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6月5日 今明かされる衝撃の新事実

6月5日


 金曜日なのにまさかの月曜授業。最後の最後でのこの処遇に絶望を隠せない。


 研究室の到着はいつも通りだったように思える。月曜のスケジュールなのにゼミがないのがなかなか新鮮。


 真島さんが休みだったからか、久しぶりにカギを使って扉を開けることとなった。割と力を入れないと開かないのが不満といえば不満。ストレス発散もかねて、立てこもり犯の下へ突入する特殊部隊な気分で扉に体当たりしておいた。


 ゼミがないからか、それともただ単にモチベーションが下がってきているからか、結構遅い時間になってもまるで人の気配がない。リラックスしたい気分でもあったので銀さんのおススメであるカ●ジを読んでみた。


 カードを出すだけのゲームをあそこまで長く描けるって才能だと思う。ハラハラドキドキが半端ない。できることなら、途中からじゃなくて最初から読みたかった。あと、会長の爺さんが見かけによらずすごい人でビビった。


 午前中は例の学会の課題を進める。前回までにエリアの特定までは済ませていたので、そのままマニュアル通りに進めるも、圧力をかけたところで詰まる。データピックアップのためのボリュームの選択の指示がわけわかめ。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


VSEL,S,LOC,Z,0,0.01,,1

ASEL,S,LOC,Z,0.0105,0.0115,,0

VSLA,U,0

NSLV,S,1

NSEL,R,LOC,Z,0

ESLN,R,0


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ……と、原文のままにここに記す。こいつらが何を意味しているのかわからない。おそらくVSELのVがボリューム、SELがセレクトだと思うけど、そのあとのSがわからない。LOCがロケーション、そのあとのは座標だと思う。


 うんうんと悩んでいたところで颯爽と衣笠先生の登場。この暗号の意味を聞いたら、『アソシスのコマンド入力のやつだよ?』とのこと。アンシスにそんな機能があったことを初めて知る。どうなってんだこれ。


 コマンドの意味をいくらか教えてくれたけど内容を忘れた。今度調べておくこと。ぶっちゃけそのままコピペすればいいだけだからあんま気にしなくてもいい。


 んで、とりあえず1kNのだけ出しておいた。あとは繰り返し作業で圧力を変えていけば静解析は終了。そのあとでまた詰まるけど、その時はその時だ。


 そうそう、衣笠先生は件のテストプリントを回収していった。思いのほかみんなが真面目にやったものだから、きちんと採点をしてくれるらしい。予想外の事態にちょっと焦るも、まぁ大丈夫だろうとみんな気を緩める。


 が、十五分ほど後に怒ったような笑ったような顔で衣笠先生が答案用紙を突き付けてきた。結果はまさかの三十点台。信じられるか? これ、百点満点のテストなんだぜ?


 計算ミスもさることながら、解答指示をガン無視していたのが致命的。あたっているはずの問題も容赦なくバツを付けられていた。たぶん、厳しめに付けたんだろうと思う。材力が衣笠先生でなくてよかったと心の底からホッとした。


 午後は授業。銀さんが昼休みに来たので、【検閲済み】のひずみケージの貼り付けをお願いしておいた。


 材料力学特論はこもりん。真島さんがいないから絶対炎上すると柳下、羽鳥とともに戦々恐々とする。しかし、意外なことに比較的機嫌がよく、もしかしたら今までで一番平和な授業だったかもしれない。


 やっぱゼミがないのが大きいわけだ。内容も材力Ⅲの復習みたいなもので、思い出してさえしまえばそう難しいものでもなかった。


 複合は衣笠先生。スパルタで厳しいともっぱらのウワサ。しかも内容そのものがクソ面倒だというダブルコンボ。


 内容は有限要素法について。実際にどんなふうに演算処理をしているのかってのを基礎から学ぶ。初回だからかそこまで難しくはなかったものの、非常に面倒くさい課題を出された。連立八元一次方程式を解いて来いってだけ。やんなっちゃう。


 授業後、研究室に戻った瞬間に銀さんに頭を下げられた。ひずみケージを貼るのを失敗しちゃったらしい。正確に言えば、貼ることそのものはできたんだけど、リード線固定のためのはんだが突起を作ってしまい、板材の穴に通らなくなってしまったとのこと。


 マニュアルも練習もなしの一発勝負だったからしょうがない。むしろ、一発でできる人の方がすごいのだ。来週またがんばりましょうってことにした。これさえできてしまえばあとはデータを取るだけなので、ゼミまでいくらかの猶予がある。


 残りのひずみケージが八枚(四回分)しかないのが不安といえば不安。でも、私は銀さんを信じている。


 その後、一応挙動を調べてみようってことになり、無理やりボルトを通してひずみ測定器とつなげる。が、ひずみの値がおかしいことに。触れてもいないのにどんどん上昇し続ける。あと、測定器とのつなげ方が間違っている疑惑。なんで先輩はひずみケージ関連を教えてくれなかったのだろうか。


 どうしようもないので、杉野先輩に連絡を取ってもらうことにした。丸投げともいう。みんなやってるから別にいいよね。


 帰り際、火元チェックとかの表を見るも空白のままだった。柳下のやつ、三日どころか一日で職務放棄しやがった。あの時の感動を返してほしい。ようやくやる気になってくれたと思ったのに。


 柳下で思い出したけど、表面研も運動大会の参加が決定した。予想外の大ごとになってビビる。機力研だけハブられている感があるのもちょっと心が痛む。まぁ、義理だけは果たしたから後は向こうの責任だ。


 覚えている限りではこんなもん。いい加減、その日のうちに日記をつける癖を付けたいものだ。

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