を洗って、歯を磨いて、そんなルーチン化された行動を取れば自然と脳も徐々に覚醒してくる。

軽くご飯を食べようやく本調子になってきた所でパソコンの電源を入れた。勿論トイレも済ませた。

────今日もあのゲームをやろう。

なに、ただのFPSだ。特別に奇を衒ったものじゃない。

このゲームをしていればつまらない周りのことやしがらみなんて忘れられる。

考えるべき周りの環境は動かしてる画面の向こうの紛争地帯だけになる。

寧ろ生き残るために否が応でも考えることになる。

ああゲームってのは本当にいいものだな。

などとまたくだらないことを考えていたらゲームがスタートした。

僕はゲームが上手いと自負している。

その自尊心と向上心が僕を更に強くしてくれる、のめり込ませてくれる。

相手をこの銃で殺した喜びを、相手の読みに勝てた高揚感を、敵に撃ち殺された悔しさを、その一喜一憂がこのゲームの全て。

その感情の起伏こそがFPSの醍醐味だ。

僕はソロプレイなのでこれまた人間関係なんて気に留めずにすむ。

一人なら技量だって上がっていくものだ。

10戦近く戦って休憩がてらに外を見ればもう夕暮れ時だった。

「はあー……とりあえず一旦終了」

1つのゲームと長く付き合ってくコツはメリハリを付けることだ。

休む時はしっかりと休む、とても重要な事だ。



『はぁ〜……もうこんな時間かぁ……』

時計を見遣ればもうすっかり夜の10時を指していた。正確には10時25分である。

最近も物騒なニュースが多い、こんなに物騒なことばかりなのに世界はちゃんと回っているものだ。

案外世の中ってのはそう易々と物事には動じないのかもしれない。

その証拠に公には何処の国だって綺麗な言葉を並べ立てるけど改善なんてなんにもないからだ。

もしかしたらこう言うのって本当に何か大きな危機でも無いと何処も動かないんだろうな。

……とまあこんな偉そうな事を時間も気にせず呑気に考えていられるのは暇でやることがないからだろう。

何もせず一日中家でゴロゴロしてたらこうなってしまうのも無理はない。

普通なら仕事の事とか学校の事とか、もっと自分の現実に則した有意義な事を考える筈だ。

「学校、学校か……」

そう言えばもう1週間も僕は学校に言ってない。

「そろそろ怒りにくるかな……」

僕は内心彼女の”脅威”について考えあぐねいたところ……。

ピーンポーン!

タイミングよろしく家のインターホンが部屋中に響いた。

正直言って僕は固まってしまった。これは少々面倒だぞ。

ピーンポーン!

2回目、流石にこのまま出ないと本当に”大変”なので僕は急いで玄関の元まで駆け寄った。

「はい、今空けるよ」

僕はこの夜の時間に玄関モニターも見ずにドアを開けた。向こうの相手が”誰”なのかは分かっている……。

「こんばんは、アキヒラくん」

「あっ、こんばんは……結花さん……」

「……ここで話すのもなんだし入っていいかな?時間も時間だし」

「あっ、うん……」

ギギギ……とドアを開いて彼女を招き入れた。

「まず夜分遅くにごめんね、びっくりしたでしょ?」

結花さんは脱いだ上着を脇に挟みリビングのソファーに座った。

「いやあそんなこともないよ

この時間に結花さんが来るのは初めてじゃないしね」

相変わらずの手馴れたビジネススマイル、それは家の中であろうと目の前にいる彼女が幼なじみだろうと変わりはない。

「そ……それで今日はどうしたの?」

顔色を伺いながら恐る恐る聞いてみた。

「用がないと来ちゃダメなの?幼なじみなのにぃ?」

「あっそれは……」

たったの一言で突き返され手持ちの言葉が尽きてしまった僕は口篭ってしまった。

「……まあそうだよねもう10時過ぎだって言うのに……来たら驚いちゃうよね

それにこんな時間に二人きりだなんて……ねえ?」

「えっあっぅぅ……それはその……」

困った。いきなりそんなことを言われたことに。どうしたらいいか分からなくなってしまった。

「うふふ……ごめーんごめんっ!

ちょっとおふざけで言っただけっ!

……ごめんね?」

「あはぁ……そうだね僕もびっくりしちゃったよ」

僕は"こういった"ものには慣れていない、もちろん結花さんは昔からの付き合いなのが分かった上で言ったのだろうが、それでも少々大胆なものである。

「本当はね、真面目な理由なんだけどね

……ずっと学校来てないよね?

来ないと……駄目……だよ

私もひーちゃんもみんな心配してるし

成績にも響いちゃうよ……」

多方予想はついていた、何故ならそれが理由でこの時間に来ることは初めてではなかったからだ。

でも違う理由であって欲しかったからした質問。


(今日はどうしたの?)


我ながらに馬鹿げた質問だ。

そんなの答えは一つに決まってるのに。

「うん、そうだね、僕もそろそろ行かないと不味いなと思っていたところだよ……」

歯切れの悪い返事をした。彼女が来ると予想出来てたならもっとマシな言い訳を考えておくべきだろうと今になって思い至る。こう言う所が僕は莫迦なのだ。

「そうだよ来なきゃだめだよ、私も付いてるから一緒に行こうよ」

結花さんは悲しそうな顔をしていた、僕と同じように愛想笑いを浮かべているけど僕のそれよりぎこちなくて切なそうな顔。

幼なじみにこんな顔をさせるべきではないのは分かってる。

僕達は昔はこんな痛ましい関係性じゃなかった。

でも……きっと僕と彼女は合わないんだ。お互い成長して来るにつれその溝は深くなって行く。

……だから今こそちゃんと言おう。これ以上結花さんに迷惑をかける人間でありたくない。

「……結花さん、もうここには来ないで欲しいんだ」

「えっどうして、どうしてそんなことを言うの?もしかして私がうるさく学校の事で言いに来るから?」

「うん……それもあるかも……腑甲斐無い話だけどいつ学校に行けるかなんて正直分からないよ……そんなことの為に結花さんを付き合わせるのは時間の無駄だし……」

その瞬間一瞬結花さんの表情が強ばった

「無駄ってどう言うこと……私がアキヒラくんに学校に行くよう言っていたのは全て無駄だったってこと?つまり私の言葉なんか耳に入れてなかったってこと?」

不味い、言葉選びを間違ってしまった、そんなつもりじゃないそんなつもりじゃない僕は半ばパニックになりながら言葉を返した。

「あっいやそうじゃないんだ、ただこれ以上何度も付き合わせるのは結花さんの時間を取る事になってしまうし……」

「それなら明日学校に来てよ、来ないなら私また明日この時間に来るから」

「ごめん、それは出来ない……」

彼女の顔を見ながら言うのはあまりにも怖いので下を向きながら僕はそう返した。

暫しの間の後……「そっか分かったよ」

「えっ!?」

その言葉をくれた事への歓喜か、それともその意外性か……。

僕は思わず顔を上げた。

一緒に座っていたソファーから彼女だけ立ち上がり数歩前に進んでこちらを見ていたので前髪に隠れてうまく表情を見れない。

口を結びじっとこちらを見ているので僕は何か言葉を掛けようとした。

「あの……」

するとパァっと顔をあげいつもの可愛らしい笑みを作った結花さんは僕にその日最後の言葉を掛けた。

「またね」

そう言って結花さんは帰って行った。


ゲーム世界への転生ではありません。

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