4月23日 終わらないエラー
4月23日
研究室についたのは0915頃。アソシスもボルトも爆発していなかった。残念。
少しデータ整理をした後、先行履修の強度工学特論へ。内容は完全に材料評価や材料強度の復習。授業時間の半分以上を本を読むことの素晴らしさや学校では教えてくれない歴史のありがたみなんかについて語ることに費やしていた。
城木先生は歴史小説が好きらしい。ちょくちょく図書館で借りるそうだ。ナントカっていうやつは先生が借りすぎてぼろぼろになっているとのこと。
伊坂幸太郎についても軽く触れる。【死神の精度】、【重力ピエロ】といった懐かしい言葉を耳にする。高校の時の思い出がふとよみがえった。あの時また違った選択をしていれば、もっと別の未来があったのかと思うと何とも言えない気分になる。
ふと、主人公のパラドックス(だっけ?)を思い出した。フラグってもんは主観じゃさっぱりわからないもんだ。
研究のほうはさっぱり。言われたとおりに挿入要素を厚くしてみたもののやっぱりメッシュは切れない。どうがんばっても切れない。何度心の中で悪態をついたことか。
やっぱり形そのものが悪い……というよりアソシスがクソすぎる。なんでまとめて切ることは出来るのに、それと同じようにメッシュを切ることが出来ないのか。アソシスは性根がひねくれまくっている。ろくな育て方をされていないんだろう。親の顔を見てみたい。
南郷さんにヘルプを求めるものの、やはり解決までは至らず。これで頼れそうな人は全滅した。是枝さんも衣笠先生も南郷さんも無理とか、一体私にどうしろというのだ。
アソシスのメッシュさえ切れればあとはどうにでもなるのに、ここにきて致命的なまでの一撃をもらってしまっている。『世の中クソだ。でも、ほんのちょっとはマシなクソもある』から『ほんのちょっとはマシなクソでも、やっぱりクソはクソだ』と、どこかで聞いた状況と全く一緒になってしまった。
午後、──班の試験片(でっかい棒状金属の塊)を担いで五階まで二往復した。──班の試験片なのに、肝心の航空班がいなかった。あんなに重いものを運んだんだから、お駄賃請求してもよくない?
もはやアソシスはデータをサルベージするか、件のプログラムを書き換えるしかない。プログラムはそもそもその動作原理を知らないので、やるとしたらかなり長い時間がかかってしまうだろう。出来れば避けたい。今までのデータも全部使えないことになってしまうし。
サルベージはまだ現実的だが、なかなか気の滅入る作業。一応それっぽいのを見つけたが、わけわからん線がいっぱい入っているし、材料特性がなぜか四つもある。おまけにボルト径が0.3 mmほど大きいという謎仕様。泣きそう。
あげく、メッシュクリアしてメッシュをかけ直したら、やっぱりエラーがでた。アソシスのポンコツ具合に殺意がわく。アソシスが生きていたのなら、私は容赦なくぶん殴っていたことだろう。
今までできたことがどうしてできないのか。手順もモデルもあっているのに。アソシスさえ賢ければこんな面倒な事態にはなっていないと思うとストレスもマッハ。ゼミまでになんとかしないと、ひずみゲージもない今、データを発表することもできない。
いつか大きくなったら、アソシスに復讐する。もうアソシスって言葉を思い浮かべるたびにイラッとする。マジでメッシュひとつ切れないとかクソだ。口だけ達者なステレオタイプのワルガキの相手をしているイメージだ。
午後の遅い時間は羽鳥、柳下、水瀬、青松らと愚痴る。愚痴でも言わねばやっていられない。
最終手段として、大海先生にアソシスのことを聞こうと思う。次の月曜日にさりげなーく話を振れば行けるかもしれない。
銀さんは今大阪にいるそうだ。お土産買ってきてくれるといいなぁ。