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12月11日 日記の製本

 昨日は二回投稿しております。読んでいない方はご注意ください。

12月11日


 昨晩からの大雨により、自宅前の【検閲済み】が警戒水域を超えた。家の窓から本来見えないはずの川面が見える。十六年前に治水工事をしてからあふれることなどなくなったはずなのに、ここ数年の豪雨のせいで堤防決壊一歩手前まで行くことが増えてきた。


 ついこの前はとうとう川の水が道路にまであふれたが、今回はそこまでではない。が、それでも不安なことには変わりなく、警戒サイレンがひっきりなしに響いている。雨の勢いはいまだ治まらず、今日はこのまま休んでしまおうか……という邪な考えがむくむくとその鎌首を擡げ始めた。


 が、パソコンで雨雲レーダーを確認したところ、一時間後には雨雲は通り過ぎることが判明。上流にも雲はかかっていなかったため、いつもより三十分ほど遅れて登校することにした。


 そんなわけで、ラインでその旨を伝えてから研究室へ。到着したとたんに泊まりだったらしき青松、羽鳥らから驚きの声が上がる。『無理してくる必要なかったのに!』と言ってるそばからみるみる晴れてきた。


 数分後には雲一つない、どこまでも高く青い空を研究室の窓から望むことが出来た。台風一過と同じ現象なのか、気温もみるみる上昇。若干暑いと思うレベル。実に心地よい気候だったと言える。


 さてさて、今日はちょっぴりのサプライズがあったりする。そう、ここ数日で編纂していた日記がとうとう製本化され、昨日ようやっと届いたので持ってきたのだ。


 まさか本当に本にしたとは思わなかったらしく、青松も柳下も驚愕の表情。意外なことにそれなりに好評で、『内輪ネタだらけだけど、それだけに思っていた以上に面白い』とお褒めの言葉をいただいた。なんかちょっと照れる。


 話は全く変わるけど、水瀬が今度の中間報告おつかれさま会の集金をしていた。が、なんか途中で五百円ほどお金が合わなくなったらしく、『どこかそこらへんに五百円落ちていない?』と周りに尋ねだす。


 これは一大事ってことでみんなで協力して事に当たるも、それらしきものは見つからず。諦めかけたその時、福山が『えっ、あれ水瀬のやつだったの?』と自分の懐から五百円を取り出した。


 なんか、自分のポケットに引っかかってたものだから自分の財布から落ちたものだと勘違いしたらしい。ともあれ、無事に見つかってよかったとも思う。


 銀さんがいつも通りだったため、その間は概要集の体裁を整えていく。腹立たしいことに卒論、卒論発表学会、こないだの学会のすべてでフォーマットが違ううえ、卒論学会に至っては無駄にタイトルの行間がデカくて解析手法を書き終えた段階で全体の七割を埋めてしまうという事態に。


 しかも、テンプレが古いヴァージョンのワードっていう相変わらずのクソ仕様。なぜわざわざ数式を埋め込めないものをテンプレとして採用しているのか、本当に理解できない。


 そうそう、それ以外にも解析結果をまとめて後はサクッと載せるだけってところまで持って行った。イマイチ図が見にくい感じが否めないけれども、どうしようもないからあきらめるほかない。


 というか、なぜエクセルの判例は個別に指定して打ち込むことが出来ないのか。指数表記ができないことといい、ピンポイントでかゆいところに手が届かない。クソみたいなアップデートを繰り返して徒に操作性を悪くするよりも、こういうところを直せばいいのに。


 だいぶざっくりしているがこんなもんだろう。思いのほか日記が好評でちょっとうれしい。福山もなんかやたらとはしゃいで読み耽ろうとしていた。『これ研究室の全員に配ろうぜ!』とか誰かに言われたけど、さすがにそれはコストがかかりすぎる。


 魍●の匣の横に置かれた理系学生の日記は自然に本棚に溶け込んでいるように思える。駄文を書き散らかしたものとはいえ、こうしてみるとなかなかに感慨深い。ちょっぴりの達成感と共に、今日の日記の締めの文章とさせて頂く。

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