パーティかな?
勇者ルーマは、ギルド- ウォードリアン -に来ていた。
「魔王を倒したい。パーティを探している」
ギルドの受付けをしているアルバイトのスタッフ、ヨーコは、管理本を捲りパーティを見繕う。
「あそこに3人いるでしょ?白い服の人達。あそこに声をかけて。勇者属性の人を探しているわ」
「ありがとう」
勇者ルーマは、その3人組へと声をかけた。
「すまない。僕は勇者属性を持つルーマ。君たちは?」
「私の名は格闘家ドラン。属性は、格闘ではあるが本来は、木こりである」
「私の名前は暁ミカサ。盗賊属性だけど本来は、パン屋って言うか普通に暮らしてた。こっちはセレンよ!」
「どうも。セレンです。魔法属性です。補助魔法が…得意です。本来も魔法使いでした。あなたの本来は?」
勇者ルーマは、少し3人から目線を逸らし呟く。
「…何もない」
3人は、少し近寄る。
どうしてかと言うと声が小さかったからだ。
「え?今、なん…」
「何も無い!!!」
今度は、怒り気味に叫ぶ勇者ルーマ。
その場の空気が一変した。
張り詰めた雰囲気になる3人と勇者ルーマ。
周りで話して居たギルドに来ていた者も注目する。
受付けのヨーコも椅子から立ち上がり、転がった椅子の地面を打ち付ける音が、静寂なるギルド内に響く。
「す、すみません。何だか嫌な事を聞いてしまって。本来なんて聞くべきでは無かったですよね」
格闘家ドランは、優しく笑みを浮かべ勇者ルーマへと話しかけた。
「ま、それはそうと勇者属性の人を探してたし、いいよね?セレン!」
盗賊ミカサは、セレンの背中を押しルーマの近くへと連れて行く。
下を向きながら話す補助魔法師セレン。
「あ、あの…魔王グロウを倒したく魔王討伐パーティを募集していました。魔王グロウは強く強大で配下の悪魔も多く強いです…」
補助魔法師セレンは、勇者ルーマの手を取り顔を上げルーマの目を見つめる。
「私たちと!魔王を討伐して下さい!」
「俺、何も無いですが…そ、それでも良ければ…」
魔王討伐パーティは、結成した。
4人は、微笑み手を1箇所に重ね契約を果たす。
それから半年。
4人は、旅を続け魔王軍の悪魔と立ち寄った村や町の問題を解決しつつレベルを上げた。ギルドに居る時よりもスキルが増え実力をつけた。
それはどのパーティよりも強くなった時に起こる。
「私、実は…魔王の知り合いなんです」
焚き火を囲み残る悪魔の配下は、四天王だけとなり明日はディ・ジェルドラの城へと乗り込もうとしていた時だった。
「え?」
勇者ルーマは、焚き火から焼き魚を取り口に入れる前に驚きの言葉を発してしまった。
残りの2人も同じだった。
「冗談…ですか?」
「セレンって、たまに意味不明なギャグとか行動するもんね…」
ドランとミカサは顔を見合わせて笑っている。
「冗談じゃなくて。その…昔、魔王が今世に現れた時に、居たんです。その場に…」
勇者ルーマは、魚を口に入れたまま話す
。
「それって昔の話?」
「え?!あ…まぁ…そうです…」
「じゃあ、いいんじゃないか?今は魔王討伐パーティに居るんだし!」
「え?あ、いえ…そういう事で無く…」
ミカサが口を挟む。
「それ何で今、突然言い出したの?」
「そ、そうですね…もっと早く言ってくれても良かったですね」
ミカサの発言にドランは、気付いた様に少し怒っている様子である。
「あの時、私は…魔王グロウと目が会いました…」
「いや、早く言って欲しかったんであって昔の話はいいよ!」
勇者ルーマは、立ち上がりセレンの肩に手を置く。
「いや、両方でしょ。昔の話しと何で言わなかったのか?!そうよね?!ドラン!」
「そうだ。昔の話と何故、今までそんな事を隠していたのかを聞きたい」
勇者ルーマは、そっとセレンの肩から手を離した。
「みんなが、怒るんじゃないかと思って…言えなかっただけ…なんだけど。何だか怒ってるって言うより、どうなんだろ?」
「セレンギャグと言うより天然ねコレは…」
「私もそう思う。けれど信用してくれたから信頼が、ここに来て話す事となった」
2人の発言を聞いて勇者ルーマも語り出す。
「覚えてるか、みんな。俺が…ギルドで話しかけた時、少しピリついて、みんなは優しかったから聞かずにいてくれたけど…俺の何も無かった話を聞いて欲しい…」
暁ミカサも立ち上がる。
「いや!アンタの何も無かった話よりも先に話てたセレンの話を聞いてよ!」
セレンは、俯いたままだったが立ち上がり森の方へと歩いて行く。
「セレン!」
皆が、呼ぶ声も耳に届かずなのかセレンは、1人歩き木の木陰に入る。
月からの光がセレンの白い服に反射し煌めく。
するとセレンは、眠りの補助魔法セルティック・フローを振り向きざまに放った。
「ごめんね。みんな…」
勇者以外の2人は、倒れ込み寝ている。
勇者の元へ歩いて来たセレンは、勇者の肩に手を置いて瞳を見つめる。
「あなたの何も無かった話は、きっと私が原因なのかも知れない。今、何かある事をどう思っているの?」
「俺は…別に、勇者じゃなくても良かったし2人みたいに眠らされても良かった。魔王が属性を世に放った時、俺は特に何も無い子供だった。母さんと父さんと兄貴の4人で暮らしてただけの」
「そう。やっぱり、あなたは勇者に向いて無い。魔王グロウを倒せるか分からない。ミカサとドランを連れて帰って欲しい。本来は、私が彼を倒さないとダメなのよ…多分…」
勇者ルーマは、少し悲しそうにセレンを見るも歩き始めた補助魔法師セレンの背中を見つめ言葉もかけれなかった。
森は、静けさを取り戻し。
焚き火の跳ねる火の粉の音が、ルーマの気を変えた。
「補助魔法師セレン!」
セレンが消えた森へと叫び声をあげる。
それを聞いたミカサとドランの目が覚める。
「俺は勇者だ!勇者ルーマ!向いてるも向いてないも魔王が放った属性により決定された!お前が決める事じゃ無いっ!俺はミカサとドランだけとでも魔王グロウを倒す!良いか補助魔法師セレン!」
寝ていた2人は、微睡みに響く声の意味を聞いて起き上がる。
「セレン…は?」
「ルーマ殿…」
「行っちまった…俺は勇者に向いて無いとか魔王を倒せないとか私が倒さないとダメだとか言って…」
「そっか… 」
「私達は、少し知って居たんですルーマ殿。セレン殿の噂話を。ルーマ殿に言わなかったのが悪かった。悪評高い魔法師セレンの話を…」
格闘家ドランは、消えかけた焚き火に木を焚べる。
ミカサは、少しルーマと同じ方へ目をやるとドランを見て水を飲んだ。
勇者ルーマは、下を向いて自分の手を見ている。
「俺ら3人で魔王の元へ行く。いいよな。2人共。セレンもきっと来る。明日はディ・ジェルドラへ決戦を申し込む。それでも大丈夫かな?」
2人は、頷いただけだった。
ディ・ジェルドラ。
魔王グロウの配下。四天王の1人。
魔王は、10年前に今世に現れた。
その時から世界の人に『属性』が与えられた。
『本来』の暮らしと『属性』は一致と不一致を含む。
職業や生き方を変える出来事として十分であった。
魔王は、悪魔を今世に呼び込み魔界を作り人の暮らしを侵食して行った。
魔界に呑まれた人間の世界は、その姿と本来の属性、全てを変えられる。
それを防ぐには『勇者』と共に魔界へと行き魔王を倒さなくてはならない。
勇者ルーマは、勇者属性として必ず皆を連れて魔王を倒さなくてはならない責任をおわされたのだ。
魔王降臨と属性が付与された、この世界で。
そんな事をふと思い出したのかも知れない。
国からの通達で調べられた属性が、勇者だった時の自分へと話す。
「俺で良いいんだ…きっと…」
それを聞いたミカサは、ルーマの手を握る。
「見て…星の光。きっと世界は10年前と何も変わって無い。だって10年前も見たもん。あの光…」
ドランも近くに来ていた。
「そうです。行きましょう。3人で。セレン殿の元へ…」
星は瞬き3人へと光を届ける。
希望の光を。
そして補助魔法師セレンもまた、空を見上げて同じ星を見ていたのだった。
「グロウ様…セレンの事で、まだ何か思われているのですか?」
ディ・ジェルドラは、グロウの椅子へと話しかける。
「何故だ?ジェルドラ…」
「いえ…特に深い意味は…。探して連れて来てしまえば良いのでは?」
パチョファが、傍で大きな棒付きキャンディを大きな音を出して噛み砕き聞いて居る。
「パチョファ…グロウ様の部屋では…」
四天王1人のラプスが、パチョファを注意する。
四天王1人で2人のガルガルとバドゥギャが、それを見て笑い2人同時に話し出す。
「ぐへへ、パチョファはなぁ、腹が減って減って仕方が無いんだ…」
「知ってるよ、ガルガル。お前だっていつも腹を空かしてるじゃないか」
ディ・ジェルドラが、振り返り4人を切り刻もうとし、4人が身構えた時だった。
「静かにしろっ!」
その手に持つ魔王の大剣マビュディスヴィレギスが、地面へとヒビを入れ魔王の部屋は、揺らぐ。
5人は、その場で身をかがめ、こうべを垂れてつくばう。
魔王グロウも、また。
同じ星を見つめて居た。
世界は分断され別れて居るが、星は変わらず同じなのだ。
《魔王グロウ!私は暗黒魔導師セレン!あなたを見つけ復活させた女よ!どお?私に従い世界を我が者とする?》
少し口角を上げる。
「フッ…」
5人は、少し不思議に魔王グロウを見たが、何も言わずに黙ったまま。
夜は、過ぎて行った。
「ねぇ、ワンギョは居ないの?」
「ん~、居ませんね。この時には…」
「あと、この記憶?タイムワープみたいなのって何?」
「…夢…ですよ。暁 ミカサ様…」
「夢、かぁ」
そう言って暁ミカサは、両手足を伸ばすと手が何かにぶつかって目を覚ます。
自室のベッドで目が覚める。
窓を開くと、そこは元の世界であった。
「夢…かぁ…。どんな夢だったっけ」
時計を見ると、まだ朝の5時半だった。
「会社の時間には、まだ早いかな…会社?」
ふと机を見ると教科書が置いてあった。
「私の名前は…暁ミカサ…いや、十間 歩智」
- ジュウマ ホトモ -
高校3年の受験を控えた私は、この日の夢を覚えて居なかった。




