即発
とりあえず書き溜めて置いたものを投下。
またしばらく更新出来ないかもしれません。
テストもレポートも鬼のようにやって来るぅ…。
雀さんを運び入れたその夜。
僕と薫と玄の3人で彼女について話し合っていた。
ちなみに薫と玄はこの街の自警団でもある。
「あの女は…どうすんだ薫…」
「雀って名前の子かい?こっちが変な動きをしなけりゃ何もしないと思う…が」
薫は少しため息をついて
「正直、不安材料しかないな…」
「僕は雀さんが人喰いの鬼には見えなかったよ」
これは本当にそう思った。
そもそも鬼が清龍に来る必要が無い。
「確かに、変ではあるんだよなァ…」
玄は答える。
「ってか、青葉はあの子のことさん付けなのね」
薫が腕を組みながら俺に言った。
「しっかしなぁ…何が変って清龍に来たことなんだよなァ…」
「それは私も思った。いくら鬼でもここに来るのは少し自殺に近いわ」
自殺に近いのはどういうことか。
それは清龍の住民の構成にあった。
清龍の住民は約10万人。
そのうちの約7%が60歳以上。
また約20%は15歳未満。
残りの約73%は15歳以上、60歳未満である。
問題は清龍の兵力。
単純に計算しても7万人は戦うことが出来る。
しかもただの素人の集まりではない。
清龍の住民のほとんどは兵隊あがりなのだ。
つまり純粋な兵力が7万人ある。
例え不死身の鬼でも再生能力を超える兵力がうちには存在していた。
そもそも清龍に何故こんなに兵隊あがりがいるのかということもあるが、これは30年前の開国にルーツがある。
30年前、開国派と鎖国派に意見が割れ1年ほどの内戦があった。
その際に駆り出された兵のほとんどが内戦が終わると同時に切り捨てられた。
その兵隊達が集まり、作ったのが清龍城砦なのだ。
「あぁぁぁぁぁぁ!!もう!原因不明の疫病は流行るわ、鬼娘が清龍にくるわ!どうすりゃいいんだよ…!」
珍しく薫が狼狽えている。
「とりあえず、鬼はどうにでもなる。疫病の方が今はやべぇ」
玄は薫が機能しない時に冷静になる。
「そうだね…あの疫病はどうにかした方がいい…」
僕はむしろ疫病を主体に調査するべきとすら思っている。
「ん…確かに、今は疫病が先だ。なんだあの症状、皮膚組織の一部が海綿状になる病気なんて…」
薫の言葉は頭を抱えていた。
僕も一切見たことのない症状だ。
「しかも、それが町の中心部から広がってやがる。今は確か…感染者20人か…?」
玄の声色はいつもより重く、深刻さが伝わる。
はぁ……、と3人はため息をついた。
朝。
薫は雀の部屋をノックして、雀の調子を見に行った。
鬼娘…何も問題を起こさなきゃいいが…。
2回ほどノックしたが中からの応答は無かった。
「…?」
私はおそるおそるドアを開けた。
雀はベッドの上に座っていた。
彼女の足に向かい合って座るように近所のガキがそこに居て。
雀はガキの両肩を掴んで大きな口を首元に運ぼうとしていた。
雀の目はどこか紅く、ギラりとしていた。
その姿はまるで、鬼が人を喰うような…。
ブンッ…
思考を追い越して薫の右拳は雀の右頬を狙っていた。
「本性表したかァッ!クソがァッ!!」
薫はいつもの怒号とは確かに違う殺気だった声を上げた。
「なっ!?」
驚いた声を上げて雀はガキをベッドに倒して、上に跳び上がった。
薫の右拳は空を切る。
そして雀は天井の梁に掴まって言った。
「いきなり何すんだよ!!」
「うちのガキ喰おうとしといてよく言えるな…!!」
はぁ?と雀は言うと少し眉をひそめた。
「あっ…それは誤解だ!!」
ふざけてやがる…
「どっちにしろ、てめぇの話は殺してから聴いてやる!!」
そう私は叫ぶと上に跳んで、蹴りを雀の顔面にあびせる。
「のっ…!」
もろに食らった雀は壁に飛ばされ背中を強打した。
「殺すまでやるぞ…」
頭の思考が尖っていく。
「薫?!どうした!」
青葉が走って部屋に入ってきた。
「いいとこに来たな…コイツ近所のガキを喰おうとしてやがった…!」
手伝え、即刻殺す。
そう言うと、私は立ち上がろうとする雀にゆっくりと歩いて拳を鳴らした。
殺る…。
足先に力を込める。そして解放。
雀に向かって一歩で飛ぶ。
バンッ…。
床の板が大きくめり込む。
その勢いのまま雀の頬を右拳が振り抜いた。
殴られた方向に彼女は少し飛んで、うずくまった。
「薫、どう見てもその子は弱いよ」
青葉が私の肩に手を置いて言った。
「今なら拘束出来る、少しやり過ぎだよ」
ベッド上のガキは失禁していた。
ども土野絋です。
今回は清龍城砦について少し触れましたね。
まぁそれだけです。
後書きに特に書くことなかったわ。