6月29日 暴君
6月29日
憂鬱な月曜日の幕開け。この一週間に潜むのは絶望か希望か願望か。まさにパンドラ(笑)である。
研究室への到着は0800過ぎ。ゼミがあるから早めにきた。特に準備することはないけれど、いろんな意味で心の準備と英気を養う必要がある。
あと、下駄もどきを持ってきたので履いてみた。和風な感じがグッド。いちいち裸足になるのがちょっと面倒だけど。
金曜日の日記を付けてからすこしだけスヤスヤタイムに。なんかよくわからんけどいつもよりしっかり休めた気がする。やっぱ朝のあの時間に寝るのって背徳的で奇妙な快感が凄まじい。研究室にソファかベッドがほしいものだ。
午前中は麻生さんのゼミ。渦電流を用いたなんかの試験についての論文だった。あいかわらずこもりんは絶好調。もう書くまでもない。いつも通りだったと言えばそれですべてが伝わるだろう。むしろ、それくらいしかあの状況を的確に表現する言葉が思いつかない。
終わったのはなんだかんだで1200くらい。炎上ってほどじゃないけどやっぱりいくらかダメだしされていた。
……思ったけど、これもいつも通りじゃね? 今までゼミでうまくいった人を見たことがないっていう。
それと、麻生さんが下駄に非常に興味を示していた。『興味あるんだけど、階段とか履き心地とかどうなの!?』と超笑顔で聞いてきたので、最高ですと答えておいた。この研究室に下駄ブームを引き起こしたいものだ。
お昼休憩中、衣笠先生が学部生室にやってきた。なんだかやたらと機嫌がいい。すごくニコニコで会話の端からも明るい感じが伝わってくる。なにかいいことでもあったのか……と考えたところで、数日前にプロポーズしたらしいことを思い出す。
しあわせいっぱいとはあのことか。私もステキなお嫁さんがほしい。誠実ですこしの茶目っ気があれば最高だ。女は愛嬌とはよく言ったものである。あ、外面よくても中身がアレなのは勘弁な!
そのまま流れで例の見積もりと寸法についても見てもらう。どうやらナットやボルトはS50Cである必要はないようだ。『機械的性質は大して変わらないから安物の軟鋼で十分』とのこと。とりあえずS45Cにしておこうと思う。あ、ボルトのバカ穴について下の工場に規格表みたいのがあるらしいから確認しておくこと。
さて、仲良く雑談していたところ、重大な事実が発覚。なんと、福山が盲腸で病院に運び込まれたらしい。一週間ほど手術などで入院するため、研究室にこれないそうだ。
盲腸ってことは命に関わるようなものではないはずだけど、友人の異常事態に動揺を隠せない。就活とか大丈夫なのだろうか。マジでお大事にしてください。あと、ゆっくり休んでください。
これだけならまだよかったんだけど、もっとガチでアカン事実も教えてくれた。恐ろしいことに、【検閲済み】のM1に鬱病患者が出たそうだ。一応まだ始まって三か月なのに、あまりにも早すぎる。
しかも、ツ●ッターの制限なしアカウントで呟いて拡散されているらしいとのこと。もうどうなってんだコレ。
あ、ある意味納得だけど、件の患者は【検閲済み】研究室の人だそうだ。この学校終わってんな。
ともあれ、衣笠先生の許可をもらうことだけはできたので、あとはラスボスを倒すだけ。一番大変な作業を銀さんに任せる。私より銀さんの方が戦闘力が高そうだしなんとかなると信じた。
午後は授業。材料力学特論はいつも通り。変に絡まれる。なんか『勉強がさっぱりできない? ん? さっぱり? 俺は風呂でさっぱりする方が好きだなぁ』とかよくわからんことをこもりんは唐突に話し出す。そしてお決まりの『なぁ、羽鳥?』というフレーズ。
羽鳥はもちろんシカトに近い苦笑い。『このオヤジギャグは通じんか』とこもりんは一人で笑っていた。もはやギャグですらない。
たぶん、読んでいるやつは私が何を言っているのかさっぱりわからんだろうけど、書いているこっちもさっぱりわからない。正直、なにがどうしてああなったのか──いや、あの状況そのものが根源的にわけのわからないものだったとしか言いようがない。ただありのままに書いているだけだというのにこのザマなのだ。もうどうしようもないことを理解してほしい。
その次は複合材料。こっちはぼちぼち。ただ、行列だから板書の量が非常に多くて嫌になる。おててが痛いしまっくろ。しかも、かなり面倒くさそうな宿題が出た。超悲しい。
夕方からゼミ。開始直前、大北くんの姿を見かけたのでゼミの順番を変わってもらえないか頼む。しかし、就活の関係や実験の計画的にちょっと難しいとのこと。そりゃあ、一週間もいきなり前倒しなんて無理に決まっている。
そしてゼミが始まる。今日は鈴井&八柳、羽鳥&水瀬、そして青松の三組。こもりんは相変わらずで、『そこのところどう思う?』、『そこのところどう思っとる?』、『そこのところどう捉えとる?』といつものフレーズのマシンガン。
ただ、意外なことにそこまで炎上はしなかった。羽鳥もせいぜい一時間ってところ。終わった後、あいつらは憑き物が落ちたように晴れやかな顔をしていた。
しかし、こもりんは相変わらず人の顔と名前を覚えていない。鈴井の発表の時、解答しろと言おうとして名前がわからず、『おう、そこの……そこのでっかいの』とか言ってやがった。鈴井も何を言われたのかわからず呆然としていた。人としてちょっとどうかと思う。
ゼミの後、大北くんがこもりんに絡まれる。なかなか珍しい事態。『次のゼミ変わってくれるだろ?』という問いに対し大北くんは誠実に答え続けるも、奴は有無を言わせず、大北くんに『やらせてください、だろ?』と突きつけた。さすがにかわいそうになった。
しかもこもりん、ゼミの後に『研究室対抗運動大会の景品でほしいものがあったら教えてください』って私が出したアンケートに対し、超満面な笑みで『教員の海外旅行券!』とか答えやがった。景品の意義を勘違いしている。そこんところどう思っているんだろうか。
なんだかんだでゼミが終わったのは1900くらいだろうか。研究室に戻った後少しだけ柳下とかとリ●ルノアをしたんだけど、あいつはすでに羽鳥よりも十レベル以上も上だった。しかもあの老婆の魔女を進化させ、若返らせて可愛くしていた。私も早く進化させたい。
関係ないけど、羽鳥の靴がぶっ壊れていた。底が抜けかけている。明日は靴を買ってから来るらしい。あと、柳下が珍しく仕事をしていた。明日の天気予報は雨である。これもうガチだな。
帰りの電車は水瀬と一緒だった。【検閲済み】線がドアの異常で止まる。本当についていない。あと、【検閲済み】だかで席が空いたんだけど、疲れ切った表情のおねーさんがダッシュで取ってしまった。ちょっと残念だけどここは器の大きさを見せて譲ることに。
で、ちょっとした後に見てみたら、そのおねーさんが口を開けて寝こけていた。(おそらく)嫁入り前の娘にあるまじき姿。きっと肉体的にも精神的にも疲れていたんだろう。
その様子を見て、水瀬も席を譲ってよかったって言ってた。さすがにあの状態の人に立たせるのは心苦しい。本当におつかれさまです。あの人、終点まで寝過ごしそうな感じだったけど、大丈夫だったんだろうか?
だいたいこんなもん。予想以上に長くなってしまった。次はすっきりとまとめておきたい。




