12月2日 監禁
12月2日
朝から大変な目に合う。朝、着替える前にトイレに行くのが私の習慣なんだけど、用を足して出ようとドアノブをひねったら、空回りして扉が開かない。
当然鍵云々の問題ではなく、純粋にドアの開閉機構のトラブル。どんなにガチャガチャしても開かないし、当然のごとくトイレに工具があるはずもない。
疑いようもないほど完璧に閉じ込められた。さすがに泣きそう。
幸いなことに大声を出したら母がやってきてくれたため、衰弱死は免れる。しかし、どうも外側からのドアノブも反応しないらしく、状況に進展は見られず。外側から工具を用いてドアノブを外すも開かない。
それならばとトイレの窓から工具をもらい、内側のドアノブも外してみる。ノブがとれたなら扉も開くだろうと思ったが、次の瞬間絶望に包まれた。
うん、ドアノブって開閉機構に対する入力装置の役割を果たすだけで、開閉機構そのものにおいて支配的な立場にはないんだよね。つまり、取ったところで中の機構をどうにかしなきゃどうしようもないってこと。
当然、複雑な機構をトイレの内側からどうこうできるはずもなく。閉じ込められた上に脱出の希望さえ潰えてしまった。
しょうがないので体当たりして扉をブチ破ろうと試みる。『さすがに稚児じゃああるまいに、穀潰しでもそれくらいできるだろう?』と母上はおっしゃったが、無駄に肩を痛めるだけに終わる。
だってトイレの中って勢いづけるだけのスペースないし、ジャパンの建造物って無駄に丈夫なんだもん。ボロ屋のくせになんでそういうところだけしっかりしているのか。
刻一刻と出立の時間が迫る中、業者への連絡も視野に入り始める。さすがにこんなことでお世話になるのはみっともないが、背に腹は代えられない。
とりあえず、最後まであがこうとガチャガチャやってたらなんか奇跡的に扉が開いた。運よく中の機構が動いてくれたらしい。本当に助かった。
そんなことがあったので、研究室に到着したのはいつもよりだいぶ遅め。あと、【検閲済み】駅にてセーター姿のびっくりするほどきれいなおねーさんとすれ違う。
何がとは言わないけど絶妙に大きくて、それを強調する灰色のセーターがすごく似合っている。冬っぽい装いが最高にグレート。ほんの一瞬だったのに、思わず目玉をひんむき、振り返ってしまいそうになるほどきれいな人だった。
同じくらいの時間に行けばまた会えるだろうか。ぜひまたお会いしたいものだ。
さて、研究室に到着後は化学反応特論の課題を進める。先生が言っていた通り、三次反応の例はほとんど見つからない。とはいえ、電子の海は広大なもので、一時間もかけないうちになんとか四つほど見つけることが出来た。
それがいったい何の反応なのかはさっぱりだったけど、しっかりメモして適当にレポートっぽくまとめる。あと、学会を頑張る柳下、青松、羽鳥にそのままプレゼントしてあげた。
柳下の奴、しっかり化学式の順番を私のものと変えて記述していた。さすがだと思う。
午後は資料の準備をしつつ、前期の日記の編集作業に入る。これに関しては深く書くことでもないのでここまでにしておこう。あえて言うなら、ワードの一頁目がなぜか偶数ページとして認識されるクソみたいな状況に陥ったということくらいか。
おやつの時間頃、羽鳥が『やべぇ、世紀の大発見した』と学会資料を見てつぶやいていた。なんか、45°方向にずらした二層積層CFRPが多層積層よりも何倍もの強度を持つという結果が出たらしい。
あっちの研究はよくわからないけど、さすがに数倍は高すぎると思う。とりあえず、もし本当に世紀の大発見だったら、研究生活を支えた仲間として名を上げようと思う。
あと、メモに『はとりやんちゃ』って書いてあるけどいったい何のことだろうか? 何か面白いことだったような気がするけど、イマイチ思い出せない。
ヘアピンだった気もするし、チリ紙代わりのトイレットペーパーをびりびりにしていたことのような気もする……書いてて思ったけど、トイレットペーパーびりびりにして遊ぶとかやんちゃってレベルじゃねーぞこれ。
そうそう、話は変わるけど是枝さんがインフルエンザに罹ったそうだ。数日前から体調が悪く、昨日とうとうダウンしてお休みだったんだけど、病院に行ったらインフルだって診断されちゃったらしい。
割と結構いろんな人と話していた……というか、この研究室って狭いし換気がなってないし乾燥しているしで非常にアブナイんだけど、そこのところどうなるんだろう?
もしかしたら夢の研究室封鎖が来るかもしれない。ちょっと楽しみ。
書く順番を思いっきりミスしたが、是枝さんが欠席のため今日の院ゼミはなしだった。早くとも一週間は先のはずだけど、一体いつになるのだろうか。
もっと書くことがあった気がするが(実験進捗とか)、思い出せないのでここまでにしておく。やはり日記はその日のうちに書く習慣をつけておきたいものだ。