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10月2日 主席と次席とNo.5

10月2日


 爆弾低気圧の影響で交通が乱れまくっていた。朝の【検閲済み】線もめちゃくちゃ混んでいて気が滅入る。何が悲しくて朝っぱらからオッサンたちにもみくちゃにされなくてはならないのか。あと満員電車でスマホやってたり新聞を広げて読んでいるやつを見ると軽く殺意がわく。人のことを慮れる大人でありたいものだ。


 さて、こんなことを書いておいてなんだけど、実はけっこういいこともあった。なんと、それぞれ別タイプのきれーなおねーさんが後から乗ってきて超密着状態に。可愛いタイプと綺麗タイプと元気タイプのおねーさんね。軽く足を踏まれたけど、満員電車ならしょうがない。謝ってくれた時の声もちょう可愛かった。


 しかも、【検閲済み】線において隅の席に座っていたら、これまたきれーなおねーさんが隣に座ってきてくれた。肌がめっちゃきれいで、ジーパンのめっちゃ短いやつを履いている、スポーティでいくらかボーイッシュな印象を受ける人だった。


 すごく健康的でとてもとても分かっている感じだったので、心の中で拍手喝采を送っておいた。ああいう人が増えればいいのにと願わずにいられない。


 どうも女の人の『かわいい』は男のそれと違うらしく、私には女子界隈でもてはやされる『かわいい』女の子はガリガリに痩せ細った死にかけの鶏にしか見えない。可愛いどころかアンデッドみたいで不気味にすら覚える。足とかマジでスケルトンだし。あれ栄養失調引き起こしてるんじゃね?


 やっぱり健康的な肉付きは必要だということを彼女らは認識するべきだと思う。なお、非常に残念なことにそのおねーさんは【検閲済み】駅において特急に乗り換えてしまった。ちくしょう。


 研究室への到着は0930くらい。交通機関の乱れからか今日も人は少ない。井浦は三時間以上かけてこっちに来たって言ってた。駅ひとつ通過するたびに非常停止ボタンが押されてろくに進まなかったそうだ。線路内に机が投げ込まれたとも言ってたし、相当ひどかったのだろう。


 午前中は例によって例のごとく学会のスライドを進める。図やグラフの修正なんかをぼちぼちとやって、昨日指摘されたところを口頭でいい忘れないように心にとどめた。


 なんやかんやと作業していたらこもりんがやってきた。で、貼り付けてあった仮配生の顔写真をみて『こいつ、エセザイルって呼んでたんやで』と涌井くんを指す。


 なんでも、新人研修旅行のときにおひげを生やしているのが彼だけで目についたらしく、エグザイルっぽいから大海先生だったはずがそう呼んだらしい。


 『エセザイル』という日記メモをみた羽鳥らが『その時の話ナマで聞きたかった!』って言ってた。新たな名言が生まれる瞬間に立ち会いたかったのだろうか。


 その後、こもりんはいかに一昨年の仮配生、すなわち播磨さんたちの代がすごかったかを語る。今年の仮配生はイマイチびびっとこないらしい。


 私たちの代をスルーしたのはどういうことだろうか。主席、次席、ナンバーファイブがそろってるんだけど。トップファイブの三人がいるってすごいことじゃないのか? 


 一昨年の方が凄まじかったと言われればそれまでだけど、比較基準が高すぎるということにも気付いてほしいものだ。


 そうそう。そのあと山岸が『実験値は取れとるのか?』とせっつかれていた。どうも治具を作った段階で止まっているらしく、いつも通りありがたいお話が始まる。


 関係ないけど、この日記メモをみた多くの人間から『「せっつかれる」って何?』と言われてしまった。別に方言でもなんでもないはずなのになぜだろう。普通に日常会話で使うと思うし、私だって当たり前のように使っているんだけど、もしかして今まで通じていなかったのか?


 実験と言えば、サーボパルサーから周期的にウミネコの鳴き声みたいな変な音がしていた。機械音にも似ていたけど、どうもそうじゃないらしい。何かがこすれるような音にも聞こえたけど、結局原因が分からず途中で実験をやめ、そのあと無視して続けたっぽい。詳しくはしらん。


 午後も修正&発表の繰り返し。面倒だから書くのは省く。あと、羽鳥、青松、柳下、銀さんは途中でソフトボールの練習をしに行ってた。羽鳥は投げ方も打ち方も変だった……とは青松の談。ボールを三本の指で握るんじゃなくて、わしづかみにしてしまうとのこと。


 そうそう、今日は衣笠先生の独身最後の夜らしい。明日の午前中に奥さんと一緒に婚姻届を提出しに行くそうだ。


 なお、明日は衣笠先生の誕生日でもある。たしかプロポーズしたのが奥さんの誕生日だったんだっけか? 


 誕生日と結婚記念日が一緒だとお祝いするとき被っちゃってちょっともったいない気がするけど、これはこれでいいのだろうか? 11月22日がいい夫婦の日で人気あるって聞いたけど、さすがにそこまで待つわけにもいかないだろうし。


 どうでもいいけど、十二月生まれの人ってクリスマスと誕生日一緒にされてプレゼント一個しかもらえないらしいね。その点私は【検閲済み】が誕生月だからちょっとお得な気分を味わえる。


 あ、意外なことに八月も祝祭日ないんだってよ。夏休みない人にとっては地獄だよね。


 ちなみに、これで衣笠先生と卒研生はぴったりじゅっこ違い。私らが生まれた年に衣笠先生はナウなヤングの小学四年生。たしかあのころは冷夏の影響で米が不足しタイ米が出回っていたと思う。時がたつのは早いものだ。


 だいたいこんなもんだろうか。ずいぶんと長くなってしまった。が、二十分程度で書き上げられたように思う。書き始めのころは十分だったことを考えるとそれでも十分に長いけど。


 読み返してみたら研究のこととか全然書いてない。まあ、研究日誌じゃないからこれでもいいか。あ、羽鳥は今日からお泊りで実験するんだって。

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