4月3日 はじめ
本書は、20??年4月~20??年3月のとある大学の研究室での日常を、ある有志の学生が綴った日記をもとに小説化したものです。小説化にあたり、いくらかの変更点を加えたため、あくまで実話をもとにしたフィクションであり、実際の人物及び団体とは一切関係ありません。
──試験片、作らなきゃ。 【ハニカム班】
4月3日
今日から念のため、あいつを見習って日記をつけておこうと思う。記入日は4月3日となっているが、実際の記入は4月6日であることを記しておく。帰る前に日記をつけることを習慣づけておけばあとでいろいろ便利であると信じたい。
研究初日はガイダンスだった。研究室での決まりなんかを確認し、係決めをする。都合により羽鳥が出席できずに選択権を一任されたので、小森先生の提案(と少しの悪ふざけ)でコンパ係に任命してやった。面白そうではあるけれどなかなか面倒くさそうな絶妙なポジション。いい仕事をしたと思う。
あと、大海先生直々の指名があったので幹事になってしまった。仕事が楽だとうれしい。道連れに柳下を副幹事にしておいた。きっと頼りになってくれるだろう。
研究室でのルールに『研究室でのゲーム禁止』というものがあった。ほぼ形骸化している。むしろ、先輩たちが研究室でゲームをしていなかったのを見たことがない。
実際、先生たちもある程度は認めているようで、少なくとも隠すそぶりを見せれば突発的に『忘れっぽくなる』ようだ。その辺は口酸っぱく言われた。五時以降なら先生たちも帰っていることが多いので、親睦を深めるという意味でやっていても多少は大目に見てくれるらしい。
そもそも、ゲームをしてはいけないのはいずれギャンブルにつながるからだそうだ。過去に大海先生はブチギレしてマージャンを粗大ゴミに出したことがあるとか。
また、基礎材料研究室では生徒たちがダーツをしていたところをある先生が発見。『俺も混ぜてくれよ!』から『お前ら遊びに命かけてんだろ!? 研究室に来てまでも遊びたいんだろ!? 単位よりも遊びが重要なんだろ!? ちゃんと遊びに命かけろよコラァ!』(意訳)となり、遊んでいた生徒をダーツの的にしようとしたとか。超怖い。名前が言われなくても誰の話かわかるところが特に怖い。
その後、研究室に戻ってタイムカード等のもろもろを済ませた。あと大学院進学ガイダンスにも出た。意外なメンツと知り合いが多くてびっくりする。専攻履修の手続きが面倒くさそう。この大学は一度システムを刷新するべきだといつも思う。
研究の先行きはまだ全然見えないけどなんとかなるだろう。今までみんななんとかしているみたいだし。
20180513 エピグラフ(その月の名言的な言葉)を前書きに追加。