不穏な空気と刀傷
忙しいよぉぉぉ…!!
バイトと学校とレポートと実習とぉぉぉぉぉぉ!!
だから更新が遅いのは勘弁してくれよ?
現在から約1週間ほど前…
「おい!またでたぞ!」
その症状は突然現れた。
「またか…今月これで5件目だぜ…?」
玄は真剣な顔で少し面倒くさそうに言った。
「発症した人はまだ少ないけれど、症状が症状だけに…」
僕も少し震える。
「ああ…気味が悪い…」
こういう時に強い薫でさえも少し震えているようだった。
僕達3人はその発症者の出た場所へ向かった。
その場所には数人の人だかりと十蔵のじいちゃんが居た。
「十蔵か、どんな感じだ?」
薫はマスクをつけながら発症者に近づく。
「全く同じじゃよ…この男は肩関節から発症しているようじゃ」
薫は肩にかかっている布をめくった。
肩関節は黒く変色しており、皮膚は海綿状となってボロボロになっていた。
「毎度酷いな…痛くないのか?」
薫は発症した男に尋ねる。
「痛みは無い…肩は動くしいつもと変わらない、でも動くと皮膚が落ちて肉が見えてくるのはキツいな…」
男は淡々と話した。
「そうですか…症状は他と変わりませんが、問題は皮膚が無くなることによる日和見感染が怖いです」
僕はそう言って包帯を取り出す。
彼の肩を覆うように巻き付ける。
「にしても疫病にはどうしても思えんのぉ…」
十蔵のじいちゃんはそう言って顎髭を弄った。
「そりゃどういうこどだァ?」
玄が相変わらず独特な喋り方でじいちゃんに尋ねる。
「うん、皮膚というモンはほぼ死んだ細胞なんじゃよ。死んだ細胞に影響を及ぼす疫病は何十年と医者をやっとるワシも聞いたことがない…」
もしじいちゃんのいうことが正しいのなら、この病気は一つの手がかりも無い状態になる。
「一応、私の方で疫病の専門家…というか病気の専門家に依頼したが、それも心許ないな…」
薫の弱い声にその場にいた皆が黙った。
そして現在…
「おっ!?青葉!女の子をおんぶして…お持ち帰りかい?!」
「違います…」
僕は街の門をくぐり、昼間から飲んだくれているオヤジ達に捕まった。
「その背中の赤髪の女の子は誰だい?まさか…さらってきた…」
「んなわけない無いでしょ!」
オヤジ達を流し、薫の元へ行く。
少し煙くて、狭い路地を通る。
この街は建物が密集しすぎてほぼ道が無く、路地を通って生活をしている。
鉄サビや鯨油独特の臭い。
いつも通りの道。
少し違うのは僕が外で行き倒れてた赤髪の女の子を背負っていることくらいだろうか。
「おい!!鯨油タンクの確認急げ!!」
薫の声だ。
25歳、165cm。
女性でありながらこの街の長である。
「薫!空きのベッドあるか?」
「おぉ!おかえり青葉!どうした!って…何?その女の子…まさかさらってきた…」
「違うわ!」
蒸気で動く機械の音に負けない声で否定する。
「どうしたァ?」
2階から玄の声が聞こえた。
玄はこの街の機械と鍛冶をやっている。
25歳、185cm。
階段から降りてきたようだ。
「薫、とにかく空きベッドあるか確認してくれ、この女の子倒れてたんだ」
とりあえず簡単に事情を説明し、空いていたベッドに赤髪の女の子を寝かせた。
「誰だこの女」
玄が太い腕を組んで言った。
「分からない、ただこの街の外で倒れてた」
「一応、十蔵のジジイ呼んできたぞ」
薫が十蔵を連れてきてくれた。
十蔵は顎の白髭を撫でてゆっくり歩いてきた。
十蔵はこの街の唯一の医者だ。
…たぶん医者だと思う。
「どれどれ…見せてみい…」
十蔵は触ること無く、瞬時に判断した。
「ただの空腹で動けんくなっただけじゃ」
「え、それだけ…?」
拍子抜けしてしまった。
「じゃあの」
そう言って十蔵はささっとと帰ってしまった。
まぁ、さっきまで意識あったし大丈夫だとは思っていたが、空腹ってすごい間抜けな…。
「とりあえずは良かったな」
薫は寝ている女の子の赤髪を撫でながら言った。
「ん?」
しばらくしてから薫が何かに気づいた。
薫はいきなり女の子の着物をはだけさせた。
「ちょっ!薫!やめろよ!」
「いや…この子…肩に刀傷が…」
薄目にして女の子を見る。
肩が出ている程度にはだけていた。
薫の言う通り、確かに肩に大きな刀傷が残っていた。
「そいつぁ…かなり前の傷だなぁ…」
玄が僕の後ろから覗き込み言った。
「袈裟斬りだ、しかも左肩から…薫、どこまで刀傷がある?」
着物をもう少しはだけさせようとして薫が動く。
着物に手をかける寸前で動きを止めた。
「あんたら、向こう向いてろ」
そりゃそうだ。
………………………………………
「いいぞ、こっち向いても」
薫の合図で振り返る。
「どうだった、薫」
玄が聞いた。
「信じらんないけど…肩から脇腹にかけて真っ直ぐいってる、しかもその傷が背中にもあった…」
それってつまり…
「この女ァ、1度胴体を真っ二つに分断されたことがあるってこったな」
それはこの女の子が鬼であることを示していた…。
「んん…」
目が覚めると知らない天井だった。
「うっ…」
とてつもない鉄と鯨油の臭いがした。
口を押さえた。吐きそうとまではいかないが、とてつもない臭い。
「あ、起きた?」
学童帽をかぶった青髪の少年が扉からこちらを覗いた。
「食べれる?」
少年はそう聞いた。
「う、うん…」
私の返事を聞くとその少年は大きな声を出した。
「カオルー!女の子起きたから、何か食べ物持ってきて!」
あいよー、と言う女性の声が聞こえた。
青髪の少年は私が寝ていたベッドの横の椅子に座った。
「気分はどう?」
「だ、大丈夫…ってか、ここどこ?」
「清龍だよ」
どうやら目的地には着いたらしい。
あれ…?
「私、どうして寝てるんだ?」
少年は笑って言った。
「倒れてたんだよ、この街の外で」
思い出した。
私、何も食べずに動いてたから倒れたんだった…。
「誰がここまで運んでくれたの?」
私は少年に尋ねた。
「あぁ…僕だよ、おんぶして運んだ」
…え。
「あぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさいいぃぃぃ!!」
私はベッドの上で正座して土下座した。
「いいから!大丈夫だから!頭上げて!」
「あんたなにやってんの…」
女性の声がした。
頭を上げてそちらを見ると茶髪の女性がお盆を持って立っていた。
「カオル!違うんだって!」
青髪の少年はその女性に軽く頭をはたかれた。
「あ、目ぇ覚めた?粥持ってきたからとりあえず食いな、食えるならおかわりあるから」
ベッド横のテーブルにお粥を置いてさっと帰ってしまった。
「今のが薫、この街の長だよ」
青髪の少年は叩かれた頭を自分で撫でて言った。
そして少年はあっ、と声を上げた。
「ごめん、俺の紹介がまだだった。僕は青葉、君は?」
「私は雀、朱羽雀」
「メーターどうだった?」
「問題ありません、大丈夫ですよ薫さん」
「そう、ならよし」
粥を運んだ帰り、問題なく火力発電が行われているか技術員に確認する。
問題は無い。
それより、問題は他にある。
赤髪の少女だ。
赤髪の少女については分からないことが多すぎる。
しっかし…あの鬼娘は何しに清龍に来た…
色々考えている時に玄が作業場のベンチで寝ているのが目に入った。
この野郎…呑気に昼寝しやがって…
せいっ!
痛ぇっ!!
とりあえずお盆で玄の寝ていた頭をぶっ叩いておいた。
ん…?そう言えば…疫病調査で来る奴って確かあのくらいの娘じゃ…
ども土野絋です。
今回は清龍城砦の人々の説明をしていくパートだったんですけど、なかなか入れる部分が無くて順序が変になってしまったかもしれないです。
直そうと思ったんですけどめんどくさくなったのでとりあえず更新します。(諦め)
次回は少し物語が動くと思いたいです。