2月16日 修士公聴会(日記がバレた)
2月16日
なんだか微妙に疲れと眠気が取れない。概ねいつも通りと言われるとその通りではあるんだけれど。
研究室に到着したのはいつもよりちょっと早め。今日は南郷さんの公聴会があるから、たしか0920ごろの到着だったと思う。どうせ人っ子一人いないと思いきや、南郷さんはすでにスーツをビシッと決めてパソコンの前でなんかいろいろやっていた。
さて、公聴会が始まるのは1100ごろなので、この空いた時間に昨日の逆解析の問題について検討してみることにした。とりあえずαの特定から作業をやり直してみたところ、なんか普通にいい感じの値が出ることが発覚。
というか、まさかあの短時間で逆解析一個終わらせるとか、私ってばちょうすごいんじゃね?
どうやら、αマテリアルファイルの作成まではきちんとやったものの、それをkaisekiファイルに書き込んだ際、保存をせずにoctaveでkaisekiを実行してしまったため、前のデータがそのまま吐き出されてしまったらしい。その証拠に、ミスったデータとほぼ合致しているデータがあった。
なんのことはない。解析云々じゃなくて、ただのうっかりミスだ。
しかし、ちょっとだけ問題が。5 kNのところで実験値と解析値がほぼ一致したのはいいんだけど、低締付力での【検閲済み】の差が以前よりも大きくなってしまったため、RMSの差も大きくなってしまい、結論が食い違うことになってしまった。
そこだけ実験値の変化の傾向が大きかったから、単純に実験がちょっとうまくいかなくて理論よりずれているってだけなんだけど、以前のデータがたまたまそれとかなり近い値になっていたから、余計にややこしいことになってるんだよね。
とりあえず、仮配には『卒研生のデータはこうだけど、こちらは実験ちょっとミスったらしく傾向が変わりました。でも、きちんと取れていたら傾向は一致します』とでも言わせようと思う。逆解析までやったし、これくらいは向こうに任せてしまってもいいだろう。
さて、そんなこんなをしているうちに南郷さんの公聴会が始まる……と思ったんだけど、定刻通りに教室に行ったのに前の所が長引きまくっていて発表時間がずれこんでしまった。いきなりこの出だしとか、不安しか感じない。
肝心の公聴会だけど、監査は亀岩先生で、意外なことに特にトラブルとかはなかった。私はタイムキーパーを担当したけど、発表時間も十分十秒となかなかにグッドなタイム。先生の質問も(たぶん)そんなに複雑なものでもなかったように思える。
そうそう、『ベルの音、今回すごく聞き取りやすかった』って褒めてもらえた。誰に褒められたのかは覚えていない。
こういっちゃなんだけど、始まりがすごくずれ込んでいた以外は特に印象に残るようなこともなかった。至極平和で穏やかな公聴会だったという証拠だろう。
南郷さんへ。見ているとは思わないけど、長い間おつかれさまでした。
そうそう、お昼の時間、岡崎から連絡が。以前借りたゲームを返したいとのことで、さっそく【検閲済み】研の前に受け取りに行く。しょうがないとはいえ、最後までやりきることは叶わなかったらしく、『もう時間ないし、借りたまま卒業するわけにもいかないから』って言ってた。
どのみち、ゴッド●ーターの無印は鬼畜使用の玄人向けなのだ。単純にストーリーだけを追うなら、バーストをやれば十分だし、あっちの方がゲームとしての完成度ははるかに上だ。わざわざ無印をやる必要はない。
あれを渡したのは、あの時代を知ってほしかったからってだけである。個人的な意見だけど、無印をプレイしないでGEをヌルゲー扱いする奴はただのにわかだ。無印のあの殺伐とした感じと、あれを生き抜いた兵どもだけがもつ空気というものは、とても後の連中が体験できるものではない。
午後は大海先生の前での発表練習を行う。『ちょっと見づらいから文字を太くして』くらいしか言われなかった。さすがは大海先生である。質問もすごくわかりやすかった。他の練習でもこうだといいんだけど。
あと、なんかやたらと先生の部屋は暑かった。なんであんなにも暑かったのかよくわからない。とりあえず、それくらいしか印象に残らなかったってのだけは伝わってほしい。
夕方ごろ、いつも通りに日記をつけていたら衣笠先生がやってきた。『よくこんなに続けられるね』なんて他愛もない会話をしていたら、稲垣が『それそこに製本されてますよ』と、本の存在をさらっとバラしやがった。
さすがにあせった。『えっうそコレそうなの!?』と、先生の食いつき具合も凄まじい。『読ませて! 俺が出てるところだけでいいから!』と、先生は本をがっしりキープして読む姿勢もばっちり。
電子データはともかく、実物がバレるとは。なぜ稲垣もあのタイミングであんなことを言ったのか。たぶん、パソコンの日記を知っていたから実物の日記も知っているんだろうと思ったんだけど、ただメモ帳に書いているテキストデータと、実際に本になっているそれとでは、受ける印象もだいぶ変わってくるというのに。
だって、実物の本だ。そりゃあ、興味も示すに決まっている。
んで、『見せたくないところは読まないから』という約束のもと、大丈夫そうなところだけを見せる。八月はほぼ解析と学会のグチだったので、最初から最後まで全部読まれてしまった。
先生はケラケラ笑いながら『なかなか参考になります。反省します』って言ってたけど、正直気が気じゃなかった。たまに気に入ったところを読み上げたりするし、いつアレな記述が見つかるのかと、心の中では冷や汗ダラダラだった。
でもまあ、思った以上に楽しんでもらえたのは僥倖だろう。なかなか懐かしかったらしく、思い出話でちょっと盛り上がる。『文才あるね!』と褒めてもらえもした。
あと、先生は『解析なんてボタンを押して終わりなんだろ……ってこれ誰が言ったの?』って水瀬のフレーズをたいそう気に入っていた。解析の先生にあの暴言がバレた事実を、水瀬はいまだに知らないでいる。
ここで、さらに事態は予想外の動きを見せる。先生が日記を読んでいるとき、世良さんや播磨さんも合流していたんだけど(播磨さんもわざわざ院生室の日記を持ち出して先生の隣で読んでいた)、なんと帰りの挨拶をしに来た大海先生にまで日記の存在が露見してしまったのだ。
『私のことも書いてあるの? あんまり書かなくていいよォ!』などと、大海先生も概ね好意的。『麻雀卓を粗大ゴミに出したことを書いています』って言ったら、『事実ではあるね』って笑っていた。大海先生はあまりこちらとは関わりがないし、あんまり日記に出てきてないんだよね。
だいたいこんなもんだろう。本当は1730に帰る予定だったのに、先生が日記を読んでいたため1930ごろまで残ることになってしまった。後にも先にも、あれだけ心臓が止まりそうになることなどないだろう。
文章じゃうまくあの場面を再現できていないけど、ともかく奇妙な空気が流れていたことだけは伝わってほしい。自分の日記を目の前で先生に読み上げられるという体験なぞ、早々できるものではない。
最後に。
全部終わったし、明日は休んでしまってもいいか……などと話していたら、いきなり衣笠先生から『公聴会の役割分担をする為、あしたは1000には研究室で待機しておいたください。急な連絡で申し訳ありません』とメールが来た。
休もうと思った矢先にこれである。運命はどうしてこうも私の休みを邪魔してくるのか。まったく、本当に泣けてくる。