“わこ”と“さり”
んあー眠い
最近アンダーテールにハマってます。
「青葉さん!こっちです!!」
小走りで私は青葉について行く。
「で?本当に私みたいな鬼を野に出して言い訳?」
後ろ姿しか見えないが多分笑っているのだろう。
「…まぁ、大丈夫じゃないですか?」
何を笑っているのか…。
移動していると、この街はとても不思議な形をしているのがよく分かる。
「なあ?この街って漢字の“田”みたいな形してるだろ?」
「お、よく分かりましたね」
「私が殴られたあの部屋の窓は大体この街の中心っぽい所を向いてたからな」
窓から見えた景色は十字路の角からで、そこから真っ直ぐ直線の道が二方向に伸びていた。
そしてうっすらと清龍城塞の一つの特徴とも言える、清龍全てを囲む壁が見えた。
「まだその子どもの所には着かないのか?」
「そうですね…どこで倒れたんですか?」
青葉は案内してくれている男に尋ねた。
「大体、北塔エリアの東側3階です」
「…だそうですよ、雀さん」
「もうわかんねぇな」
「清龍は複雑どころか道なんて中央十字路以外ほぼ無いですから」
やっと十字路にでる。
つまり中央だ。
「ここからこのドアを通って北塔エリアに入ります」
青葉が指さしたドアはただのアパートの入口だった。
「アパートじゃん」
「北塔エリア…それ以外のエリアには道がほぼありません。あるとしたら人が一人通れるかどうかの路地です」
ちなみに雀さんを運んだ時はそこを通りましたよ、とすました顔で青葉は言った。
アパートの3階屋上まで階段を駆け上がり、屋上の扉を開ける。
ここから連絡通路が伸びていて…なんていう景色は無かった。
「雀さん、何立ち止まってるんですか」
青葉と案内人が首を傾げる。
私の口から勝手に言葉が漏れる。
「いやこれ…」
屋上には物干し用の太めのロープが各建物の屋上に繋がっていた。
「綱渡りじゃんかよ!」
青葉は少し困った顔で
「この街は面積に対して人口が多すぎるんです。だからこうするしか通路を作れなくて…」
「屋上に連絡通路を作ればいいじゃんかよ!無理だよこんなの死ぬわ!!」
「死なないじゃないですか」
真顔で青葉は言った。
「痛みはあるんだよ…」
「え…」
驚いた表情を見せる青葉。
「じゃなきゃ薫…だっけ?そいつの打撃もモロに食らってないよ」
少しぶっきらぼうに答える。
「ああ…そうなんですか…」
真顔のまま青葉は顔を行く方向に向けた。
「この街は少しいい加減に作りすぎたんです。屋上の高さもばらばらで連絡通路が作れないんですよ」
平坦な口調で喋り、こちらを向いて青葉は笑った。
「安心してください。ここではみーんな楽々ここを通っていきますよ」
「お年寄りもか?」
私は半笑いで冗談を言う。
「お年寄りもです」
青葉はそう言うと案内人の男と共にロープを走って渡って行った。
「マジかよ…」
とにかくロープを渡る。
揺れる。
「無理!」
私はロープ目の前に棒立ちになった。
するとロープの向こう側にいた青葉は私の元へ引き返して来た。
「慣れるまで難しいかもしれませんね」
と言って私を足から抱き上げた。
…っ!!
ちょうどお姫様抱っこのような形。
「ちょっ、ちょっと?!」
「子どもの病気が先です。しっかり捕まってくださいね…!!」
青葉はとてつもない速さで走り出した。
お姫様抱っこでも振り落とされそうになるくらいに。
私はとにかくしがみつくのに必死になった。
大体5分ほど走ると止まった。
「青葉さん…はぁっ…!速いですよ…!!」
案内人の男を追い抜かして走っていたようだった。
しがみつくのに必死すぎて気づかなかった。
「ごめん、ここかな?」
「はい、ここの3階です」
「雀さん、ここの階の1つ下にあの男の子がいるようです。行きましょう」
階段を下ると2人の女性がいた。
短髪で茶髪の女性と長髪で白に近い金髪の女性。
2人とも花魁のような着物を着ている。
男の子は短髪の女性に抱き抱えられていた。
「遅かったね」
短髪の女性は言った。
「すみません、沙里さん」
青葉は軽くお辞儀した。
「とりあえず今流行ってる感じの病気じゃないよ。重めの熱か胃腸炎ってとこかね」
長髪の女性は腕を組みため息混じりに言った。
「ありがとうございます、和琥さん」
彼女にも青葉は軽くお辞儀する。
「多分寝かせりゃすぐ治るだろうさ」
沙里はそう言ってベッドに男の子を寝かせた。
「ああ…それでなんですが、雀さんに治して貰おうかと思って」
和琥は私を見た。
「ああ…今朝食おうとした鬼娘か」
興味無さげに言って男の子を指さす。
「病喰いの鬼か珍しいねぇ…」
そう言いながら沙里は顎に手をやり頷く。
「和琥さんと沙里さんは知ってたんですか?」
青葉は少し驚きながら聞いた。
「そりゃな?」
和琥は得意げに答えた。
そして2人とも同じことを言った。
「「何でも知ってるからね」」
和琥は笑い、沙里はため息をついた。
「コイツの変なノリは気にせずやってくれよ」
沙里は和琥を指さし、また一つため息をついた。
「雀さん、早速やってくれますか?」
和琥と沙里のやり取りを見て呆気に取られていたが、青葉の言葉にハッとする。
「…ああ、分かった」
手初めに目を凝らす。
目を凝らせば…。
男の子の喉元に真っ黒なトカゲが走った。
このトカゲが病気だ。
「見つけた…」
そーっと手を首元にかけ、眼でトカゲを追いながら口を近づけた。
…………今だっ!!
首元にかけた手でトカゲを掴み開けておいた口に放り込む。
「手で掴めるなら口を近づけなくても…」
青葉がつっこむ。
私はトカゲを口の中で噛みながら答えた。
「ふぁやくひはいとひげられふ」
「何言ってるか分かりませんよ…」
言われて急いで飲み込む。
「ごめん、早くしないと逃げられるんだ」
「逃げる?」
「そそ、大体他人の手に渡って2秒ほどで宿主の所に強制的に戻る。何故かは分からないけど」
「へぇ…そうなんですね…」
「お、顔色が良くなってきたな…」
和琥が男の子の顔を見て呟く。
青葉と2人で顔を覗くと、確かに血色が良くなっている。
「これが…鬼ですか…」
「ああ、私は病気を食べるタイプ、悲しみとか感情を食べる奴もいるらしい」
へぇ、と青葉が頷く。
「人を食べる鬼はいないよ」
沙里も補足で説明する。
「鬼ってのは地獄の役人でな、人間から選ばれる。寿命はきっかり150年、人間にも妖怪にもなれない半端な奴さ」
建物の屋上に出て青葉に私は尋ねた。
「あの…和琥と沙里って奴。何者なんだ?」
「あの人達は元々ここに住んでいる人では無くて…今も外で怪しい仕事してますよ…」
そう言って青葉は気まずそうに顔をしかめる。
「怪しい仕事ってのは…その…イヤラシイ感じの…?」
私も少し顔をしかめて聞いた。
「まぁ…そんな感じの…」
2人とも顔をしかめてロープを渡って行った。
「やっぱ綱渡りできねぇよ!!」
「手、貸しますよ…」
「あっ…ごめん…」
「あっ…」
ドサッ……。
金髪をかきあげ、和琥はニヤニヤしながら言った。
「さて…この街に鬼が来るとは…波乱の幕開けかねぇ…?」
「さぁ、どうかな。和琥も何となく気づいてるかもしれないが、あの少女は鬼っぽく無かった…」
「確かにねぇ…」
和琥と沙里は北塔エリアの路地を歩く。
「おい!ネェちゃん!!」
後ろから顔を真っ赤にして酔った中年の男が千鳥足の状態で2人を呼んだ。
「ん?」
和琥が振り向く。
「昨日みたくヤッてくれよ!」
沙里は小さくため息をつき、呟いた。
「仕事だ」
和琥は笑って指を鳴らす。
「あら、またイカされたいの?」
和琥は少し妖艶な口調に変える。
「あんたも好きだねぇ…」
沙里も色っぽく劣情を煽る。
その二人は余りにも妖しくて、怪しくて。
まるで化かされて馬鹿にされているみたいだった。
ども土野絋です。
ファンタジーの世界観をそれとなく説明するの難しすぎるでしょ。
これ一応和風チックな世界観なんですけどね…。
(詳しく言うと和風と中華風がごっちゃになってます)
後、和琥と沙里は綺麗なお姉さんです。
次回「喧嘩上等」
ロリが出ます。