表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/213

3月18日 卒業式リハーサル

3月18日


 実に一週間ぶり近い研究室。そしてこのわけの分からん時期に謎の書き込みがあった。どことなく溢れ出るサスペンス感(?)にドキドキを隠せない。


 研究室に到着したのはたしかお昼頃。すでに離婚届も提出し、ついでに学会も終わらせたのになぜ来たのかと問われれば、何のことはない、卒業式のリハーサルのためだったりする。


 成績が優秀だったことがこんなところで裏目に出るとは。他の人はみんなお休みなのにね。


 あと、机の上に美ら海水族館のお土産が置いてあった。どうやら世良さんが沖縄に旅行に行ったらしい。最後なのにわざわざ買ってきてくれるとか、感謝の念を隠せない。


 なお、行きの電車にてなんかすっごく髪のきれいなおねーさんを見かけた。肩よりちょっと長い感じで、その手のことには割と疎い私でさえ思わず二度見したレベル。全体的に上品なお嬢様って感じの雰囲気で、服装もかなり落ち着いたもの。何より座る姿が大変に美しい。まどろむお顔もステキ。いまやレッドリスト入りしてしまった大和撫子の影を見た。


 さて、今日はなかなかに暑く、洋服のチョイスをミスったかな……なんて思っていたところで柳下が到着。時間になるまで駄弁りつつ、パソコン内の全ての【検閲済み】班データをこないだおねだりして買ってもらったUSBに移した。


 ちなみに、明日は卒業式だというのに先生も普通に研究室にいた。仕事でもしていたのだろうか?


 で、時間になったところで体育館へ。どうやら各学科から数人ずつリハーサルに参加しているらしく、すっかり卒業式スタイルになった体育館には幾許かの人影が。ガチっぽいカメラマンちっくな人もいて、思っていたよりかは本格的な感じ。


 が、内容はクソだった。角帽の受け渡しと式次第の説明があったのはまぁいいんだけど、私も柳下も登壇するものとばかり思っていたのに、全然そんなことないっていうね。なんか別の学科の奴が登壇してそれでオシマイだったよ。


 言われた事と言えば、受賞した賞を読み上げるときに名前が呼ばれるから、その時に返事をして起立しろっていうのと、学位授与の際に『工学部~名、起立』って言われるから、そのとき起立しろっていうのと、その代表が壇上でお辞儀をしたら一緒にお辞儀をし、ぴろぴろの向きを変えたらこっちも合わせて一緒に変えろってくらい。


 マジでそれだけ。口頭で五秒で伝え終わるレベル。研究の関係で参加できない岡崎は事前講習が可能かどうか確認を取ったところ、『個人にその内容を伝えることはできません』と学生支援センターに言われたわけだけど、全然そんなことない。


 というか、岡崎は個人は個人でも、当事者である。遅いか早いかの違いでしかない……そもそもとして、そっちがわざわざ呼び出してるんだから、答えてくれたっていい、否、むしろ答えなくっちゃあならないのではないだろうか。


 だいたい、角帽のぴろぴろなんてそんなに気にする必要あるのだろうか? どうせつけてるの、私を含めた数人程度だというのに。そんなのをいちいち確認する人なんているわけないっていう。


 いや、マジでクソだったね。何のために呼び出したんだって叫びたくなったよ。あの程度なら常識の範囲内だし、直前に一言もらえれば……そうでなくとも周りの空気に合わせれば言われなくてもできる。


 しかもさ、通知には『アカデミックガウンの概要説明云々』って如何にも採寸をほのめかすかのようにあったくせに、肝心のアカデミックガウンも角帽も、ワンサイズしか用意されていないっていうクソっぷり。


 まさかマジックテープで留めるだけの角帽やぱっちんして留めるだけのガウンの着方がわからないとでも思っていたのだろうか? さすがにふざけているだろ?


 いやぁ、最後の最後まで本当にクソだ。ここまで私をコケにしたおバカさんたちは本当に久しぶりだよ。いくらなんでも連中は人を舐めすぎていると思う。


 なお、角帽についているぴろぴろはマジでクソダサかった。水色のふさふさの手触りだけは認めなくもないけど、ついているチャームが【20XX】って数字の奴と透明な丸っこい校章が描かれた安っぽいやつっていうね。


 ただ、ガウンは結構いいかんじ。すっごい魔法使いな気分。いい感じにはためくし、杖さえあれば本当に完璧だった。マジでどこぞの某魔法学校のローブって感じだったよ。


 むしろ、これでガウンまでクソだったらブチ切れていたともいう。


 読んでいるかもしれない各賞の来年度の受賞者へ。登壇するでもない限りはあのリハーサルなんて行く必要はない。事前にちょっと担当に聞けば事足りる。無駄な時間を過ごす義理も義務も理由もないのだ。残り少ない学生期間は有意義に使え。


 研究室に戻ったら青松がいた。で、なんか草津温泉のおみやげをくれた。花豆フレーバーのゴーフレット(たぶん)。あまぁいクリームちっくなのをうすべっかい和製ウエハース的なやつでサンドしたあれね。


 味はけっこうデリシャス。ただ、どのへんに花豆要素があったのかいまいちわからぬ。あ、柳下は笹フレーバーをチョイスしたんだけど、想像以上に笹だったとか。


 柳下の反応があまりにもアレだったため、さりげなく買ったのに一口も食べていない青松も食べ始めた。『思った以上に後味が笹。抹茶的なものを想像していたのにマジで笹』とのこと。


 その後は例の謝恩会プレゼントの包装について話をするも、なんだかんだでこのままでいいんじゃねってなった。で、せっかくなので明日の魔法使いごっこ用の杖を求めてさっさと帰ることに。


 だいぶグダグダしているけどこんなものにしておこう。なお、【検閲済み】のドンキを覗いてみたものの、ピンポイントで魔法使いの杖だけが見つからず。剣や銃なんかはあったんだけど。あと、いやにピンク色したパッケージのやすっぽいそっち系のコスプレセット(セーラー服とかナースとか)が無駄に豊富に取り揃えられていた。


 【検閲済み】のアヤシイ部族の商品を取り扱っているっぽい店にも無かったんだよね。それっぽい装飾が施された木の棒(短杖にしては長くて長杖にしては短い)はあったけど孫の手だったし。


 手芸店の編み棒や楽器店の指揮棒も見てみたけど、一番それっぽいのでリコーダーのお掃除棒っていうね。


 まったく、魔法の杖の一つも売っていないとか、昨今の商店は一体どうなっているのだろうか。本当に嘆かわしいことだ。


 あと首元の痣は未だに消える気配がない。もうこれ治らないんじゃねって思うようになった。グッバイ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ