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主人公、コミュニケーションに支障をきたす
幸い彼女は俺に気付いていない。
不幸中の幸いというやつだろう。
「あ、はい。
よろしく、僕は白絹映賀って言います」
動揺を隠しながらそう答えたが、初対面の相手だ。
別に変に思われることはないだろう。
……
会話が続かない、補正なんて持ってようと持っていまいとこの瞬間は誰でも気まずい。
「あ、そうだ!
実は今日朝とんでもないやつに会ったんですよ!」
……俺は今お見合いかなにかでもしているのだろうか?
つかそれ俺だし。
「なんか全身タイツの変なおっさんで、はぁはぁいいながら四つん這いで歩いてたんです!」
俺じゃなかった。
というか想像以上にヤバイやつだった。
絶対にお近づきにはなりたくない。
「あ……なんかごめんね」
俺が顔をひきつらしているのに気づいた米高さんは、饒舌に喋っていた口を閉じて謝ってきた。
「い、いえいえお気になさらず」
俺も俺とて緊張して返答に困ったものだから、担任が連絡事項を伝えている間、隣の席の彼女と俺の席は少し他よりも離れていた。