2月18日 暇
2月18日
公聴会の前日。だというのに学部生よりも仮配生の方が多い。いったいどうなってんだろうか。
研究室に到着したのはやっぱりいつもと同じくらい。朝なんて特にそれが顕著で、しんと静まり返った研究室がいっそ不気味ですらある。とりあえずブラインドを上げて日差しを取り込み、窓を全開にして朝の空気で満たしておいた。
さて、これだけならいつも通りだけど、今日はちょっと違った。なんと、誰かが研究室をめっちゃきれいにしてくれていたのだ。
それも、ただ床の掃除をしたってだけじゃあない。机周りのプリント類が全部ゴミ箱にぶち込まれていて、まるでそこで研究をしていたことが嘘かのようにきれいになっている。無駄なものなど何一つなく、実にスッキリとした感じだった。
ちなみに、私のノート類は上の本棚におかれていた。ちゃんといるものとそうでないものを区別してくれているあたり、なかなかの熟練度と言えよう。
まず間違いなく世良さんだろうと思ったら、世良さんと八柳だったらしい。昨日の帰りに掃除してくれたそうな。本当にありがとうございます。
ただ、ちょっと気になることが一つだけ。こないだ作った折り紙のエクセレントでビューティフルな正多面体(くす玉)が見当たらない。色合いも非常に美しく、あふれ出る和の心と儚くもどこか華やかな雰囲気が素晴らしい逸品だったのに。まぁ、また作るから別にいいけど。
さて、実は今日はあまりやることがなかったりする。卒論の方はできるところは昨日のうちに済ませてあったし、発表練習など今更である。ただ何となく来たけど、ぶっちゃけ暇すぎて大変だった。
正確には卒論を書き上げなきゃいけないんだけど、そっちは銀さんの仕事なのだ。私には見ていることしかできない。
そうそう、せっかくなのでお家から持ってきたボルトのチョコレートを食べてみた。見た目がまさに錆びついたボルト。味もちょっぴりビターな感じ。そして歯が砕けそうになるほど固い。
少しずつ食べたけど、今から思えばよくぞまああれだけの質量を食べ切れたものだと思う。握りこぶし一個分くらいはあったし、中空円筒ボルトじゃなくてM20以上はあるけっこうしっかりしたやつだった。
時系列的にどこに書き込むべきかわからないけど、午後のある時間に山岸が非常にそわそわしていた。仮配生の発表があっただけど、例によって例のごとく全然予定通りに進んでいなかったんだよね。
で、ようやく呼ばれたと思ったら『あと三十分待機して』と言われる始末。何のためのタイムスケジュールなのか。
たしかおやつの時間頃、いつものメンツで麻雀をした。羽鳥から誘われたんだけど、誘った当人がかなり序盤に飛んで終局となった。あいつは振り込み師としての才能があると思う。
なんだかんだで午後の時間に卒論の銀さんパートが完成した。ちょこちょこと通し番号の整理をしていたら四十五頁程度で収まることが判明。昨日確認した時は五十頁あったのに。まあ、無駄なところを省いたのだから当然か。
あとは体裁やその他もろもろを整えて提出するだけである。仮配のことなんてもう割とどうでもいい。自由って素晴らしいね。
帰りの【検閲済み】駅にて、『どこにいこうかなあ!? ねえ、どこにいこうかなあ!? どこにいこうかなあ!?』とひたすら明るく叫んでいるおばさんを発見。
びっくりした。聞いたことのある声。まず間違いなく瀬田温泉の亡霊だ。
この人、以前ユーリさんと共に遭遇したことのあるおばさんで、最初の会合の時は『でも瀬田温泉に行けるよ! でも瀬田温泉に行けるよ! でも代わりに瀬田温泉に行けるよ!』ってずっと叫んでいたんだよね。
なお、瀬田温泉は数年前に潰れており、今現在は行くことが出来ない。だから、『きっとあまりにも瀬田温泉が好き過ぎて、怨霊と化してしまったんだ』ってユーリさんと共に結論づけたという過去がある。それゆえ私たちはあの人を瀬田温泉の亡霊と呼んでいるわけだ。
ちなみに、二回目の会合の時は『瀬田温泉に行こうよ! みんなで瀬田温泉に行こうよ! ……でも代わりに瀬田温泉に行けるよ! 今日は森にも行けるよ!』って叫んでいた。どんどんと野生化している気がしなくもない。
三回目との会合となる今回は目的地を決めかねていたようだけど、おそらく最終的には瀬田温泉に帰着するのだろう。いや、あるいは森を超えて山か海にでも行くのかもしれない。
これくらいにしておこう。書くことが少なすぎて内容がグダグダしている気がする。世良さんにも『書くことないなら短めで終わればいいじゃん! 「長くなり過ぎた」ってよく書いてあるし!』って言われてしまった。
言ってるそばから無駄なことを書いてしまった。まあ、所詮個人の日記だしどうでもいいだろう。
かけてもいいが、今回はめっちゃつまらない内容だ。翌日の内容に期待してほしい。まあ、書いているのは公聴会終わりの空き時間なんだけどね。