12月15日 お泊まり・コスプレ・旧き日のゲーム
12月15日
久しぶりのお泊り。思えば発表前は毎回泊まっているような気がしなくもない。なんと理系らしい研究室生活かと感心するばかりだ。
研究室に到着したのはいつもと同じくらい。今日も人が少ない……と思いきや、すでに柳下は院生室で作業をしていた。あいつ、新しいパソコンが来てからというもののめっきり向こうで作業をすることが多くなっている。
誰かが『柳下はM0.5だろ?』って言っていたけど、実にうまい喩えだと思う。来年になったら1.5になるのだろうか。今からちょっと楽しみである。
さて、一限に英気を養った後に二限の強度工学特論に出席する。城木先生にしては珍しく、これといった雑談もなく、先生がどこかの学会で使ったというスライド(疲労に関するやつ)で授業が始まり、そして終わった。何気に初めてのことかもしれない。
関係ないけど、柳下が『城木先生はこっちのことを真面目だと思っている。ちょくちょく「真面目に授業やらねえと柳下くんが怒るからな!」っていうけど、全然そんなことない。むしろやらないでくれとさえ思っている。だから、今度そんなことを言われたときは全力で否定しておいてよ』って言ってきた。あいつ、そういう重要なことばかり人に頼んでくるよね。
午後は中間報告用の資料の作成にかかる。銀さんが工場見学で不在のため、すでに取得してある表面粗さ中くらいの実験データより得られた逆解析結果を用いてパパッと実験値と解析値の比較を作った。
これがどうにも考察しにくい事態に。粗さ中くらいはいいんだけど、粗いやつがだいぶ荒ぶっている。一割程度の誤差とはいえ、解析値の幅を見るといくらかの不安を隠せない。
そうそう、それに関連して福山に煽られた。めっちゃ煽られた。『結構ずれてるじゃねーか!』って煽られた。あいつも畑違いとはいえ解析なのに。最近みんな心が荒んでいると思う。
水瀬も最近いじわる。こもりんの言葉を用いていろんな人をからかいまくっている。あるいはあいつも覚えたての言葉を使いたいのかもしれない。この研究室内に限って言えば、こもりんの言葉の汎用性の高さは凄まじいものがあるし。
お昼の時間頃、井浦が『彼女がいるからってリア充とは限らない』などとふざけたことをぬかしだしたので、山岸と共にいかにそれが幸せで大切なことなのか、二度とそんなふざけたことをぬかすなと説教をした。
これだから彼女持ちの奴は困る。今手元にある幸福を当たり前のものだと思ってやがるのだ。無くなってから気づくのでは遅すぎるというのに。なんであいつらは持たざる者のことを考えないのだろうか。そんなんだから爆発しろって言われるのだ。
その山岸だけど、パソコンセンターにこもって資料の作成をしていた。繋げる者として四角と丸のプロットを繋げていたのだろう。実にすばらしいことだと思う。
そんなことをしながらお昼を食べていたら南郷さんが学部生室にやってきた。てっきりお湯か電子レンジにでも用があるのだろうと思ったら、なぜかまっすぐこっちに向かってくる。で、『俺明日時間無いから、今日の五時までに概要集見せてね!』と超笑顔で言ってきた。
さすがに絶望を隠せない。そもそも今日は泊りで概要集を作成する心づもりであったのだ。どうしてこうも思い通りにならないのだろう。やはり我が班は呪われているのやもしれぬ。
とりあえず、『間に合わせて見せます』とだけ言って作業を進めることに。こうして社畜としての根性が養われ、ソルジャーが誕生するのだろう。理系の闇を垣間見た気がする。そして、悲しいことにもう誰もそれを不自然と思わなくなってしまっているのだ。
おやつの時間頃、羽鳥と山岸がお昼寝をしていた。とても安らかにスヤスヤと寝息を立てていてなんとも心地よさそう。羽鳥に至っては例の大きな枕をぎゅっと抱きしめ(意外なことに抱き枕として使っていた)、母の腕に抱かれた幼子のような寝顔を見せていた。二十過ぎの理系男子とは思えない子供らしい可愛さがあったことをここに記しておく。
時系列は多少前後するけど、気合を入れるためにココアシガレットを買いに行く。ひと箱三十九円で実にリーズナブル。もう少し量があってほしいと思わなくもないが、あの懐かしい味はとてもクセになる。最近あんまり売られている所を見ないのが悲しい。
さて、気合を入れたかいもあり、なんだかんだで夕方に概要集を作成することに成功する。南郷さんの査読も大きな問題点もなく通過することが出来た。せいぜいが切れてしまったところや微妙な空白を指摘されたくらい。内容に関しては一応問題なし。このまま中間報告も乗り切りたいところだ。
その後はお泊りということもあり、みんなで学食に夕餉を取りに行く。いつぞやと同じく、羽鳥が頼んだ肉もやし定食はできるのが遅かった。そしてとんかつ定食は成形肉っぽくって値段分のクオリティがあるとは思えない。もうちょっとマシなものができると思うのに。
【検閲済み】大ってよく高校生を【検閲済み】で釣っているけど、その時点でお察しではある。思えばクソbotにもそんなようなことが書かれていた気がする。
水瀬もとんかつ定食を頼んでいた。ちなみに、四日連続くらいで揚げ物を食べているらしい。食欲があるのはいいことだと思う。若くて健康的な証だ。
夕餉の後は研究室でジャージに着替えた……のはいいんだけど、羽鳥ほかいつものメンツに『これヤバいやつだ』と爆笑される。まさか高校のジャージを持ち出すとは思ってもいなかったらしい。
しかもエヴァンゲリ●ンのトウジくんが着ているジャージに似ていると変な方向に盛り上がる。カラーリングが紫に緑なものだから余計にそういう風に見えるらしい。ガチもんのコスプレかと一瞬思ったそうな。【検閲済み】高校の伝統的なジャージなのに。
おまけに、『ジャージに下駄とか狙いすぎだろ』、『孫のジャージを借りたおばちゃんがこういう格好をしているのを見かけるよね』と羽鳥、柳下に言われた。羽鳥はともかく、柳下はやっぱり発言がブラックだ。
夜はスライドの準備……をほどほどにしてお楽しみタイムに。羽鳥がフリーゲームらしき『恐怖の森』なるゲームを勧めてきたのでみんなでプレイした。
なんか森の中でバイクが故障し、そのパーツを探して脱出する……という設定なんだけど、後ろから永続的に変な怖い顔が追いかけてくるというホラーゲーム。こちらのほうがわずかに速度に勝るとはいえ、それでもちょっと躓いたらあっという間に追いつかれるという高めの難易度。ただし、見た目よりかはあたり判定が緩いため、決して理不尽ってわけではない。
が、みんなでひとしきり怖がった後はすぐに飽き、クリアする前に終わってしまった。
その後はなぜか音楽ゲーム大会に。工場見学から戻ってきた銀さんをはじめ、みんなが各々手持ちの音ゲーのビートに身をゆだねていた。
私はゲームを持ってきていなかったので、とりあえずということでネットピアノで【沈●だ歌姫】とか【い●も何度でも】弾いておいた。
『あいつだけヤバい』って水瀬に言われたのが未だに解せぬ。モノホンの楽器こそ究極の音ゲーだと思うのに。水瀬は一度なにか楽器をやってみるべきだと思う。
その後、やつらはゼ●ダをやり始めた。その間もひたすらピアノを弾き続ける。で、奴らが飽きたころにみんなでクラッシュバ●ディクーをやることになった。
プレイステーションの起動音が何とも懐かしい。あの微妙に恐怖感を煽りたてる感じがたまらない。クラッシュ3はよくおじさんの家でやった思い出深いゲームだ。自然と興奮する。
早速プレイ。一度死ぬごとに交代って感じで青松、羽鳥、水瀬とやった。巨人に殴り飛ばされたり、魔法使いにカエルにされたり、カエルに体液を啜られたり、クラッシュはやられ方がとても豊富でこだわっていると思う。
思えば、イスラムっぽいアラビアンなステージで婦人が火炎瓶を投げてくるって、あの時代だからこそできた演出だと思う。今はもうそれをやってのけるゲーム会社なんてないはずだ。
早々に羽鳥が離脱したものの、三人で結構なハイペースで進めていく。巨人がなかなか倒せなかったり、魔法使いの存外長いリーチにやられたり、大きな穴に何度も落ちながらも挑戦したり、思った以上に楽しめた。
特に、あの懐かしい近未来の面のボーナスステージ、そのラストのスライディングダブルジャンプ竜巻スピンアタックを駆使しないといけない巨大な穴はアツかった。おじさんの家で何度もやり直して挑戦したのを覚えている。
あの時はおじさんと【検閲済み】ちゃんしかあそこをクリア出来る人はいなかった。私も【検閲済み】ももちろん姐者もあそこはいつも落ちていた。そして【検閲済み】は生まれていない(たしか)。
実に十年以上ぶりのリベンジ。もう幼かった私ではない。コントローラーを持つ手が自然と汗ばむ。逆に、心はどんどんクールに。
そして、見事に難所を一発でクリアすることに成功する。幼き日の雪辱を果たしたことに喜びを隠せない。あの時の歓声に旧き日の興奮が混じっていたことなど、水瀬も青松も気づいていなかっただろう。
自分でも驚くべきことに、なんと全二十五面中、最終エリアである二十二面まで一晩で進めることに成功する。が、このままラスボスまで突っ切ってしまおう……と思っていたところでフリーズしてしまった。
メモリーカードがなかったため、当然のように記録は全部消えた。らしいと言えば実にそれらしいが、あまりにもあんまりなオチである。
だいぶ長くなってしまったが、こんなものにしておこう。そのあとは椅子をくっつけて寝た。研究室へのエアベッド配置を強く望む。