プロローグ(4)
さて瞼を開けるとそこにはだだっ広い大広間に立たされていた。
派手な洋館を思わせる造形の一室、堀の深い人間が掘られたブツが置いてあったり、美術館にある様なこれまた彫りの深い男や女が描かれた絵画が貼られてあったりと風野アキヒラはイマイチ今の状況を理解出来ずにいた。
無論、それもその筈であろう。
彼がいたのは築ウン十年のそこそこボロい都立の高校であるのだ。
それがどう言う訳か眠らされ、突っ立ったまんま目覚めたと思ったら連れてこられた場所がこんな所なのだから。
幸いアキヒラは一人この場所にポツンと取り残されている訳でもなく他のクラスメイト達も連れてこられている様だった。
ほぼ同時に覚醒したのだろう。
皆が皆ボヤを吐きながら今置かれた状況に困惑している様だった。中には立ったままではなく横になっている者もいた。
そんな彼等を尻目にある人物を探す少女が一人。
彼女は懸命にこのだだっ広いクラスメイト達のいる大広間でとある少年を探していた。
キョロキョロ周りを見遣り、早歩きで移動して、人混みをかき分け……ようやく見つける。
目的の少年の元まで辿り着いた。
「あ、風野くん!良かった、やっと見つけた。大丈夫?怪我とかしてない?」
アキヒラは声をかけてきた少女を見てようやく張り詰めていた心がほころぶのだった。
「あ、結花さん、良かった無事だったんだね。結花さんも怪我とかしてない?突然こんな所に連れてこられてビックリしちゃったよ」
いつもの愛想笑いで彼女───披心結花に問いかける。
すかさず結花は笑顔を返して「ううん」、と答えながら首を横に振る。
「私は大丈夫。それより風野くんが無事みたいで良かった……本当に心配してたんだよ?」
自分の置かれた状況よりもボクのことを心配してくれる披心結花に相変わらずだと思いつつ返事をするアキヒラ。
「ありがとう結花さん。僕はこの通り何ともないよ、それよりここは一体何処なんだろうね?…」
二人は改めて建物に目を移すと……周りの景色はとてつもなく壮大で、未だに自分らの置かれた状況を賢しく理解出来ずにいた。
ここは一体何処なのだ。誰が、何の為に。
確信的な疑問がアキヒラと結花の脳を突く。
……その時だった。
「ガゴォ……」と言う鈍い音と共にいつの間にか切り込みの入っていた大広間奥の中央正面の壁が開かれた。
眩い光と共に広がる景色は───────
ようこそ救世主達よ
男の威勢の良すぎる野太い声が嫌に辺りを共鳴した。