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7月13日 煉獄の再ゼミ

7月13日


 ありえないレベルでクソ熱い。みんな汗ダラダラ。まさかこの研究室に来るだけでこれだけカロリーを消費するとは終ぞ思いもせなんだわ。


 いろいろあって朝は母上に車で送ってもらったんだけど、運転中に母上が悲鳴を上げた。どうしたのかと首を横に向ければ、運転手側の窓ガラスに体長10 cm以上の大きなクモが引っ付いていた。外側で良かったと本当に思う。


 哀れなるクモは速度が上がった車の風圧によりいずこかへとふっとばされていった。運がよかったら新天地で新たな生活を送ることができるだろう。たぶん後続の車に轢かれたと思うけど。


 ゼミがあったので到着は0800くらい。ゼミ資料の最終推敲を行う。直交異方性弾性体が直行異方性弾性体になっていたので修正。しかし、のちに節点が接点になったままであることに気付く。バレなかったからどうでもいいけど。


 午前中は是枝さんの院生ゼミ。日曜から泊まっていたのに炎上確定だとアブナイ顔で笑っていた。


 実際のところそんなでもなかったように思える。良くも悪くもいつも通りで、1200ごろには終わっていた。特にこれといって面白いこともなかったけど、寝てもいないのにこもりんに『このへん(M0)はつまらなさそうに居眠りしてるで』って言われたのが腑に落ちない。


 午後は授業。材料力学特論は一応テスト前ラストってことになる。今回もひたすら板書をした。『なぁ、羽鳥?』のいつものフレーズがあったものの、パンドラもカエルの大合唱もなし。妙に機嫌がよかったけど、それだけ。


 授業は割と早めに終わったんだけど、いつものようによくわからん話を始めた。『ぶっちゃけなんで院に行くの?』とのこと。しかも、自分で聞いておきながら『やっぱ金とか肩書きとか、就職に有利だからだよなぁ。僕のときなんかは進んで勉強したくて……』と自分語りに入った。あの人、ナルシストなだけなんだと思う。


 偶然とは奇妙なもので、こっちの教室の外にもでかいクモがいた。尤も、朝見たやつよりかは一回りほど小さかったけど。


 複合材料の力学特論もいつも通り。書くことがないって逆に怖い。衣笠先生が髪を切っていたことくらいだろうか。

 

 そして本日のハイライトのゼミ。まさかの再ゼミという歴史的な一歩を我が【検閲済み】班は踏み出した。これも後に語り継がれていくのだろうか。


 今日の発表は井浦、福山、航空、【検閲済み】。井浦はなんだかんだで普通にこなす。だいたい三十分くらい。福山も炎上するかと思いきや井浦と同じ程度。なかなかいい流れ。


 航空班もそれなりに順調だった。が、こもりんがいきなり『世良さんの働きを10として、各々何点の働きか自己採点して発表してもらおうか』とか言い出す。ゼミをレクレーションか何かの場と勘違いしているのではあるまいか。


 肝心の結果だけど、佐伯が6、下西が3、東原が6……からの3、守島さんが3、浜崎も3(だった気がする)。なぜか是枝さんも答えさせられてたけど10とのことだった。


 『これおもろいな! 今度からやるようにするか!』ってあの人は笑ってたけど、衣笠先生はすっごい真顔だった。たぶん、あれを心の底から楽しんでいたのはこもりんだけだと思う。


 そしてとうとう【検閲済み】班の発表。接合面の『微小要素』である直交異方性弾性体要素の厚さは影響してこないのかだとか、モード変形の曲率が云々だとか(そもそも現実的に曲率が確認できるほど変形しているわけじゃない)、変形しているときの圧力分布はないのかとか(圧力分布を接合面剛性に置き換えて解析しているから振動を出したときには圧力がかかっていない)わけわからんことをたくさん言われるも、平穏に終わる。


 が、最後の最後、まさかの是枝さんから質問が来る。『この研究は何を目的とし、どうしていきたいのか』とのこと。あなたがそれを言っちゃあオシマイであると思わず言いそうになった。


 ゼミ終了後、是枝さんと『もうこの研究無理じゃね?』と笑いながら語り合う。あの質問で先生側にプレッシャーをかけたかったらしい。


 実際、もう先行きを感じないし、実用できるかと聞かれたら首をひねらざるを得ない。一年間みっちり(悪い意味で)しごかれてきただけに、是枝さんはそのへんを切実に心配しているそうだ。


 まだ半年もやっていない身だけれど、この段階でいかにこの研究がズタボロなのかが理解できる。冗談抜きに、何かしらの対策をした方がいいと思う。


 研究室へともどるとき、あまりにも夕日がきれいだったため思わず写真を撮ってしまった。フォトライブラリにぶち込んでおいたので気になったら確認しておくこと。


 そうそう、柳下が『鉄巨人イベントの忍者取ったよ♪』と自慢してきた。あいつ、最初は一番否定的だったくせに一番やりこんでいやがる。


 ちょっとざっくりとしているがこんなもんだろう。四つもゼミ発表があったのに1900頃には終わったのが僥倖。中間報告会……というか、これ以降の発表もこれくらい平和に終わればいいのに。

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