ロキビとガイコツ伯爵と木星のモグラの革命
ギターを弾いていたら弦が体中に絡みついてくるし、
お風呂に入っていたら壁が内側にめり込んできてあたしを圧迫するし、
木星のモグラは土の中を潜ってばっかりだからやんなっちゃう。
前に一度そのモグラに、何でそんなに掘り続けるの?と聞いてみたけど
「俺が掘ってるわけじゃねーよ、土が掘られてるんだよ」だってさ。
わけわかんないの。
せっかくの休みだし今日はガイコツ伯爵のお城にでも行っておいしいご飯でもご馳走してもらおーっと。
彼女はそんな独り言を言ってから家を出た。
彼女の名前は、ロキビ。
ロキビは瞬きをしない。
ロキビの面倒を見ている博士はそのことが気がかりらしい。
ロキビはそんな博士のことも気にかけず、鼻歌を唄いながら自転車に乗った。
その歌は「地獄からのデスパレード」というロキビが作詞作曲した歌である。美しいメロディが耳に残る曲だ。
その日は今にも雨が降りそうな雨雲が空を泳いでいて、人類の曇った感情が生み出したに違いないとロキビは思った。
ロキビの自転車は空中に浮くことができる。地上から5メートルくらいまでしか浮けないがロキビはその自転車をとても気に入っていた。
途中で桜の花が舞っていて天国にいるような錯覚を感じた。
そうこうしているとガイコツ伯爵のお城に着いた。
2LDKのなかなかおしゃれなお城である。
しかし、ロキビは壁紙に使われている猫の模様が気に入らないらしく、伯爵に会うたんびに、もっといい壁紙があったはずよ、と言っている。
ロキビは玄関の前に立つとチャイムを鳴らした。
インターホンの小さな穴から伯爵の乾いた風のような声が聞こえてきた。
「はいはいどなたですかな?」
「あっ伯爵。あたしよ ロキビ。」
「これはこれはロキビ君。ちょうどいい時に来てくれたね。実は今トキマル君もいるのだよ。」
「だーれ?それ?」
「トキマル君だよ。ほら木星のモグラじゃないか。君は相変わらず名前を覚えないんだね。」
「えっホント!早く中に入れてよ!」
そう言うと玄関の扉が徐々に透明になっていき、ロキビは中へ入った。
お城の中からはいつものように赤ワインの匂いがたちこめている。
「あれっ壁紙が変わってる!」
奥の部屋からガイコツ伯爵がでてきた。シルクハットを被って髭がきれいに整えられている。
「さすがロキビ君。よく気づいてくれたね。」
「当たり前じゃない。それにしてもこのカブトムシの壁紙なんてよくあったわね。とってもおしゃれよ。」
「実は特注で作らせたんだ。」
ロキビはそのカブトムシの模様に触ってじっくり観察している。
そこに木星のモグラのトキマルが現れた。
「俺は別にどっちだってあんまり大差ないと思うがな。」
「あらっモグラさん今日は土を掘らなくていいの?」
「今日は第三火曜日だから掘らなくてもいいんだ。」
ガイコツ伯爵は赤ワインの入ったグラスを飲み干してはあばら骨の隙間からぴちゃぴちゃと垂れ流している。
「そんなことより今トキマル君と革命を始めないかと話してたとこなんだが・・・・」
そこまで言うと伯爵は骨が崩れていって床に砕け散ってしまった。
木星のモグラはネズミになってしまい部屋中を走り回って餌を探している。
ロキビはわかっている。こんな世界なんて間違っているとわかっている。
次に雨が降った日には博士に頼んで殺してもらおうと思った。
それが私たちの革命。