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神様失格

忘れる前に書かんとぉ…忘れる前にぃ…


そうして私は眠りについた…。

(ダメじゃねーか)

「雀ちゃん、今頃清龍でどうしてますかねー?」


「集団リンチ」


「あなたそれでも神ですか…」


雀が清龍に向かい、1日が経った昼下がり。

私は肘掛け椅子に腰掛け、幸は縁側外にいた。

きっともう雀は清龍に着き、調査を始めているだろう。


幸は庭と言えるか分からないくらいの庭で洗濯物を干している。

私はこれで5回目の本を読んでいた。


「でもまぁ麻薬栽培も盛んと噂だ、おかしくなってしまった人が雀を殺してもおかしくないだろう?」


「そこに知ってて送ったんですか…」


「まぁね…」


「ホントに神様ですか…」


幸は呆れた顔をして作業を続ける。

私は文字を読まずに行に沿って目を動かしているだけだった。


「永蓮様は1年前、どこで雀ちゃんを拾ったんですっけ」


幸は私の着物を振りさばき、物干し竿に通す。


「あー…この山の熊地帯だな」


「また危険なところで…」


「ああ、右腕無かったなあの時、喰われたんだろ」


「え」


幸は手を止めた。

私はふふっと笑い、本を閉じて頬杖をついた。


「まぁ、彼女は不死身だからね、会って数分で右手を生やしていたよ」


「鬼ってホントすごいですよね…」


「そうかね?」


「ええ、私たち人間は所詮、劣等生物なんですよ」


幸は考えながらため息をついた。


「雀ちゃんは優しいじゃないですか、だからまだ怖さは感じませんけど、もし悪い人が鬼になってしまったら人間なんてすぐ絶えてしまう」


「それは無いよ、幸」


私はまた笑う。


「鬼の存在は人間に依存する、それは妖怪も神も同じさ。もっと言ったら鬼は地獄の役人をしてるからね、なおさら密接さ」


少し不思議そうな顔をする幸。


「なら何で寿命が長くて、不死身なんです?」


「あー…あれはね、人の悪いところも良いところも知ってもらわなきゃいけないし、鬼とバレたら迫害され殺される。そのときに厳しさも覚えてもらわなきゃいけない」


「そんなことしたらなおさら人間を殺してしまうんじゃ…」


「鬼になれる資格はね、とびきり優しくなくてはならないんだ。雀ちゃんは取っ付きにくいけど優しいだろ?そういう人が鬼になってしまうんだ」


「それは少し悲しいですね…」


「普通に生きられないことだろう?」


「はい…」


「神が与えた試練、そして試験だからね。まぁ可哀想ではあるよね」


私は変わらず微笑んだ。

幸は、昔あんなに刺々(とげとげ)しかったのに、優しくなったものだ。

私は髪飾りを人差し指でいじりながら幸を眺めた。


「人間は弱いですね、永蓮様」


「あぁ、弱い。そして誰も勝てないくらい強い、成長を止めないただ一つの種族だと思うよ」


「永蓮様みたいな神様には負けますよ」


幸は笑って洗濯物を干していた。


私達人間は弱い、弱いんだ。


「まぁ我々人間は弱いからこそ神を超える成長を見せるのさ」


「永蓮様は神様でしょう?」


幸に言われて笑った。


「私は神様としては失格だよ」


幸は首を傾げた。


干していた洗濯物が風に揺られていた。


ども、土野絋です。

さてさて、完全に本編に入る前に少し永蓮&幸サイドをチラ見せしようかと思いまして笑

幸の過去もそのうち紐解きますよぉ…。


さて次回は本当に本編に入っていきます。

お楽しみください!

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