飯処『大魔王』
無事に魔王を討伐した勇者は、王都へ帰還した。そして王様に魔王の討伐を知らせて、感謝された。
しかし、その勇者の心の中には不安が残っていた。
「魔王のあの言葉……」
『勇者、よくも我を倒したな。これで魔族が世界を手にする事は、叶わなくなった。しかしだ! 覚えておけ、我が居なくなったら大魔王様が復活する! 覚悟しておけ』
この魔王の言葉が気になる勇者であった。
「大魔王か……」
街中を大魔王について考えながら歩く。
「もっと情報があれば」
グゥ〜っと勇者の腹が鳴った。
何処かに飯屋は無いか探すと変な店があった。
飯処『大魔王』
「え?」
とにかく勇者はすぐに店に入った。
「いらっしゃいませ! お好きな席にどうぞ」
エプロンは問題ない。
しかし、それを着ているのが魔族で、明らかに自分より格上の存在じゃなければだ。
「お、お前は何者だ! 何故魔族が!」
「お客さん、落ち着いてください。他のお客様の迷惑になりますので」
周りを見ると、結構な数の人が食事をしていた。
本当に何この状況?
「あの、とりあえず空いてる席へどうぞ?」
俺はカウンター席に座った。
「ご注文は何に?」
「その前に、お前は何者だ」
「俺? 俺は大魔王といいます。それで、ご注文は?」
「なんだと! 何がご注「すみません! オーガ肉魔野菜炒め定食1つ!」
「はい、すぐに!」
「……」
「お客さんは?」
「オススメを……」
「はい、少々お待ちください!」
周りの人も色々注文している。
なんなんだ?
目の前に料理が運ばれた。
「お待たせしました。オススメの魔界魚の刺身定食です」
恐る恐る食べてみると、美味しかった。
複雑だ。
「お前は大魔王なんだよな?」
目の前の調理をしている魔族に問う。
「魔王が死んだでしょう? 代わりに来ました」
「何故、飯処を?」
「俺は魔王が死ぬ度にこうして店出してますよ? 常連さんにも聞いてみ?」
ガラガラ
店の扉が開く音がしたので、振り向くと王様家族が居た。
なんで?
「お、王様!?」
「おお、勇者よ来ていたのか。店主、オススメを3人前」
「へい、座ってお待ちを」
俺は王様に近づいて、質問した。
「王様、これはなんですか?」
「ああ、勇者は知らなかったな。魔王を倒す目的は大魔王復活のためなんだ」
「は?」
「数年後にはまた魔王は復活する、今のうちに堪能せねば」
てことは、魔王を討伐は大魔王の作る絶品料理のため?
俺はそれ以上何も考えず料理を堪能した。
数年後魔王が復活した。
勇者よ、早く倒して大魔王を復活させて。