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8月18日 夢見が悪い

8月18日


 嫌な夢をみた。クラウンメイクした航空班(釘打ち機装備)に追われ、押し倒されて後頭部に釘を撃ち込まれる夢だ。鼻の奥に物が詰まったかのような感覚と、致命的な何かが後頭部から漏れ出る感じを鮮明に覚えている。


 重傷……という言葉がかわいく思えるほどの明らかな致命傷であり、後頭部に五寸はありそうな釘が何本も深々と刺さっていることがなぜかわかった。


 あまりにもたくさん刺さりすぎていたからか、傷口がパックリと割れて、灰色のそれがびちゃびちゃ、じゅるじゅると流れて服を湿らせている。B級ホラー映画でも見られないくらいに大袈裟に安っぽく、そして下品に地面が汚れていた。


 しかし意識だけは妙に鮮明で、次の瞬間に思ったことは『傷口を押さえなくては』という、その状況に相応しくもどこか的外れなものだった。立ち上がり、あー、うーなどと呻きながら、こびりついたそれらを体をゆすって落とす。


 夢の中の私は必死に手を後ろに持っていこうとしたが、そこで再び倒れた。魚が跳ねるように筋肉がびくびく痙攣するだけで、意思が反映されない。動かそうと思ったところと全く別の場所が、驚くほどに跳ね上がる。口からはヨダレがだらだらと垂れていた。


 あまりの激痛と、それによって引き起こった倦怠感と戦いつつ、せめて最後に一矢報いてやろうとはいつくばる。そして朦朧とした意識の中、近くにいた誰かの喉笛を食い破ろうとした……ところで目が覚めた。


 頭の後ろがすごく変な感じだ。きっと疲れているのだろう。


 研究室への到着はいつもと同じくらい。相変わらず暑く、微妙に天気も悪かった。分厚い雲が太陽の光をさえぎっていたが、同時に熱気を地表に押しとどめてもいる。快晴とどちらがマシかと言われたら、それはもう個人の好みの問題になるだろう。


 快晴による容赦ない日差しは確かにきついが、少なくともどんよりとした気分にはならないはずだ。曇天は気分が滅入るが、少なくとも日差しだけはいくらか和らいでいるはずだ。


 さて、メールにより例の係数の分布は問題ないことが分かったので、実際のσなどを求めていく。いくつかサンプルをピックアップしてσs-C曲線を引くも、なんかグラフの形が今まで見てきたものと全然違う。サンプル同士での形はあってたけど。


 どうやら対数目盛にしていなかったのが原因の様子。対数目盛にしたら今までのと同じ感じの形で出てきた。


 しかし、ここで衝撃の事実が。衣笠先生、『これ全然理解できてねえな』とかのたまった。グラフが根本的に間違っているらしい。


 で、『このdバーは何を意味しているかわかっている?』と聞かれたので、『意味は分からなくていいからとりあえず使っておけと言われました』と正直に答えたら、『教え方最悪じゃねーか!』と言われてしまった。そんなことこっちに言われても困る。


 結局、あのdバーはMATRABで難しい計算をして出したものらしい。その難しい計算が何によるものなのかは一切わからなかったけど。


 その後、『点は全部でいくつできる?』と聞かれる。バーの数である500か、材料定数の数である600かと思ったらまさかの600*500こ。先生、さも当たり前のように『じゃあ、あと600個の要素についても確認してみようか』とか言い出した。さすがに震えを隠せない。


 いやさ、一点出すだけなら別にいいよ? でもさ、500個以上のデータ(計算)が一個あたりに必要なのに、それを600もやるか? 傾向同じなんだからやる必要なくない? 『学会の先生たちはそういうところを突っ込んでくる』って言ってたけどさ、その先生たちどんだけ陰険なんだよ。


 ちなみに、高木さんは圧力分布を無視していたからこの工程はなく、是枝さんはここまで行き着かなかったとのこと。


 結局、普通に計算するのはあまりにも無謀なのでその場でoctaveで処理できるプログラムを教えてもらった。これにより、600*500通りの計算を全部行い、二列に数値を並べることに成功する。こいつをエクセルに貼り付け、散布図にすれば各要素ごとの線図が(半ば強引に)描けるっていう寸法。ただし、ファイルがものすごく重くなるけど。


 その後は【検閲済み】パラメータから正解値のσ、Cを出してその線図上のどこにプロットされるかってのを確認し、集中点にあるならその値を、そうでないならサンプルをいくつかとってその値で逆解析を進めるだけ。


 正確に言うと、サンプルの値を式にぶち込み、【検閲済み】パラメータを逆算して順解析するアレ。どこで力を指定するのかいまだによくわからん。終わってんなこれ。


 しかし、またまた問題が発生。正解値のプロットが線図から大幅にずれている。びっくりするほどずれている。もう笑うしかない。


 計算式や単位が間違っているのかと何度も確認するも、問題なかった。南郷さんにも見てもらったけど、間違いは見つからなかった。少なくとも、正解値そのものは間違っていないようだ。


 つーか、桁数とかを間違えていたとしてもあの線図上には乗らないんだよね。根本的に数値がおかしかったし。それに、シグマはどう見ても計算間違えようがないし。


 結局、問題の解決には至らず。先生に相談しても『どこか間違ってるから探せ』と無茶振り。それがわからないから苦労してるのに。


 もうどうしようもない。考えられるのはdバーくらいだけど、あそこは完璧にブラックボックスだから間違ってるか否かなんてわかりようがない。


 長くなったのでここまでにしておこう。進捗確認には十分すぎるはずだ。そういった理由でこの日記が使われないことを強く祈る。こんな思いをするのは一人で十分だ。

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