その笑顔は卑怯だと思う
「どうしてエリーは、井戸水を使うの?魔法って便利なんでしょ。」
「魔力は自然と湧き出るものではない。食べ物から少しずつ摂取しているんだ。」
「どうしてエリーは、歳をとらないの?」
「魔力が蓄積されている限り、不老の呪いがかかっているんだよ。」
「どうしてエリーは、人間を食べるの?」
「人間はこの世界でなによりも魔力を含んでいるからね。たくさん魔力を摂取できるんだ。」
「どうしてエリーは…」
「ギル。疑問を持つのはいいことだが、少し休ませておくれ。」
毎日、ギルの疑問は途切れない。
それだけ無知だったのだ。だが、文字は教えたので本は読めるはずであるのに、よく質問をしてくる。
嫌がらせとしか思えない。
ギルは、大きくなった。10歳になったばかりだ。
拾ったあの日から、もう四年近く経っているのに、一向に美味しそうにならない。
「エリー。ご飯できたよ。」
私のする事なす事に興味を持ち、すぐに色んなことを覚えていった。私のいろんな仕事を、ギルは取り上げてしまうのだ。
それも、完璧な形で。
「今日も…おいしいよ…。」
別に悔しくなんかない。楽ができているんだ。私より美味しい食事だって作れるし、掃除だってうまい。何度も言うが、悔しくはない。
「よかった。今日はエリーの好きなシチューだもんね。たくさん作ったからね。」
ギルは、どうやら私を太らせたいらしい。おかしい。私がギルを太らせるはずだったのに。
しかし、にこにこと嬉しそうに、平らげたばかりの皿を奪い取って大盛りにシチューを注いでいるところをみると、何も言えなくなってしまう。
「はい、たくさん食べてね、エリー。」
ギルの笑顔は、魔力があると思う。