6月1日 ゼミはいつだって燃え上がる
──解析なんて、ボタンを押して終わりなんだろ? 【ある学部生】
6月1日
学校へ向かう途中、【検閲済み】の駅付近でNに出会う。久しぶりの会話に心が弾んだ。
やっぱダチと戯れるのは楽しいものである。もしソロプレイで研究をすることになっていたら、確実に鬱になっていただろう。あいつも内定もらっていたし、あとは技術者倫理をとるだけ。ちゃんとばっちり決めてもらって、みんなで飲み会をしたいなぁ。
そうそう、【検閲済み】はやっぱりこないだ屋上でBBQをしていたらしい。準備も大半は院生がやってくれたらしく、非常に和やか、かつ楽しい雰囲気だったそうだ。変に気を使う必要もなく、至福のひと時だったとのこと。ウチもそのうち屋上を開放してもらいたい。
研究室に到着後、憔悴しきった是枝さんを発見。日曜なのに泊まったらしい。『もうダメだ……』と絶望の表情。なんか死んだ目で乾いた笑みさえ浮かべている。ゼミに自信がないらしい。そのせいでこないだの傘は返したのかどうか聞きそびれた。
金曜日の日記をつけた後にゼミ。場所が変わっていたせいで移動が面倒。反対の校舎の地下という、物理的に最も遠いところで発表となっていた。
なんだかんだでそこまで炎上はしていなかったと思う。途中で眠りかけたことがバレたことくらいだろうか。
でもこもりんも寝てたと思うし、南郷さんもスヤスヤしてた。あいかわらずこもりんは理不尽だ。
そうそう、この前のこともまたネチネチ言われた。『ぼちぼち覚えていく』って事実なのに。こもりんも私の状況を知っているはずなのに、なんであんな発言ができるのか理解できない。
先行履修があったため、午後も顔を合わせることに。相も変わらず絡まれるしネチネチ言われる。からみ方というか、私と羽鳥にばっかり妙な飛び火をしてくるから始末に負えない。どうしろってんだ。
あと、【【検閲済み】で巨大試験片が倒れてぺしゃんこ事件】を超笑顔で話してくれた。なんかアカンかんじの液体が倒れた試験片からにじみ出てきたとか、妙に生々しく語ってくれたけど、割とえぐい話を笑顔で語るとかちょっとどうかと思う。
その次は複合材料。来週から衣笠先生にチェンジするそうだ。あと、課題がやっぱりちょっと違ったらしく、ウチの研究室の人はみんなやりなおすことになった。地味に面倒。
そしてハイライトのゼミ。相変わらず前置きが長い。二十分くらいはかかっていたと思うし、やっぱり引き合いに出されてネチネチ言われた。いい加減しつこい。
最初の発表は【検閲済み】班。六人がぞろぞろと出てきてなかなかの圧迫感。かかった時間は七十分ほど。炎上ってほどではないけどかなりの長丁場。世良さんがいなかったら大炎上だっただろう。あと、是枝さんも前に立たされていた。いろいろと理不尽だと思う。
井浦のところはぼちぼち。三十分ちょい。あれくらいがいろんな意味で理想だと思う。
井浦への質問タイムにて、質問者がいなかったので座長である羽鳥が『ハニカム班お願いします』と言ったところ、こもりんが『お前もハニカムだから質問しろ』とまさかの飛び火。加えて、質問したらしたで『じゃあお前答えてみろ』と理不尽が突きつけられる。
わからないから質問したのに、なぜその質問に質問者が答えることになっているのだろうか。本気であの人の考えてることがわからねえよ。
しかもこもりん、未だに羽鳥と浜崎の区別がついていなく、どっちもユウキって呼んでいる。どうなっているのだろうか。
大北くんのゼミは最短タイムをたたき出した。恐ろしいことに全体で十五分もかかっていない。企業との共同だからだろうか。あと、タマキさんは化学はすごいけど材力は適当に物事を言っている節があるから注意しとけだって。そんなことをここで言わなくてもいいだろうに。
ゼミ終了後、懇親会のメンツが決まっていないことをちょっと怒られた。なんで出なきゃいけないのがイマイチよくわからん。結局、私と青松がでることに。仕事を減らしたいものだ。
帰り道、青松とともに羽鳥の名前問題について語り合う。その解決策として、みんなにあだ名を付けようかということになった。去年度はもっちぃさんとかどーすーさんとかトミーさんとかいたのに、今年はその手のあだ名が一つもないのはちょっと寂しい。
とりあえず、青松はロッキー、柳下はブラック柳下ということにした。
柳下といえば、ようやく火元等確認チェックの仕事をする気になってくれて涙が出そうになった。丸付けするだけの簡単なものとはいえ、今まで頑なにそれを行わず、『──のほうが真面目でそれっぽいから任せるね。それにほら、こっちは定時で帰らなきゃいけないし』って私に丸投げしていたあいつが……そんなあいつが自ら選んだこの最初の一歩が肝心なのだ。これからどんどん仕事をしてくれることを強く願う。
思い出せる限りではこんなものだろうか。もうみんなに日記をつけていることが知れ渡り、ロッキーが誤字の添削をしてくれた。一年後に読み返すのが楽しみだ。
この日記が別のことに使われないことを強く願う。平穏に卒業したいものである。
気付いている人もいるかもしれませんが、各月の最初の日記の前書きにエピグラフを追加しました。その月の名言的なアレです。製本した時はカッコよく映えてくれたのですが、ネットの横書きだとちょっと微妙なのが困る所です。




