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11月24日 エピソード

11月24日


 外は寒いが中は暑い。そんな感じの気候。


 研究室への到着はいつもと同じくらい。いつもと同じく体がだるくて非常に眠い。どうせ今日は二限に授業、さらに午後に仮配引継経過報告発表会があるため、研究はお休みしようと心に決めた。


 二限は城木先生の強度工学特論。いつも通りの雑談が始まる。


 なんでも、城木先生は独身時代、【検閲済み】のお偉いさんとお見合いしたことがあるらしい。相手側的に、城木先生のルックスや職業なんかは問題なかったらしいんだけど、結局はフラれてしまったそうな。


 その大きな理由というのが『あんな大酒呑みとはやってられない』というもの。城木先生は『日本酒の一升くらいでギャーギャー言ってんじゃねえよ!』って言ってた。今でも結構飲んでいるらしいけど、最近ほんのちょびっとだけ量が少なくなったんだって。


 そうそう、【検閲済み】研の人が研究室旅行で城木先生に買ってきたお土産のぬれせんべいを、『せっかくだからみんなで食べようぜ!』という先生の好意により頂くことに。【検閲済み】の名物らしく、大きさの割になかなかの食べごたえがあってデリシャス。ちょっとしょっぱすぎるきらいがあったものの、充分許容範囲内。


 なんでもこのぬれせんべい、【検閲済み】の財政のピンチを救ったものらしく、【検閲済み】に思い入れのある人たちによって買われまくったそうな。


 城木先生、袋についていた心温まるエピソードを楽しそうに読み上げる。『電車の中、初めてのデートで緊張し、互いに無言になっていた僕たち。そんな僕たちに気遣った車掌さんが明るく話しかけてくれて、僕たちの緊張をほぐしてくれ、そのあとのデートは最高のものになりました。その女の子は今では僕の妻です……なんかコレ嘘くせえな!』って感じですっごくノリノリで全部読み上げていた。


 あんまり関係ないけど、城木先生ってばせっかく【検閲済み】のマラソンの抽選に受かったのに、振り込みを忘れて資格を取り消されてしまったらしい。


 ちなみに、授業そのものは宿題の答え合わせで終了。今日も平常運転である。


 お昼の時間、衣笠先生と一緒に学会参加の申し込みをする。これでもう後には引けない。今回は卒論発表の奴とはいえ、面倒なことには変わりがない。なんとか無事に終わってほしいものである。


 せっかくなので例のスペーサーの圧縮試験についても相談する。『スペーサーごとのブレを見るために、後二本別のやつで試験かけた方がいいよ』とのこと。ひずみゲージが切れまくる現象に関しては諦めるほかないようだ。


 あと、柳下に『──の笑顔は作り物ってすぐわかる。愛想笑い臭がものすごい。研究室でも心から笑っていることほとんどないよね』と言われた。一応はちゃんと笑っているつもりなのだが、どうもそうは見えないらしい。由々しき事態である。


 笑顔が胡散臭いと言われたことはあるが、ここにきてこの言い様。みんな人のことをなんだと思っているのだろうか。ちょう悲しい。


 午後は仮配引継経過報告発表会。司会を務めた。特筆するべきことは特になし。しいて言うなら梅宮が風邪で休んだってことと、CFRPのもう一人が二人分頑張ってたってことくらい。あと、今日はいつになく衣笠先生が容赦なく質問をしまくっていた。


 『ちょっとこれからエグい質問するけどいい?』って言い出した時なんて、仮配の顔がおもっくそ引きつっていた。


 あと、名前誰だかわかんないけど一回バシッ! って思いっきりスクリーンを叩いているやつがいた。みんなビビってたけど、一体あれはどうしたのだろうか。

 夕方より、おつかれさま会に参加する。三十分たってもお酒がみんなに回らなかったり、料理や酒が偏りすぎて全然飲み食いできなかったり、全体的にちょっと不満。


 そうだ、驚くべきことに、月野には彼女がいるらしい。それも高校時代から五年間も続いているそうな。馴れ初めは『最初の自己紹介の時に向こうがビビッときたらしくって』とのこと。


 つい最近も一緒に会ったりデートとかしちゃったりしたとか。一緒に下校して制服ウィンドウショッピングとかもやったことあるんだって。


 あの野郎、敵だ。そんなの初めて聞いたぞ。こちとら灰色を超え、悠久の時代を感じるほど錆びつき褪せ、朽ちた青春時代を送ったというのに。


 なんなの? 何そんなマンガみたいな出会いしちゃってんの? ドキドキイベントしっかりこなしちゃってんの? 仲が良いと思った女の子から『……おじいちゃんみたいでだいすき?』と言われたこっちの立場はどうなるの?


 なんだか急激に続きを書く気が失せた。来年一年間、このネタでみっちり月野をからかおうと思う。

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