主人公、一本目のフラグを叩き折る
「初日から遅刻とかあり得ない!もう最悪!」
悲鳴にも似た独り言を大音量で垂れ流しながらこちらに向かってる少女の風貌はポニーテールであどけない顔立ちが特徴だった。
うん、直撃ルートだ。
彼女はこちらに気付いたが、勢い余っていて止まれそうにない。
その上俺と同じ高校の制服を着ているっぽいのでこれが主人公補正による「イベント」って奴なのは一目瞭然だ。
まぁここから恋愛に発展するってやつ?
そう、何か補正を持つ人間は人生で一度はイベントが起こるのだ。
その時一度きり世界の理から外れたようにドラマみたいな出来事が連発して起こったりというのもあり得る話。
このイベントが起きる回数は補正を持つ人間でも人によって差があり、世間はそれの具合をレベルによって表す。
今俺の腕にもはめられている、補正レベルチェッカーなるものでの確認が義務付けられているのだ。
俺か?
入学早々これだぞ、お察しだ。
それに補正は主人公補正以外にも種類が存在する。
メジャーなところでいけば悪役補正、ヒロイン補正、サブキャラ補正。
他にも一応あるにはあるのだが、絶対数が少ない為認知されていない。
悪役とかなんていう補正を得てしまった人間の人生はお察しの通り高確率でハードモード一直線。
主人公補正を持つ人だって地獄に落っこちる可能性だってあるのだ。
全くもって傍迷惑も甚だしい。
とまぁ今はそんなこと考えている場合じゃない。
こいつを早くなんとかしねえと…
そう思って威力の収まりそうにない暴走機関車少女を正面に見据える俺。
「どいてどいてー!」
はぁ、これもしミスったら俺の学校生活序盤で地獄だよなぁ…
そんなことを考えながらもう目の前まで来ていた彼女の肩をつかみ、
投げ飛ばした。
鈍い音を立てて倒れ込んだ彼女を一瞥して俺は一応謝っておく。
「いやぁ、悪いねえ…僕の主人公補正はちょっと特殊でさ…」