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12月10日 誰かの書き込み

 臨場感(?)のため、投稿時間をずらしました。ひとつ前を呼んでいない方はご注意ください。

12月10日


 なんか日記を開いたら誰かの書き込みがあった。前日の謎の柳下推しのがそれだけど、驚くべきことに新しいファイルまで作成されている。【212_2086年12月後半の日記】と、ご丁寧に名前の形式まで揃えられていた。せっかくなのでその中身をここに記そうと思う。



─────


23:54 2086/12/31

もうすぐ今年も終わる。

大晦日まで12時超えの研究。この研究はいつになったら終わるのだろうか。

年末ということで大掃除をしていたら、何かの日記が見つかった。

理系学生の日記と書いてある。

おそらく過去の学生が記したものだろう。

他人の日記を見るのはあまり気が進まないが、あまりにも過去の日記であったため私も興味を持ち、中身を見てみた。

すると私はあまりの中身の斬新さに圧倒されてしまった。

日記なのにフィクションと書いてある。これは一体どういうことだろうか。

この日記は筆者の妄想の中の世界の話ということなのか。私はますます興味を持ってしまった。

さらに読み進めてみようと私は思った。

が、しかし。急に遠くから物音がし始めた。

おかしい。今日は私しか研究室にしかいないはず。

その物音はどんどん近づいてくる。

鈴の音がする。

何者かが鈴を携え、オカリナの音を奏で、下駄のようなものを履きながら私の方へ近づいてくる。

私は身震いが止まらなくなってきた。

そして何者かが学生室のドアを開けた。

「銀さんまだかなぁ」

その声を聞いた瞬間、、私は気を失っていた。


─────



 そこはかとなく溢れるホラー臭に驚きを隠せない。前半の孤独な日常からちょっとした非日常に触れるところがうまい。さらに日記をきっかけに正体不明の恐怖がひたひたと差し迫ってくるというなかなかの技法。最後の終わり方も、唯一の会話文が『銀さんまだかなぁ』という一見何気ない言葉であるのも、書き手のセンスがうかがえる。


 日付的にはかなり未来のお話となっているけど、案外私の遺したそれが受け継がれていく可能性もゼロではないのかもしれない。


 たぶん、書いたのは青松だろう。それくらいしかやれそうな人に心当たりがない。文章の癖的に水瀬ではないはずだ。あと、羽鳥はそもそも文章を書くということ自体を面倒くさがるはずだし。


 研究室に到着したのはいつもと同じくらい。今日は木曜日だけどゼミはなし。おかげでゆったりと来ることが出来たけど、体に残る疲れは取れていない。週末だしいくらかは仕方ない部分がある。


 到着後は順解析、逆解析共に進めていく。銀さんが粗いやつの実験値を出してくれたため、それを用いてやっていくことに。やっぱりというべきか、【検閲済み】曲線の収束点は正解値と一致しなかったけれども、もともとそういうものだと思って収束点を【検閲済み】として扱うことにした。


 結果、逆解析値は順解析値とも実験値ともずれることが判明。誤差と言えば誤差の範囲だけど、【検閲済み】という観点でみるとなかなか見過ごせないものがある。どう考察していくかで今から胃が痛い。


 というか、本当になんで去年はあんなにもきれいな値が出ていたのだろうか。誤差±10 Hzっておかしくない? いくらなんでも出来過ぎでしょうに。


 そうそう、今日は銀さんにモーニングコールをした。連絡を入れた時にはすでに起きていたらしく、すぐに返信が来る。が、結局やってきたのはいつもと同じくらいだった。コールをかけた意味を自問する。


 なお、なぜか羽鳥の到着はとてつもなく遅かった。たしかおやつの時間頃だったと思う。三度寝をしてしまったらしい。全く、M0としての自覚が足りないものである。


 銀さんの実験の方だけど、ひずみゲージが途中で切れてしまったために中断することに。今日は貼り直してオシマイ。あれの千切れやすさはマジでどうにかした方がいいと思う。製作会社は何を考えているのだろうか。客のニーズにきちんと答えてほしいものだ。


 今更だけど、なぜか柳下が泊まりでもないのにスウェット姿だった。研究室を自室のごとく思っているのだろう。というか、あまりに長時間いすぎて自室のような愛着がわいたのかもしれない。我々が日常的に研究室に寝泊まりする日もそう遠くないのかもしれない。


 時系列が多少前後するけど、水瀬がやたらとおねむだった。山岸とかはなぜかさっさと帰ってしまう。そして是枝さんがだいぶ鬱な感じに。見ていて結構痛々しい。精神状態が心配だけど、特にこれと言ってやってあげられることもない。


 せいぜいが愚痴を聞いてあげることくらいだろうか。来年以降の自分を幻視しているみたいで心が痛い。院生生活ちょう怖い。


 そうそう、また話は変わるけど、逆解析するときに【検閲済み】曲線で既知の【検閲済み】より【検閲済み】をグラフから求めるところがあるんだけど、多項式近似すると五次方程式を解かなくちゃいけなくなってとっても面倒だという問題があった。


 が、なんとマスマティカを使うとあっという間に複雑な方程式を解けることが判明。今まで線形近似とかでなんとかごまかしてきたけど、これでようやくそれなりに正解に近い値を使うことが出来る。


 ただ、solveとSolveを明確に区別しているってのは教えてほしかった。マジで使い方がどこにも載っていないし、ネットにも断片的にしかないからそれなりにてこずった。


 最後に。青松が椅子から転落した。大きな音がしてかなりビビる。これで石垣、八柳に引き続き三人目の転落者。今回も尻から盛大にいってた。なんでこうも転落者が続出するのかイマイチよくわからん。


 ああ、ガチで最後に。なんか↓の文章が日記メモに追加されていた。いったい誰が書いているのか、興味を隠せない。どうせなら自分の日記を書けばいいのに。


 例のアレみたいに、たまには人の日記を盗み見てみたいものだ。


追記:今日は特にありませんでした。

※日記の元データとなっているメモ帳のテキストファイルは、【1_20XX年4月前半の日記】、【3_20XX年5月前半の日記】……といった感じで名前が付けられています。また、日付時刻の記入はメモ帳でF5キーを押すことで記入しているため、元データでは一番最初に【16:50 20XX/04/16】……といった記述があります。

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