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紅火

こしふりだんす

中央塔の屋上。そこに私達4人は集まった。

下を見下ろせば、狂気に当てられたかの様な住民が殺気を漂わせて騒いでいた。


サッ…と薫が1歩前に出た。


「お前らッ!自由を奪い取るために!それだけのために死ねるかッ!!」


ウオーッ!!と下の住民は叫びをあげる。


「ならば死ねェ!!自由のために!!この清龍のためにッ!!」


「ハッ!イカレんてんな、この街はよォ?」


玄は鼻で笑った。


「だけどそれが僕達の街で、故郷で、かけがえのないものだから」


青葉は微笑んでいた。


「雀さん、この戦争の勝利は僕にかかってます」


青葉は私を真っ直ぐ見た。

彼の腰に提げた軍刀がゆらりと揺れる。


「雀さん、必ず生きて戻ってきます」


「ああ…、青葉…もしあんたが無事に戻ってこれたら…」


その時は私と…。


「私たちにとってこの清龍は太陽だ…!!」


薫は胸のあたりで拳を握りしめて静かに唸る。


「お前らは…どうせ死ぬだろう…でも…!それでも!!どうせ死ぬのなら!この清龍を、故郷を!!守って死ねッ!!」


そして薫はその拳を天高く振り上げた。


「お前らァ!!手を挙げろ!!」


玄、青葉、そして私も拳を上に突き出した。


「殺しまくれ!英雄になるためにッ!!!!」


薫はそう言って中央塔から飛び降りた。


私たち3人も飛び降りる。


バシュン!


中央塔から四方の塔へ鉄線が撃ち出される。


その鉄線に着地した。


そして0コンマ遅れて清龍の外壁から無数の鉄線が中央塔に撃ち出される。


さて…今のところは作戦通り…。

あとは下の住民が牽制し、逃げながらこの鉄線に横線を足していく。


私は私のやるべき事を…!!





この作戦は約1年前から計画されていた。

当初はもっと時間のかかるものだった。


「ちょっと私について来い、雀」


楼莉との組手、というか私が勝手に本気になった喧嘩の後、薫は私を連れて清龍の中央塔に来た。


高いな…。


天を仰ぐ程の塔、50階はある。


地下への階段と上への階段。


薫は上への階段を上がる。


「地下には何があるんだ?」


私は薫について階段を上がる。


「んあ?あぁ…畑だよ」


「畑?!地下にか?」


「上には作れないし、しょうがなく下にな」


「そこでここの住民達の食料を…」


「まぁな…食料以外にも作ってるけど…」


薫はそこで言葉を飲み込んだ。


「食料以外って?」


「ん、香草を少しな…」


聞いたことがある、清龍はお金を外部から得るために麻薬を栽培している…と。


「そう…」


私は曖昧に相槌をうった。

ここで麻薬の話を追求しても意味もない。


にしても…。


「ここ何階まであるんだ…」


かなり登っているはずだが、未だに目的地には着いていない。

息こそ切れてはいないものの、かなりしんどい。

薫は澄まし顔で登り続けている。


バケモンかよ…。


なんて鬼が言ってみる。


この塔には各階に部屋が1つあり、その大きさは分からない。


「中央塔は清龍で1番高い塔でな、115階建て」


「115階!?」


「地下10階を含めるけどな」


いや確かにかなり高い。

だが、それだとおかしい…。


「この塔の高さ的に50階がいい所じゃないか?」


「あー…ちょっと言葉だと説明しづらいんだが、1階の天井が3階の床なんだ」


んーわからん…。


少し困った顔をしたからか、薫が笑った。


薫が笑ってる…!!


「1階から階段で上がると2階に着く、2階は1階や3階の向かい側にあって高さは1階と3階の中間にある」


「……なんとなく…わかった…?」


結論、分からない。


「まぁ2階は別名1.5階ってことだな」


ああ、なるほど今のでわかった。

そもそも奇数階と偶数階は同じ列に無いのか。


「やっとなんとなくわかった」


「そりゃ良かった」


「ところで今何階…?」


薫は少し考えて。


「87階ってとこだな」


「目的地は…?」


「114階」


ふざけるなよ。





「着いたな」


114階、さすがに息が切れる。


「死ぬかと思った…」


死なないけど。


部屋のドアを開き、薫が暗い部屋の中へ入っていく。


そのあとを追って部屋に入る。

薫がカーテンを開いた。


「わぁ…」


清龍全てが見える。


「いい眺めだろ?」


薫は私の肩に手を置いた。

私を敵視しているのか、もはや分からない。


「さて、頼みたいことなんだが…」


肘掛付きの椅子に胡座で座り込む薫。

近くのテーブルに置いてあった帳簿と鉛筆を持って私に尋ねた。


「第1前提で死なないんだよな…?」


「あぁ…」


「この清龍には井戸が230個ある…」


ふぅ…と息を吐いて目をつぶる。



「どこからその水が来てるか、井戸の中に入って辿ってくれ」


なぜ…?


「やるのは構わない…が、理由を教えてくれ」


私としても危険なことには遭いたくない。

たとえ不死身だとしても、だ。


「お前をここに呼んだ理由はわかるか?」


「疫病調査、またはそれの治療」


元々私の病気が見える能力を使って行うつもりだった。


「私は疫病の原因が井戸にあると思っている」


「…」


薫は凛とした雰囲気を壊さず、それでいて殺気を漂わせている。


「井戸の先に疫病の原因、そして真実があるような気がするんだ」


「そこへ私一人で行けと…?」


「流石にそんなことはしない、私と連れを3人連れていく。お前の不死性を見込んで頼むのは、私を含む4人が何かしらの理由で使えなくなったときだ」


「つまり…?」


「井戸の先を見届けて、地上に伝える役目をしてほしい」


つまり薫達が井戸の先で疫病に急速にかかった場合に機能しろと言うことか。

たしかに、(やまい)からくるものならば私に効果はない。


「報酬は?」


善意(タダ)でやる気はさらさらない。

何かしら貰わなければ意味が無い。


「…」


薫は少し考え、そして発した。


「………原始の紅玉(ルビー)だ」


……ッ!!


声にはしないが驚いた。

まさかここに…あるなんて…。


「の、乗った…はは…」


変な笑いが出る。


「よし、今からお前は清龍の住民だ。命懸けでも守ってやる」



原始の紅玉(ルビー)…。


この世界が創られ、大地とともに現れた…。


原始の七希石の一つ…。

溢れる厨二病。

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