表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/213

3月2日 データ焼きまくりんぐ

 ──日記、書かなきゃ! 【日記の書き手】

3月2日


 ふぇぇぇぇい! 三月なのに日記書いちゃうぜぇぇぇぇ! 春休み? でもそんなの関係ねぇ!


 落ち着こう。なんで三月なのに学校に来ねばならないのか。コレが運命だというのなら、私はその運命とやらをぶん殴ってやりたい。


 研究室に到着したのはいつもと同じくらい。先生の前での学会発表練習は0307の予定のため、今日は個人的なスライドの確認と離婚届の提出を目標とする。


 とりあえず、離婚届について残っている作業は参考文献の元データの回収だけ。そんなわけで、論文名を片っ端からデータベース検索していく。


 が、どのデータベースを使ってもどうしても見つからないのが結構あった。発行年も掲載雑誌名も何もかもがあっているというのに、なぜかピンポイントに載っていないんだよね。


 全く、本当にふざけていると思う。クソだクソだとは思っていたけど、ここまでクソだとは思っていなかったよ。クソみたい、じゃなくて、正真正銘本物のクソだ。


 ズルいというかなんというか、去年の先輩は参考文献の元データの提出はしていないため、そっちの方面からのアプローチもできず。もしそれがあったのなら、まんまそれをコピーするだけだったというのに。


 とりあえずいくつかは回収できたものの(中には論文名が間違っていたものも。【微細】と【微視】が逆になっていた)、英語論文だけがどうしても見つからない。


 で、ダメ元で【検閲済み】班の全データに対して検索をかけたところ、奇跡的にも見つけることができた。が、中身を見てブチ切れそうになった。


 参考文献には英語で書かれていたけど、中身はガッツリ日本語だった。いや、たぶん英語を和訳したものなんだろうけど、そりゃあデータベース検索で見つからないわけである。


 配属されたときから思っていたけど、【検閲済み】班って本当にデータ整理がクソだ。全部適当にごちゃってフォルダに突っ込んであるから後で確認しづらいったらない。この悪しき風習はここで途絶えてくれることを心から願う。


 ともあれ、これで何とか参考文献の電子データを回収することに成功する。あとは図書館から紙媒体の参考文献を探し出し、印刷してぱっちんすればオシマイ。


 ちょうど銀さんが来たので、善は急げとばかりに図書館へ。さほど苦労することなく目的の本を見つけることに成功する。どの部分の記述が必要なのか探すのにちょいと手間取ったものの、非常に見覚えのある式と図を発見することができたので、その辺をまとめて印刷しておいた。


 印刷するのにはお金がちょっと必要だったんだけど、銀さんが『ほとんどまとめてくれたし、これくらい出しますよ』って全部出してくれた。五十円ほどとはいえ、本当にありがとうござます。


 で、全ての資料をぱっちんし終えたので、最後にCDに電子データとして焼く作業に入る……のは良かったんだけど、CDの容量が700 MBなのに対し、我が【検閲済み】班の全データ量は950 MBっていうね。終わってんなこれ。


 しょうがないので解析データ(698 MB)とそれ以外とでわけることにする。それ以外のデータの方はすんなりできたんだけど、解析データのところでまたクソみたいなエラーが吐き出された。


 なんか、一部に対応していないファイルがあるとかないとか。CDそのものが壊れたとか何とか。いったいどうなっているのか。


 しょうがないので一度フォーマットしたところ、なぜかなにもいれていないのに空き容量が40 MBも減っている。数キロバイトならともかく、40 MBだぜ? 本当にイカれてやがる。


 どうやらフォーマットと削除は意味合いが違うらしいけど、正直そんなの知ったこっちゃない。一応データ量少なめの羽鳥のところで使えるかどうか試してみたけど、そもそも根本的な何かが壊れているらしく使えなかった。


 んで、もう何もかもどうでもよくなったので、新しいおニューの奴を使うことに。念のためほぼ必要ではない仮配生用の没データを削除して50 MBほどの空き容量を作り、ぶち込んでみた。


 幸運にも、一回でデータを書き込むことに成功する。最後の最後でもここまで手間を取らせるとか、本当に呪われている気がしてきた。


 その後はさっさと衣笠先生に提出する。すんげえあっさり受け取ってくれたことに存外ビビる。噂には聞いていたけど、マジでちらりとも確認しなかった。あと、後援会費(?)として二千円も提出してしまった。この時期は本当に意味の分からない出費が多くて困る。


 そして、『最後に小森先生に挨拶しておいて』と絶望の宣告が。面倒くさい予感しかしない。


 ともあれ、無視するわけにもいかないのでその足で伏魔殿への扉を叩く。なんかお仕事中だった。『そこで座って待っといてくれ』と言われる。座りたくなかった。


 で、やっぱり社会の話をされた。あと、さりげなく【検閲済み】班仮配生についてもダメだしされた。『キミはともかく、仮配発表会を見ていると、下はもうちょっと鍛えんと……』等と言われる。


 あれ、ほとんどすべて私が手掛けたんだけど。本人は知ってか知らずか私自身をディスリスペクトしていたわけだ。


 『研究じゃなくて作業をこなした感じがする』、『それ以上をやろうとする感じがしない』、『研究に興味を持っていない、面白さを感じていない』……ええ、まったくその通りです。心の奥底に刻んでおきますとも。


 あと、『銀くんは人間力があるが、キミはもうちょっと今から鍛えておかんとな』等とも言われた。人間力とは何かという具体的なエビデンスと共に、先生の人間力に対する重要性の認識を語ってほしいものだ。


 なにはともあれ、これで学部生としての仕事はすべて終了。長いようで短かったが、終わってみたら案外あっけないものである。


 その後もグダグダと過ごし、おやつの時間過ぎくらいから例のパソコンパーツの取り付けを行った。ほら、あの新しいパソコンケース買ったはいいけど行方不明で柳下のパソコンから拉致って来たアレね。


 ちょうど昨日柳下が電源剥き出し状態から自分のパソコンを組み上げたんだけど、その時にこっちのパソコンの箱から例のパーツが見つかったため、こっちのパソコンのが取り外されて向こうに戻されちゃったんだよね。


 こっちのパソコンからわざわざ例のパーツを取り出したんなら、見つけたパーツも取り付けておいてほしかったんだけど、柳下曰く、『全部組み終わった後にパーツを見つけた。最初から見つけたら取っていなかったよ』とのこと。


 でもさ、これってさ、見つかってなかったら私のパソコン剥き出しのまんまだったってことだよね? あいつやっぱり超絶ブラックじゃね?


 そうそう、このパソコンの作業は青松がかなり手伝ってくれた。めっちゃすごかった。さすがは青松である。パソコン関係はもう全部青松に頼っちゃっていいかなって思っている自分がいるレベル。


 ただ、青松はパソコン関係に強いのはいいんだけど、最近本当に怒りっぽいというか、攻撃的なんだよね。こう、ちょっとからかっただけで『むきーッ!』って怒るんだよ、あいつ。


 春先のころの穏やかで理性的な青松は一体どこに行ってしまったのか。それとも、これが青松の素だというのだろうか。いずれにせよ、変わり果ててしまった友の現状に悲しみを隠せない。


 中身は薄いがこんなもんだろう。三月の日記が何日分綴られるのかわからないけど、製本した時もきちんと三月のセクションを作っておこうと思う。


 最後になるけど、公聴会打ち上げの写真がちょっと増えていた。たぶん、世良さんか八柳かその辺が入れてくれたのだろう。


 あと、一月前半の日記の最終更新日がちょっと新しくなっていた。私が行っていない日だったので、誰かが読んでいたことは確実なんだけど、USBに保存したデータを参照して調べてみたところ、特に変更点は確認されなかった。なんだったんだろうね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ