12月22日 【検閲済み】大学生面白体験談レポート
12月22日
なんでこんなにも眠いのだろう。家だと床についても寝付けないうえ、眠りも浅くてすぐ起きるのに、研究室だとビックリするくらいスヤスヤと眠ることが出来るんだよね。よくない兆候だ。
そんなわけで、一限の時間はエレガントにミュージックを楽しみつつ夢の世界への散策に耽る。やっぱ研究室だとなぜか夢見も悪くなく、安心して眠ることが出来た。家の中で寝るときはたいてい怖い夢を見ている気がするのに。
皮肉なことに、研究室だとリアルが悪夢に近いっていうね。逆に家だとリアルが天国みたいなもんだけど。フロイト先生ならこれをどう分析するのだろうか。今度心理学の本で調べておくのもいいかもしれない。
二限は城木先生の強度工学特論。例によって例のごとく、すでにあらかたの履修内容を終わらせているため、雑談タイムに入った。
何でも以前、課題として『何でもいいから人生で面白かったことをレポートにまとめて来い』といったものを出したことがあるらしく、その件について盛り上がる。
真面目に全てを書くと文章量が凄まじいことになりそうなので、今回は趣向を変え、以下に箇条書きテイストであらましを記録することにする。なお、中にはそれとは別件で出てきたこともあるけど深く気にしてはいけない。
▲▽▲▽▲▽▲▽
【暗中模索】
ある学校に朝から居眠りをしている男子がいた。一限の英語の先生は居眠り許容派だったらしく、授業中もスヤスヤと寝かせたままにしていたらしい。が、二限の国語の先生は厳しい先生で、寝ている彼を起して『おい、寝ているってことは授業の内容、全部理解しているってことだよな? ……【暗中模索】の意味を答えてみろ』と言ったそうだ。
あわてて飛び起きた寝ぼけ眼の彼は『あなたはモサクですか?』と答えたそうな。そう、未だに英語の時間だと思い込んで【暗中模索】をAren't you Mosaku? と聞き間違えたらしい。
……『モサク、あなたは?』じゃね?
【ダストシュートおでん事件】
十一号館にはダストシュートがある。文化祭にておでんを販売していた【検閲済み】研(四階の研究室)は、不幸なことに在庫を捌き切ることが出来ず、大量のおでんを残してしまった。みんなで食べるもさすがに限度があり、泣く泣く廃棄することになった……はいいんだけど、何を思ったかゴミ袋に汁たっぷりのそれらを入れ、そのままダストシュートで自由落下させたそうだ。
当然、下は凄惨な状況になった。そりゃ、四階からおでんの袋を落としたならそうなるに決まっている。つーか、汁物を捨てるってありえなくない?
カップ麺の残り汁をトイレの便器に捨てるウチを見習ってほしい。ちなみに、このおでん事件は歴代の【検閲済み】研にて口伝されているそうな。
【たぷたぷ尿検査】
ある男子学生たちが健康診断で尿検査をすることになった。最近の尿検査は進んだもので、リトマス試験紙みたいなやつで手軽にすることが出来たりする。
ところが、簡単に済ませられるはずなのに、ほぼ同じタイミングでトイレに入った仲間がなかなか戻ってこない。試験紙にひっかけるだけにしては妙に時間がかかっている。
ようやく戻ってきたと思ったら、『尿検査のアレめっちゃ大変だったよな!?』と語りだしてきたらしい。そんなバカなとその姿を見た友人たちは目をかっぴらいて驚く。
そいつの手には、たぷたぷになって今にも零れそうな『リトマス試験紙が入っていた袋』があったそうだ。
【しゅーみんの語る時間】
卒論とかの査読の際、しゅーみんはなんだかんだで男子は長くても二十分ほどしか時間をかけないらしい。が、女子が相手だと最低でも二時間はかかるそうだ。まったく、ここまで露骨だとかえって清々しくなってくるレベルである。
【X組への電話】
後で文句を言われないように、城木先生はX組に連絡を入れるときは必ず日付と時間をメモするそうだ。こうすることで『なんで連絡してくれなかったんだ!』とか『仕事してないじゃん!』と言われるのを防ぐらしい。本当にお疲れ様です。
▲▽▲▽▲▽▲▽
城木先生、この大学生の面白い話をまとめて本にしようとも思ったらしいんだけど、著作権とかの諸々が面倒だからやめたそうな。
もしこの日記を城木先生が知ったらどんな反応をするのか、興味深くもある。ちょっと方向性は違うかもしれないけど、まさに『研究室の面白い話』をそのまままとめた本なわけだし。
よもや城木先生も私がこうして日記をつけているなどとは夢にも思っていないだろう。まさか自分が話したことのすべてを記録されているとは考えてすらいないはずだ。
今ふと思ったけど、もしこの日記を読んでいる第三者が城木先生にこの日記の存在をバラしたら大変なことになるんじゃね? 内容的には見られても大丈夫だけど、絶対それだけじゃ済まないことが簡単に想像できる。ある意味で、一番見せちゃいけない人かもしれない。
そうそう、授業後に麻生さん、柳下とともに件のダストシュートを確認しに行った。したっけ、それっぽいのを探していたら『お? 不審者? 不審者?』と若干嬉しそうな声音で鷲谷先生が声をかけてきた。
『どうしたの? ねえどうしたの?』と聞いてきたので、正直にありのままを語る。『なに!? 城木先生授業で俺のことディスってんの!?』と、発した言葉とは裏腹になんかうれしそうな反応。どことなくしゅーみんとキャラが被っているように思えたのは気のせいだろうか?
で、鷲谷先生曰く『【検閲済み】研にダストシュートがない? うそうそ、絶対あるって!』とのことだったけど、やっぱり五階にはダストシュートは存在しなかった。いったい何を根拠にああも言い切ることができたのか、興味を隠せない。
午後は修正データ用の逆解析を進める。今回は【検閲済み】についての逆解析で、【検閲済み】曲線はすでに作ってあったし、順解析も済ませてあるから全くゼロから始めるってわけじゃない。
とはいえ、それなりに面倒なことには変わりなく、やっぱり解析結果はそこまで思わしくない。傾向そのものは【検閲済み】の時と似ていたけど、こちらは値の変動が二次に比べて小さいから、ちょっとの誤差が相対的に見てかなり大きく響いてくる。ついでになぜか違う【検閲済み】の実験値と順解析値が誤差±10 Hzのレベルで一致してしまっている。もうやだ。
話は全く変わるけど、今日青松が来たことに全く気付かなかった。いつもならすぐに気付くのに、注意力でも落ちていたのだろうか。最近どうもたるんでいるので気を引き締めていきたい。
そうそう、おやつの時間にみんなでコンビニに行ったんだけど、井浦がせっかく買ったから揚げ棒のから揚げを一つ落っことしてしまっていた。結構もったいないと思う。一個三十円くらいはするんじゃね?
今日は冬至。柚子湯が私を待っている。さっさと帰って体の芯から温まり、疲れを取っておきたい。あと柳下はカボチャが苦手であんまり食べないんだって。冬至の時くらいは食べるべきなのに。