異世界転生?
私は、東京の街でOLをしていたのだが。
急死してしまった。
その心臓が、止まる直前。
私は、とても大きな燃える鳥を、空に見た。
その鳥は、私と、私の周りを全て燃やし尽くし。
私の世界を、暗黒へと変えてしまったのだ。
- 都市ネフロス近郊 狩場 -
目を開けると、そこは、見た事も無い草が、沢山生えている森と言うより、ジャングルの様な場所だった。
私は、そのジャングルに寝そべりながら目を覚ます。
地面は、湿っている。
頬が、少し気持ち悪いと思った。
重い体を、少しだけ力を出して起き上がらせる。
カラン…。
と、何か軽い鉄が、地面に落ちる音がした。
身体に何か乗っていた様だった。
それが、起き上がると同時に、地面へ落ちたのだ。
私は、それを見て不思議に思った。
そして、私自身を見える範囲で伝えると、レインコートの様な白い布の服を着ていた。白いブーツ。
頭には、何か白いフードの様な物が、多い被さっている。
(何だろう?この格好は…)
そう思ったのは、まるでファンタジーの世界にある、魔法の杖の様な物だったからだ。
私は、何処かのテーマパークの中で、気を失ったのだろうか?
そんな事を頭で考えながら、その杖を持ち、周辺の散策をする。
- 暁 ミカサ Lv.1 -
私は、あまりテーマパークに興味は無い。
趣味と言えるものも無く、会社と家を往復し、たまに贅沢をして高い食事をする程だ。
会社でも地味な方だが、何かが秀でてる事もなければ劣る事もない。
友人は、1人しか居ない。それも最近は、疎遠だった。
けれど唯一憧れていた事が、あった。
東京には無い。星空の綺麗な場所で、いつか愛する人と。
流れ星を見る事だった。
何と恥ずかしい夢だろう。
自身でも、そう思わずには居られない。
顔が、火照って来てしまった。
そんな事を考えジャングルを散策していると、水の流れる音がする。
喉も乾いた。私は、その音がする方へと足を早めた。
しかし、何やら水の音だけでは無い。
何だろう?
そう思い、大きな木の先に見たものは、巨大な川と、巨大な怪物だった。
私は、それを見るなり腰を抜かしてしまい、大きな木の下で、尻もちをついて止まって居た。
「何をしている?こんな所で…ラキサノトラスの観察か?見た所、この近隣の者では無いように見受けられるが…」
そこへ謎の声。
私は、発狂した様に声を上げた。
が、しかし。この状況で人に会えたのは、とても恵まれている。
このテーマパークの人だろうか?
「あ、あの、すみません。私、道に迷ってしまったみたいで…しかも、そこで気を失って…」
それを聞いた男は、驚いていた。
ラキサノトラスって何?
「そうなのか?大丈夫か?では私が、ネフロスへの抜け道を教えよう。さぁ、立って…」
男は、私に手を向けていた。
その手に、少し戸惑った。
でもそれは失礼になるような気がして、手を伸ばした。
見るところ、鎧を着た、逞しい男だった。
目は、切れ長で、日本人の様に見えない。
このアトラクションの、海外スタッフさんなのかも知れない。
お仕事の邪魔になってしまっただろうか?
「どうも、ありがとう。あの…あなたは?」
そう私が尋ねると、その男は、少し失笑した。
「この私を、知らないと?ふ、面白い女だな…」
何故か私は、少し腹が立った。
でも。仕事上、そういう風な役柄を崩す訳にはいかないのかと思い、グッと堪えた。
そんな事を思っていると、男は立ち止まり、私の目を見る。
「ふむ、何かのマヤカシか、それとも…」
男の顔が、あまりに急接近して来たので、私は思わず男を突き放してしまった。
「おぉ…すまぬ。なんとも奇妙だったもので、つい…」
私は、正気を取り戻し、男に謝った。
「いや、いいんだ。さぁ、もうそろそろネフロスだぞ」
そう言われても、ネフロスとは?
何か分からない私は、戸惑ったが礼を言った。
「ありがとうございます。そうだ。私は、暁 ミカサって言います。宜しくお願いします」
そう言ってから私は、自分の名前に違和感。
そして何が、宜しくお願いします。なのかと自分に問う。
「いや、こちらこそ。名を名乗らずに失礼した…」
すると男は、立ち止まり。
私の方へと振り返る。
「あれが、ネフロス。そして私は、ネフロスの王、グロウ」
時が、一瞬止まった。
まず第1に、目に入った景色である。
そこは屋根が赤い家が建ち並び、絵に書いた様な城が、立ち聳え、辺りには、コウモリが飛び交い、空には、大きな三日月、城下はボロボロで、木も枯れている。
そして、第2に、王?この人が?何の?このお城の、王様?
理解が、追いつかないでいた私に、追い討ちが、かかる。
「私は、この世の魔王グロウである!」
そう言いながら、腰に携えた、大きな剣を知らぬ間に抜き、その先を地面へと突き刺す。
すると、その割れた地面から赤い光が、浮かび上がると、辺りにマグマが吹き上がり、ジャングルの様な場所を、燃やして行く。
一瞬にして辺りは、地獄へと化す。
私は、それを見て、これはアトラクションなどでは無く、現実なのだと悟った。
そして私は、また腰を抜かすのだろうと自分でも思ったのだが、気が付くと、杖を構え、グロウと名乗る魔王へ向け、見聞きした事が無い、言葉を唱えていた。
「闇は、その先へ、赤霧を払い、弧は、天を…血を清め、蘇の己は、循環を導く。咲き誇れ!」
それを聞いたグロウは、驚愕する。
「な、何を?!貴様はっ!」
私は、続けた。
「センドラ・ボルティスワァァァァァァイルッ!」
すると上空と、グロウの足元には、巨大な魔法陣が。
そして私の体は、赤く燃え上がり、背中には大きな羽。
魔王グロウは、身動きが取れない。
「この時を、待っていた…ずっと。ずっと。私は、絶対に、あなたを倒すと。魔法も、剣技も、何も効かないアナタに、唯一無二の私の補助魔法。センドラル・ボルティスワイルを、喰らわせられる、この日を!」
私は、傍観者であった。
私は、何も考えても居ない。
私は、動いても居ない。
どこに、私は、居るのだろう?
すると持っていた杖が、魔王グロウへと飛んで行った。
が、私と魔王の間で止まり、杖の尻尾が、私へと向いている。
「ねぇ、グロウ。私とアナタの因縁もここまでね。この補助魔法。発動条件は、発動者の死、そして効果は、それと引き換えに対象者を確実に葬る事よ!」
え?私は…何を?
「ま、待てっ!セレン!それを発動するな!私は、お前をっ!」
セレンって、私の事?私は、暁 ミカサ。でしょ?
「問答無用!発動!来なさいっ!聖杖パラディストロス!」
すると私が持っていた杖は、外の装甲が割れ、中から杖と剣が、合わさった様な姿を、光輝きながら現した。
そして、その剣の部分が、私に向かって飛んで来る。
「ごめんなさいね。あなたを巻き込んでしまって…」
セレンと呼ばれる私が、私に向かって言った言葉。
それを聞きながら、私の目の前は、また深い暗闇へと進むのだった。
魔王の叫びと共に。