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無敵の劣等

お久しぶりですね。

え、この小説の存在?

おぼえてるにきまってるじゃないですかー

「準備はいいか?」


薫は私と楼莉の間に立ち、静かに聞いた。


「おっけー!」


元気よく楼莉は答える。


「私も準備出来てる」


和服に比べ、この洋服は動きやすい。

10歳の幼女に負けるわけが無い。


「そうか…」


薫は静かに反応する。


「ところで雀」


薫が私の方を見て言う。


「楼莉に怪我させたら、殺す手前まで殺るわよ」


どんなプレッシャーだよ。


「それでは…始めっ!!」


さて、まずは相手の出方を見て…。


「いっくよー!」


タンッ…。


速い…!

元々私の腰より少し高いだけの背丈、目で追いづらいうえに、速い。

これは…。


「はっ!」

楼莉は瞬間的に私の右横腹まで移動し、最初の一撃、掌底(しょうてい)を放った。


私はそれをギリギリ半身でかわす。

かすったかもしれないくらいのギリギリ。


「っらぁ!」


私も負けてはいられない。

半身で避けながら右手の裏拳。

私に武道の心得はない、だが街のチンピラなら2人まで相手はできる。


大きく振った右手は楼莉の右頬を狙った。

その時少しの思いが出た。


こんな小さい女の子、殴れるわけ無かった。


その一瞬の躊躇。楼莉は見逃さなかった。

裏拳を後ろへ飛び下がって避け、着地した瞬間に前傾姿勢をして地面を蹴る。

そのまま正拳突き。


ゥグッ!


腹にクリーンヒット、痛い。

10歳の幼女の癖に、成人男性並の力かもしれない。


「まっだまだぁ!」

つづいて次擊。


避けれ………ない!!


さっき外した掌底。

それと同じものを右腹のやや下の角度から喰らう。


トン…。


痛くない…?

確かに衝撃はある。全くダメージが来ない。

手を抜いた?


それをいい事に私は肘で頭を狙う。

4割くらいの力で。


ゴンッ!


4割でも普通に痛いはず。

案の定、喰らった後に後ろに下がり左手で頭を押さえている。


そして、薫の視線が厳しい。



さて、こっちの番だ!

走る。たった5mを走ってそのまま掌で押し倒す。


はずだった。


っ!


感覚が鈍い。

足が動かない、むしろ崩れていく。


なん…で…。


膝をつき、うずくまってしまった。






「ありゃァ…楼莉、やりやがったな…」


玄は腕を組み、呟いた。


「うん、たぶんしばらくは動けない」


僕はその呟きに答える。


「あの掌底は雀さんの右腹部に、しかも下からあばら骨の中を狙っていた。あの場所は…」


「肝臓だ」


薫が何故か得意気な顔で腰に手を当てて言った。


「薫、もしかして…」


「そうだ!私が楼莉に教えた!」


またえげつないことを…。


肝臓は人間のエネルギーを貯蔵しておく場所だ。

そこを掌底という身体内にダメージを与える攻撃方法。


「雀は今、意識も朦朧(もうろう)としてるな」


薫は変わらず、得意気な顔だった。





動けない。

思考が頭の中で制御出来ない。

叫びたい、でも叫び方も忘れてしまったみたいで。


「くぅ…」


情けない声しか出ない。


「おねーちゃん、わたしのかちだよ」


楼莉の可愛らしい声、に恐怖すら覚える。


幼女に恐れをなす、私。


わたしは…。


私は…。




私は…死なない…。




それは安心だった。

その後ろ盾が、私を動かす。


ダンッ…。


着いていた膝で地面を蹴る。

少しだけ宙に浮く。


ありったけの全力を…この両手にッ!!


その両手を振り下ろし、地面に手をつける。

そして、地面をずらす。


この異常な感覚は、私だけのものだ。


実際は地面はずれていない。

私が両手2本で地面を使って、宙に浮いたまま進んだだけ。


ただ全力だ。

瞬間的に筋肉の全ての力を使う。

人間は全力で筋肉を使った場合どうなるか。


骨が砕ける、のだ。


激痛に耐えながら、走っているのと変わらないスピードで楼莉に頭から向かう。


そして心から願った。


避けろ、と。



渾身の頭突き。

泥臭い戦い。


劣等でしかない私は、不死身という無敵を持っている。


それが私の流派(スタイル)


バチンッ!


何かに当たった。

楼莉の手だろう。


私はそのまま地面に落ちて、動けなくなった。


「いたい…」


薄目を開け、楼莉を見る。

左手を眺めている。


なんだ、かすったけど避けれたのか…。


私は起き上がった。

両手の骨は砕けているがあと何分かで治る。


負けだ。


私は弱い。


10歳の女の子にすら清龍では勝てないのか。




「雀、あんた根性はあるんだな」


薫が澄ました顔で言う。


「決めた、ちょっとお前、疫病調査ともう一つ頼みたい」


腕は半分治っていた。

ども、土野絋です。

さて、次回は清龍の本当の今の状況が分かります。


お楽しみに!(いつになるか分からんけど)

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