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1月12日 ゴーストライター

1月12日


 日記を書こうと開いてみたら、来ていないはずの十一日の日記ががっつり書かれていた。何を言っているのかわからないだろうが、私にもわからない。


 さて、詳しく物事を書こうと思う。いつも通りの時間に研究室に到着し、日記を書こうといつものテキストファイルを開いたところ、十一日の日記が書き込まれているのを発見。それも、前回の日記とは違い、文章量もそれなりにある、私の日記のクオリティと非常に似せてあるものだ。


 言い回しや文体のクセなんかもそっくりに真似られていて、図らずも前回書いた『ゴーストライターが生まれそう』という言葉が現実のものとなってしまった。句読点の位置やスペースの挿入の仕方に粗があるものの、何も知らない人が見れば同一人物が書いたものだと思うことだろう。


 いつぞや水瀬が書いた日記とはクオリティが雲泥の差、月とすっぽんである。もし芥川賞受賞作家と同じ文体で……とここに書けば、もしかしてそれも再現してくれるのだろうか?


 なお、この謎の書き手の正体を世良さんは知っている模様。てっきり青松かと思ったけど、アリバイ的にそれはない。大穴で世良さん自身が書き込んだかとも思ったけど、だとしたら自分で自分のことを書いたことになる。それはちょっと考えにくい。


 『帰りに誰が書いたか教えてあげる』って言われたけど、20XX01141541現在、未だに教えてもらっていない。すっかり忘れ去ってしまっているようだ。


 どうでもいいけど、この謎の書き手の私に対するイメージに悲しみを隠せない。きれいなおねーさんのことを書いとけば似せられると思い込んでいるのだろう。書いてない日の方が多いんだけど。


 研究室に到着後は先週言われた逆解析を進めていく。朝が非常に寒かったため、他のみんなが来るのは遅め。電子レンジの上がなぜかヘルメット置き場と化しているけどあまり気にしない。


 で、逆解析を進めていくうちに衝撃の事実が発覚。どうも理論値と計算値が十倍きっかりずれると思っていたら、そもそも十倍考慮してやらないといけなかったっぽい。


 実際、それを考慮して逆解析を行ったら解析値と実験値が非常によく一致した。今までなんで合わなかったのか不思議だったけど、なんのことはない、こちらが考慮し忘れていただけなのだ。


 あくまで推測だけど、あのプログラムは中で衣笠先生のやりやすいように計算結果を吐き出しているのだろう。だから途中で単位計算の所も簡略化されていて、こちらの想定する結果と違ってきたわけだ。


 そんなわけで、今までの結果を全部やり直すことに。相変わらず理論値と実験値はそれなりに離れていたけど、逆解析値はどれもすんげえいい感じの結果になった。


 いいか、十倍だ。十倍を忘れるな。


 お昼頃、学部生室に集まっていた柳下や桐野などのメンツがマクドナルドに昼餉を取りに行った。連中は結構余裕があるらしく、概要集の訂正も軽微なものらしい。うらやましい限りである。


 そうそう、守島さんと浜崎がおふろセットを借りていった。もう何度目になるのかわからない。おふろセット貸屋さんを営めるんじゃあないかとうぬぼれる次第。今度ちょっとお高めのシャンプーでも用意してみようか。


 午後も同様に逆解析を進めていく。途中、世良さんが実験の待機時間で非常に暇そうにしていたため、日記の編纂をやってもらった。軽い気持ちで頼んだけどまさか本当にやってもらえるとは思ってもいなかった。


 『前々からあの誤字を直したいと思っていた』とのことで、九月後半の日記を途中まで処理してもらう。できれば二月中に後半の日記を製本したいけど、いずれコツコツまとめるしかないだろう。


 夕方ごろ、暇そうにしていたマクドナルドのメンツがぐらぐらゲーム(なぜか研究室にあった子供用の玩具。対象年齢6歳以上。)で盛り上がっていた。本当に暇なんだと実感する。なんであいつらあんなにすんなり衣笠先生を突破できたのか、いまだに理解できない……と思ったけど院生が上にいるからか。


 さて、すべての逆解析を終えた後は院生室の柳下のパソコンでクソ重い【検閲済み】曲線のグラフの処理に入る。一つ開くだけでもいっぱいいっぱいのファイルを四つも開く関係上、あっちのパソコンでやらざるを得なかったからだ。


 とりあえず、データの最初の方の無駄に続く0を消す。その後、後ろのデータを十万ほど消す。それでなお10 MBもあるから驚きだ。そして複数開くとエクセルが落ちる。もう泣きそう。


 しょうがないので、偶数行のデータを削除することでファイルの軽量化を図ることにした。扱うのは分布だし、一つ一つのデータそのものに大きな意味があるわけじゃない。形はそのままに、密度を薄くするだけのこと。実に画期的なアイデアだと自画自賛した。


 で、マクロを組む。ネットで調べながらいくつかアプローチしたものの、最終的には二行ほどのコマンドに落とし込むことに成功。【偶数行をクリア】→【空白行を削除して詰める】の流れで最初はやっていたんだけど、そのまま直接【偶数行を削除して詰める】ってコマンドがあったのは僥倖だった。


 さっそくテストし、効果があることを確認してから本命のファイルに実行。十三万行なのに途中で落ちた。ブチ切れそうになった。


 ありえなくない? ファイルサイズを軽くするためのマクロなのに、ファイルそのものがそもそも重すぎて途中で強制終了っていうね。ホント、どこまで人をバカにすれば気が済むのだろうか?


 つーか、エクセルのくせにファイルサイズがMBって時点でふざけている。いい加減平静を保つのも難しくなってきた。


 結局、問題は解決しないまま。何もかも明日にしようと心に決めた。こういうのは一度リフレッシュして再トライするに限る。


 だいたいこんなもんだろう。最近忙しいからか、日記を書く時間がなくて困る。ちょくちょく時間を見つけてつけていくようにしたい。

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