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12月17日 最後のひとつ、そして旅立ち

12月17日


 山岸の原付がガス欠しそうになったらしい。全く実にいつも通りな日常の始まりである。


 研究室に到着したのは院生中間報告会があったためちょっと早め……のつもりだったんだけど、相も変わらずクソ【検閲済み】線が遅れたため、言うほど早いってほどでもなかった。あと、朝から贅沢に【検閲済み】で39円の缶コーヒーを買ってしまった。若干味も香りも薄い気がしなくもないけどマジデリシャス……ということにしておこう。


 午前中は院生の中間報告&【検閲済み】班と【検閲済み】の中間報告。後述するけど是枝さんが欠席したため、時間にいくらかの余裕ができ、院生への質疑応答の時間が長くなったことを除けば特筆するべきことはなし。


 ああ、修士だからか南郷さんの資料だけは六ページ(たぶん)もあるガチなやつだった。再来年には自分も同じことをせねばならぬと思うと今から胃が痛い。【検閲済み】にそんなに書く内容などないようにも思える。【検閲済み】の【検閲済み】分布や【検閲済み】曲線でごまかせばいいだろうか。


 そうそう、【検閲済み】のスライドに出てきたグラフのプロットが非常にビッグだった。傾向として、というか見た目的にほぼ変わらないのに、なぜか一方では『上昇傾向があることが分かった』、もう一方では『一定値を取ることが分かった』と述べられていて若干混乱する。


 なんでも図を小さくしたときにプロットだけそれが適用されず、相対的に大きくなったらしいんだけど、そんなことってあるのだろうか? 大海先生も苦笑いしながら『これだとデータを偽装しているように取られかねないよ』って言ってた。


 お昼の時間頃、銀さんが詐欺(?)メールが来たことを報告してくれた。年金機構(?)から年金未納のおしらせが届いたとのことなんだけど、ヤフーでググっても『本物ですよ!』と『偽物ですよ!』と意見が入り混じっていて判別がつかなかったそうな。


 『延納手続的なのをしなかったんですか?』と聞いたところ、『そういうの全部親に任せている……』と銀さん。はがきも来たかどうかわからないらしい。


 とりあえず、誘導先である【ねんきん!】というサイトはあまりにも怪しすぎる。いくらなんでも公のそれでこんな昨今の深夜アニメやラノベみたいな名前を付けたりはしないだろう。だいたい、こういうのは書類で通達するのが普通である。


 さて、返信しないのはいいとしても、どうして銀さんのメルアドが流出したのかってのが問題となってくる。銀さんがあのメールを迷惑メールだと断定できなかった理由に【本文中にメルアドが記載されていた】というのがあるんだけど、そこでまたなんとも驚愕の話を聞くことが出来た。


 なんと【検閲済み】の【検閲済み】(【検閲済み】)の管理をしていたニューフェイスが、【検閲済み】とその個人情報が入ったカバンを電車に置き忘れて問題になっているらしい。当然銀さんの情報もその中に入っていたらしく、『たぶんそれのせいかも』とは銀さんの談。向こうも結構大変なことになっているとか。


 お昼の時間頃、ちょうど衣笠先生が学部生室にお弁当を温めに来たため、例の滑らか板材だと【検閲済み】を【検閲済み】ない問題を相談する。先生曰く『スペーサーにひずみゲージをつけているから、本来なら【検閲済み】は影響しないはず』とのこと。


 どうやら滑りやそれに類する別の問題が発生している可能性があるらしい。が、私も銀さんも現実問題として【検閲済み】ほどに【検閲済み】という事実を体感している。去年からそうだったわけだし、さすがにすぐに納得できるわけがない。


 とりあえず、原因はわからないものの、締付トルクに対して十分なひずみを与える方法として『ねじ部などに油を注せば締付けやすくなる。でも板材間にはやっちゃダメ。あと染み出た油はふき取るように』というアドヴァイスをもらった。


 単純だけど、油のおかげで潤滑が良くなり締付け易くなるらしい。ただ、その分値がぶれる可能性が強くなることと、トルク係数や摩擦係数が未知となるから通常の理論式が使えなくなってしまうそうな。


 なにはともあれ、落ち着いたら銀さんにやってもらうことにした。これでうまくいくことを強く願う。


 午後はスライドの調整にかかる。銀さんが予備資料を充実させてくれたため、なかなかいい感じの仕上がりになった。これでほぼ完成。あとは練習して素敵なタイムをはじき出すだけ。


 さて、銀さんからもらったグミを食べつつ作業をしていたら、羽鳥、山岸が『グミちょうだい』と声をかけてきた。原田は『うめえうめえ!』とやたらと貪り、山岸は『なんかこれすっごく健康に悪そうな味がする』と言いつつも手が止まらない。


 それはもう、二人ともびっくりするくらいに食べまくっていた。かなりの量があったはずなのに、気づいたらもうラスト一粒。


 『これ絶対健康に悪い、絶対に悪い』ってずっと言っていたのに、山岸はしっかり食べており、『ラストの一つは食べられないって日本人のサガだよね』って最後の一粒だけはこちらに譲ってきた。


 いや、別にいいんだけどさあ。せめて食べるなら美味しくいただいてほしいものだ。


 そうそう、夕方ごろに大海先生が差し入れでママンミールを持ってきてくれた。和菓子(?)っぽい感じで中に白餡が入っている。高級品らしく、どこどなく上品なお味。


 大海先生ってお菓子をいっぱい差し入れしてくれてちょう大好き。この数か月でかなりの差し入れをしてもらった気がする。


 お菓子で思い出したけど、最近お茶を飲むだけ飲んで作らない奴が多い。いっつも最後の一杯分だけ残っていて、私が作る羽目になる。こないだ銀さんが作ってくれたけど、これは由々しき事態。


 普段飲む奴なんて、それこそ泊まる連中か、羽鳥、水瀬、柳下……大穴で東原くらいしかいない。羽鳥は2 Lのペットボトルに移し替えて飲んでるし、柳下は紙コップで飲んでいる姿をちょくちょく見かける。水瀬もカップで飲んでいる。東原は柳下の紙コップをちょろまかして飲んでいる。


 だのに、あいつらが作る姿をここ最近とんと見ない。夏場だってあんまり見なかった。注意こそしたけど、通じてくれたかどうかはわからない。麦茶の一つくらい、言われる前に自分で作れるようになってほしいものだ。


 最後に。


 是枝さんがとうとう自分探しの旅に出た。院の中間報告も欠席。もういろいろ限界だったのだろう。連絡こそついているらしいけど、学校に来る気配はない……というか、現段階で絶望的。


 いずれにせよ、無事息災であるならばそれが一番だと思う。いつの日か、再び会い見えることを強く願う。

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