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2月10日 戦慄のバナナばーちゃん(キッズルームのおともだち)

2月10日


 あ…ありのまま昨日の夕方起こった事を話すぜ!


『私は踏み切りの前で電車を待っていたと思ったらいつのまにか通りすがりのおばーちゃんにバナナを渡されていた』


 な…何を言っているのかわからねーと思うが私も何をされたのかわからなかった…。


 頭がどうにかなりそうだった…おせっかいやきだとか孫を思い出しただとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ 。


 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。



挿絵(By みてみん)



 昨日の帰り道、青松、水瀬、井浦と共に【検閲済み】の踏切で電車の通過待ちをしていたところ、いきなり推定八十歳代の腰の曲がりかけた白髪のおばーちゃんが『ねえ、これあげるわ!』とバナナを押し付けてきた。


 次の瞬間、青松は他人のふりを決め込み、井浦は三歩ほど遠ざかる。位置的にどうしようもなかった私と水瀬がロックオンされ、『ほら、遠慮なんてしないで!』とニコニコ笑顔の脅威にさらされた。


 このバナナ、近くの果物屋で買ったのか、太くて長い実に立派なバナナだった。ただし、房じゃなくてなぜか一本だけ。四人に対してなぜ一本だけ渡してきたのか。


 当然、そんな怪しいものをはいそうですかと受け取るわけにもいかない。私も水瀬も、なんだかんだで適当にお茶を濁そうとし、時には『お前バナナ好きだろ?』と互いに押し付け合う。


 が、おばーちゃんは私たちを無視して『ど・ち・ら・に・し・よ・う……かなっ♪』と、ノリノリで私にバナナを握らせてきた。逃げられない。ちょう怖い。


 わけもわからぬままそれを握らせ、おばーちゃんは姿を消す。残ったのは半笑いのままバナナを持つ私と、肩を震えさせて笑う青松らだけ。


 捨てるわけにもいかず、しょうがないのでそのまま電車に乗ったんだけど、すれ違う人みんながヤバいやつを見る目でこちらを見てきた。二度見してきたり、振り返って見てきたやつさえいる。


 視線をあれほど鮮明に感じたのは久しぶりだ。まあ、珍しいって事実は否めないんだけど、せめて気づかれないように見てほしい。


 羽鳥に現状を報告したところ、『──さんおもしろいね』と返信が返ってくる。面白いのは外野だけだと言いたくなった。


 結局、バナナはお家に帰ってから食べることにした。なお、最寄駅ひとつ前の駅までバナナをずっと片手に持っていたことをここに記しておく。カバンにしまうという発想がすっかり抜け落ちていたのだ。


 怪しさ満点のバナナだけど、意外にも味は普通にデリシャスだった。なかなかの食べ応え。最初は『ヘンなものでも入ってるんじゃないの?』と訝しんでいた母上も、『きっとさみしい思いをしていたおばあさんだったんだよ。アンタを見て孫を思い出したんだよ』ってその認識を改めていた。


 なお、青松曰く『セブンのバイトの時にたまに見る人。取り立てて害はないけどレジからなかなか離れない』とのこと。ただのかまってちゃんな老人なのだろうか?


 研究室に到着したのは0930ごろ。今日は特にやることもなく、学校には概要集の印刷をしに来ただけ。それゆえだいぶ遅めだったんだけど、この時間でもほとんど人がいないっていうね。再発表の連中くらいしかいなかったよ。


 で、人がいないうちに印刷を行う。いい感じに進んでいたんだけど、途中で羽鳥がUSBケーブルを抜いてしまったためやり直すことに。『お、俺じゃなくて下に置いておく方がいけないんだし!』って言っていた。まったく、あいつは本当にやんちゃである。


 なんだかんだで印刷は終了。ちょうどそれくらいのころあいに井浦が発表練習から戻ってきた(たぶん)。見るからにイライラしていて、マジでブチ切れ五秒前。こめかみに青筋を幻視する。


 やはりというか、相当腹の立つことを言われたらしい。理不尽というか、まあつまりはいつも通りのことだ。先生も途中で井浦の隠しきれぬ殺意のオーラに気付き、フォローに回ったのだとか。


 実際、井浦が戻ってしばらくした後、なんか先生がやってきて雑談チックなことをし始めた。きっとあれがアフターケアとかメンタルケアのつもりだったんだろう。


 さて、そんな感じで午前中をすごし、あとはひたすらグダグダする。やっぱりいつも通り、羽鳥、水瀬、柳下と麻雀を行った。ブラック柳下は『この二人がいるとすぐ振り込むからつまらないなぁ』などと煽ってくる始末。吠え面かかせてやろうと思った。


 で、さっそく対局開始。私と羽鳥の猛攻が柳下を襲う。哀れ柳下はリーチをかけることさえできなくなるほど追いつめられた。あと一回誰かがツモあがりすれば間違いなく飛ぶ。だってあと三百点しかない。


 デカい口を叩いていた割にこのザマである。『柳下くんは口ほどにもないですなぁ』などと、羽鳥と共に煽りまくった。


 が、なりふり構わなくなった柳下はクソみたいな手で上がり、なんとか首の皮一枚で乗り切ることに成功する。こっちが圧倒的に勝っていたとはいえ、飛ばせなかったのは非常に口惜しい。


 そうそう、例の旅行の話も少しだけした。よくわからんけど車選びに難航しているらしい。運転しなくていいならもうなんでもいいや。


 だいたいこんなもんだろう。グダグダしすぎた故に書くことがほとんどない。あ、山岸が『インナーマッスル、あと俺は家では手を固定しているって書いておいて』って言ってきたので書いておくことにする。意味はさっぱりわからない。


 バナナと麻雀の話しかしていないが、本当にそれくらいしか書くことがない。理系の卒論の時期の研究室とは思えないほどの和やかさだ。誰かがやってくるたびに『キッズルームに新しいお友達がきたよ!』って誰かが言っていたのをなんとなく覚えている。麻雀するキッズとかなんかいやだ。


 いけない、文章までグダグダしてきた。そろそろ筆をおこう。筆じゃなくてタイピングだけど。

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