003 勇者になりそうな奴を見つけた
「森の中であるか、異世界も修行してた世界と似たような自然であるな」
メダルのガイアが話しかけてくる。修行世界はこの転移先の異世界を元に作ってるから、似ていて当然なんだけどな。精霊が無事に活動できるようで一安心だ。
「あらあら、もう異世界についたのですかー」
「ではメイたちも顕現しておそばに仕えさせていただきますなの」
指輪から二人の精霊が人化する。あらあらうふふと言ってる巨乳のお姉さんで水属性が得意なのが『アイ』。ロリ巨乳で火属性が得意なのが『メイ』だ。
「ウフフ、わたくし達はメイドロボを模しているので、人化ではなく物質化ですよーマスター」
「メイドロボは男のロマンなの。ご主人様を癒すなの」
こいつらはメイドロボと言い張っているが、ロボ要素はまるでない。ロボの耳っぽいのを付けてるが飾りだ。12000年で色々とマイブームがループした結果、そばに仕える(侍らすではないと抵抗した結果)ならメイドが良いだろうという結論に至ったらしい。ロボ耳は遊び要素だな。
「じゃあ、オイラは付近の偵察に行ってくるっすね。ヒャッホー探索っす」
腕輪から飛び出したのは、風属性が得意の『ウィル』だ。イタズラ好きで手のひらに乗る小人サイズで、わちゃわちゃと分身して周囲の偵察をしてくれるようだ。
『ガイア』『アイ』『メイ』『ウィル』が、俺と行動を共にしてくれる主な仲間達だ。修行世界は小さかったとはいえ、12000年も過ごせば、この四人以外にも数多くの精霊が誕生している。しかし、そんな大所帯が一か所に固まっていてもしょうがないだろうと、ほとんどの精霊は現地に着いたら自由行動をすることになっている。
「じゃあ、みんな元気でなー。また落ち着いたら連絡くれよ」
「はい、サトル達もお元気で。ガイアもあまり無茶な事して星にダメージ与えるなよ」
「失礼である。この世界は修行世界に比べて大きいし、きっと大丈夫なのである」
何も大丈夫な理由になってないが、まぁ俺も見てるしきっと大丈夫だろう。環境に影響を及ぼすような力が必要になることなんてそうそうないだろうし。とりあえず、自由行動する精霊達に別れを告げ、ウィルを待ちながら今後について相談する。
まぁ、前々から話してたように、まずは人里を探して情報収集だな。できればそこそこ大きな街に行って、安定した生活拠点が欲しいよね。
「ウフフ、やはり移動中に襲われているお姫様を助けるのが基本ですかねー」
「山賊とか悪党をやっつけて軍資金をいただくなの」
「我は魔王とかドラゴンとか、猛者と闘ってみたいのである」
うん、いい感じで俺の影響受けてるね。まぁその辺はできる範囲で頑張っていこう。おっ、ウィルが帰ってきた。近くに人里はあったかなっと
「サトルのアニキ、あっちで盗賊っぽい奴らが待ち伏せてて、そこに荷馬車が通りそうだったっす」
マジで? お姫様来ちゃう? いや、荷馬車にお姫様はないか。でも商人の娘とか居るかもな。よし、困ってる人が居て余裕があったら助けるのはあたりまえ。現場に向かうぞ。あっ、精霊達は指輪や腕輪になって隠れててね。現地人の反応が分からんので、まずは俺だけで様子見しよう。
現場に着いたら、何か凄い強い剣士が荷馬車を助けている最中だった。出遅れたか。剣士に恐れをなして盗賊が逃げようとしているな。ガイア、逃げる奴は適当に拘束しておいて。
「分かったのである。落とし穴や蔦で動きを封じておくのである」
盗賊は突然現れた穴に対応できずに落ちていく。動きを止めた相手に蔦が絡みつき拘束完了っと。遠隔で落とし穴を作るって割と凶悪だな。魔法攻撃に分類すると思われるから、その辺を察知できないと一方的だな。
剣士が強くて、あっという間に戦闘は終了した。あの剣士もチート臭いな。これで助けた女の子とフラグが経ってたらチーレム勇者で間違いないな。って見てたら商人の娘が明らかにポーっと剣士を見てるし。こいつは転生者くせぇぜ。
「あの落とし穴や蔦は君がやったのかい? ありがとう、オレはイサム。ヨロシクな」
「俺はサトルだ。ヨロシクな」
さて、情報が欲しいけどなんて聞こう? 転生者の先達がいるなら、普通に転移してきたことを話しても大丈夫なのかな?
「ついさっき異世界から転移してきたんだけど色々教えて貰えないだろうか?」
「あぁ、やっぱり。どうりで強いわけだ。俺は転生者で剣の修行中。そろそろ村を飛び出して冒険者になろうと思ってるんだ。悪党じゃなさそうだから、村まで案内するよ」
異世界から来たって普通に受け入れてもらえるんだな、ありがたい。ちなみにこの荷馬車や盗賊はどういった状況なんだ?
「さあ? 街の方で治安が悪くなってるって噂は聞いたことあるけど詳しいことは分からん。オレはたまたま街に行った帰りで一緒になっただけだよ。積み荷が村に届かないと困るので運が良かったよ」
適当に話しつつ村へ向かうイサムと荷馬車についていくことに。よしよし、村の案内確保と、近くに街があるという情報ゲットだぜ。村で休ませてもらって、その後はイサムについて街に行けば冒険者にはなれそうだな。
なんて考えてたんだけど、あっさりと話は進まないようで
「アニキ、魔物の群れに村が襲われてるっす」
と先行したウィルから報告が上がってきた。厄介ごとの予感。とりあえずイサムに伝えて、村に急ぐか。
イサムに村が襲われていることを伝えた瞬間、凄い勢いで飛び出して行ってしまった。俺、転移直後で肉体は一般人だから走っては追い付けないなぁ。とりあえず、ウィルの風に背中を押してもらって(風に吹き飛ばされながら)イサムの後を追った。
村に着くと、ゴブリンやオークが村を襲ってる様子が見えてきた。村人は無抵抗ではなく、そこそこ屈強な男たちが、ゴブリン相手ならタイマンで倒したり、オーク相手には2~3人がかりで抵抗している。これなら救援は間に合ったかと思ったが、大きな猪とか犬っぽい魔獣に苦戦しているようだ。
イサムはどうしてるかなと探してみると、魔獣相手でも物ともせずに蹴散らしてる。何あの無双? 剣とか光ってるし、ビーム? 斬撃? とかも飛んでるし。魔獣特攻とか勇者補正とか持ってそうだなアイツ。
イサムはほっといても大丈夫そうなので、村人の援護をしますかね。ガイアやれるか?
『ザシュ』『ザシュ』『ザシュ』……、一斉に地面から錐状の槍が突き出され串刺しになる魔物たち。
「とりあえず、我が見える範囲の魔物をアーススパイクで串刺しにしてやったがこれでいいのであるか?」
あぁ、上出来だ。ってか余裕そうだな、おい。12000年も鍛えたかいがあったなぁ。
「アニキ、安心してるところ悪いっすけど、何かあっちの山で崖が崩れて大量の土砂が村に向かってるっすよ」
言われた方を見てみると、土砂が木々をなぎ倒しながらこっちに向かってきてる。土砂崩れってこんな規模が大きいものなの? タイミングといい、もしかして魔物の仕業だったりするのかな。えっ、何? 村へのヘイト高すぎない? 魔物の目的って人の殲滅なの? とりあえず、アイとメイは原因調査、工作兵とか居たら確保しといて。ガイア、せっかくだから派手にアレで食い止めるぞ。
「おぉ、ついにアレの出番であるか。12000年の研鑽の成果、存分にお披露目してやろうではないか」
俺は胸のメダルを空に掲げ叫んだ
「来い! 騎士の巨神、ガイアブラスター!!!」
メダルが輝き、前方に光の玉が現れ、その中から徐々に巨大な騎士が姿を現す。ガイアノリノリだな。登場シーンとか何度も練習したからなー。毎回登場シーンを変えて、登場バンク(使いまわし)を許さず、アニメーター泣かせの無駄に洗練された無駄の多い無駄に凝った無駄な登場シーンにしようぜと練習したかいがあったぜ。明らかに悪ノリの暇つぶしである。
巨神の胸から俺に向けて光が放たれ、俺搭乗! もちろん乗り込まなくてもガイアだけで動けるし、土砂ぐらい自動で止めてくれるからあまり意味はない。でも、俺とガイアが長年練習した戦闘フォームだ、ここで使わなくてどうする。
「ガイアウォール!」
巨神が土砂に向かって手を掲げたら、あっさり土の壁ができて土砂を防ぎました。これガイアブラスターに乗らなくても、メダル状態でアースウォールやっても同じ結果だったよね? ガイアウォールってアースウォールと何か違うんだっけ? 同じだよな?
ともあれ、魔物は撃退したし、急に発生した土砂は巨神が防いだため、村の危機は去った。突然現れた巨神について熱く説明しようと思ったが、今日は転移したてで疲れていたこともあり、説明はそこそこで詳しい話は明日にしてもらって、村で休ませてもらった。
……そして 夜が明けた!
「昨夜はお楽しみでしたね」
「突然何を言うんだサトル、というか何故分かった」
「いや、何となく言わなきゃいけない気がしただけだったんだが、えっ、何、イサム、お前お楽しみしてたの?」
「村の幼馴染とな。危ない所をギリギリ助けることができたんだ。お前が魔物の襲撃を教えてくれて助かったよ、感謝してる」
どうやら、吊り橋効果的に盛り上がったらしい。まぁ死にそうな目にあったら、後悔しないように行動するよな。てかやっぱりこいつチート持ち転生者で、きっちり幼馴染にフラグ立ててるとか、勝ち組だなぁ。良い奴っぽいけど勇者になってハーレム作りそうだなぁ。……もぐか。
冗談はさておき、お互いに落ち着いて情報交換をしたところ、イサムはこの村と近くの街以外は行ったことが無いらしい。そもそもがこの大陸の広さもはっきりしていなければ、海の向こうがどうなってるかもわかっていないようだ。国のお偉いさんとか、探索メインの転生者とかなら海の向こうのことも把握しているかもしれないが、一般人の認識としては自国と、隣接する隣国のふたつの国家があるってことぐらいしか分からないし、それで十分なようだ。
他には、魔物が多くいる地域があったり、見知らぬ遺跡や人類未踏の地など、そこら辺を探索するのが冒険者のようだ。すげー、街の便利屋さん的な何でも屋や、魔物討伐のための暴力集団的な冒険者じゃなくて、危ない所にあえて入っていく(険しきを冒す)冒険者なんだな。
「いや、便利屋や魔物狩りもするけどな。てかそっちの方が安定して稼げるから、一般的な冒険者のイメージはそっちであってるぞ。ただ、国の期待というか、まぁ管轄神が転生者を送り込んだ目的とかを考えると、人類未踏の地を探索する方の冒険も期待されてるわけよ」
「イサムは探索する方?」
「そうだな、まだ見たことない景色を見に行きたいと思ってる」
こいつ、赤毛の冒険家の方か。行く先々で現地妻をこさえる気だな。
「サトルはどうする? 一緒に行くか?」
「んー、興味はあるけど、他にも色々やりたいこともあるし、まずは未踏の地より先に自国や隣国の様子を見に行きたいかな」
「そうか、サトルがいると心強いから、一緒にパーティを組んでもいいと思ったら連絡をくれ。オレはオレで冒険の欲求は止められないし、ひとりでも挑んでみるよ」
とりあえず、近くの街までは一緒に行くことにした。それはそうと、この村はイサムが居なくても大丈夫なのか? 魔物の襲撃とかあったら危なそうだけど、幼馴染とか残して行って平気なの?
「それが心配なんだよなー。でも、村に一生閉じこもるなんてできる性格でもないし、どうしようもないんだよなー。流石にミミを秘境につれていくわけには行かないし。街に拠点を作って住んでもらうような甲斐性もないしなー」
「村の防衛について協力できることはあるぞ。俺は精霊と仲がいいんだが、村やそのミミっていう幼馴染の娘のことを守るようお願いしてみようか」
「そんなことできんの?」
そんなわけで、修行世界から一緒に来た精霊で、まだ近くにいた奴らに声をかけ、村を守るようにお願いしてみた。村人が遊んでくれるならいいよと、軽くオーケーが貰えたので、村長やミミに精霊を紹介してやって、後顧の憂いなく次の街へ旅立つことになった。
なお、この村では魔物の襲撃を幾度となく撃退する精霊使いの巫女が英雄扱いされ、その後も長く精霊といい関係を続けて精霊信仰の発祥の地となるのだが、それはまだ先の話。
「メイの出番少なかったなの、土砂崩れの原因調査に行ってきたけど誰も居なかったの」
「工作の痕跡はあったのでやはり魔物が原因と考えられますが、現時点では詳しい目的とかは分かりませんねー」
「我は巨神モードを披露できたので満足である」
「オイラは分身をワチャワチャと探索に行かせてる最中っす。冒険はオイラに任せるっすよ」




