その世界は終わっていく
この物語をやっぱり書きたかった。
だって3年以上温めてきたお話だしね。
さて、100%趣味と中二病でできたこの物語。
そう、この物語は最初から崩壊している。
「もうすぐ…完成する…!!」
「後は、この数式と特有のアルゴリズムを入力すれば…」
「よし…テストしてみよう」
1台のコンピューターに3人の男女が食い入るように群がる。
画面に映し出された無数の数式と、羅列する1と0。
テスト結果が出る。
画面に映し出された文字は
「success」
3人の男女はお互いを抱きしめあった。
「やった!これで…これで!!」
「「僕達は救われる!!」」
そして3人は1人ずつ人差し指をEnterキーに乗せた。
「「せーのっ!!」」
カチッ…………。
Now Loading……。
この世界は創られた…。
910年、日帝国は200年近い鎖国を続けていたが鯨油で動く黒船の来航により開国。
近代の文化により追いやられる妖怪は裏の世界へ逃げ、人間と変わらない姿形をした鬼は隠れながら人を喰らい生きていた…。
そして開国してから33年経った時、世界は大きな変化を遂げようとしていた…。
私達は産まれる時、ほとんどの自分の要素を選ぶことが出来ない。
性別、性格、身体的特性、思考回路…
例をあげればキリがない。
しかし、それらほとんどが産まれた瞬間に決まる。
それはもしかしたら、生き方ですら決められてしまっているのかもしれない…。
943年
「うぅ………」
私は道の真ん中で動けなくなっていた。
しかも不幸なことに、この道を通る人はほとんどいないらしい。
依頼された時そう聞いていた。
遡ること2日前…
「おい、お前さん宛に依頼が1通来ておる」
永蓮が低い声で寝ていた私を起こした。
「ん…?何ぃ…?」
目を擦り、自分の赤い髪をかきあげ、寝ぼけたまま尋ねた。
「いいから起きんか!」
また低い声で少し怒られた。
とりあえず起きて布団を畳み、永蓮から依頼書を受け取る。
「ありがと、永蓮」
永蓮は腕を組んで
「そう思うならもう少し早く動かんか…?雀よ…」
そう言うと永蓮はため息をついた。
永蓮は神である。
神に性別があるか微妙だが一応男。
人間であれば25歳ほどに見える。
とても美しい顔立ちで、背も高い。
白髪を腰まで伸ばし女性用の髪飾りを何故か付けている。
商売の神と呼ばれているが商売人からは人気がない。
理由は分からないが、永蓮自身が元々商売の神では無いと言っていたので複雑な事情があるんだろう。
今は人里離れた森の奥に建てられた社に住んでいる。
依頼書を開封し見てみる。
どうやら疫病調査のようだ。
「うわっ…」
私は思わず声を漏らした。
「どうした雀よ」
「いや…疫病調査なんだけど…」
真顔で永蓮は返す。
「お前さん自身にはあまり疫病の危険は関係ないだろう?」
「いやそういう事じゃなくて…。問題は行き先でさ…」
「どこだ?」
「清龍城砦…」
それを聞いた永蓮は笑った。
「ついにあの場所から依頼が来たのか!珍しい…この日帝国の唯一の独立した街から来るなんて面白いこともあるものだ!!」
私はイラッとして返した。
「他人事だから呑気なこと言わないでよ!!清龍は日帝国に見限られた貧困街よ?!しかも無法地帯で危険なのに!あんな場所誰が行きたいのよ!!」
「それも別に雀には関係ないだろう?150年死ぬことのない鬼の子なのだから」
そう言い捨てると永蓮は私の部屋から出て大きな声を出した。
「幸!朝のお茶を頼む!」
遠くから女性の声が聞こえた。
「今すぐ用意致しますー!」
彼女はこの社に住み込みで働いている幸だ。
何故か永蓮の元で働いている。
「永蓮…嫁入り前の娘が貧困街に行くのはどう思うのよ?」
私は永蓮に聞いた。
「かなりよくない、お前さんは除く」
「何でよ?!」
「お前さんなら身体がバラバラになってしまっても時間をかければ元に戻るだろう?」
「それはそーだけど…」
「なら良いではないか」
食い気味で永蓮がそう言う。
今のはムカッときた。
「私だって!普通の人間と同じくらい痛みは感じるの!18歳の少女の心に傷なんて負ったら残り132年苦しみながら生きるのよ?!分かる?!」
「何度も聞いておるから分かる」
永蓮は澄ました顔で言いやがった。
「もういい!!清龍でもどこでも行ってやるわよ!」
そう言って私は早速支度を始めた。
「そうそう、あの辺は人通りが極端に少ない。治安が悪いからな。だから、いくら死なないからって空腹で行くでないぞ。お主、もう5日食べてないだろう。人間と身体の構造は変わらんのだから、途中行き倒れたら助けてもらえるのはいつになるか分からん。」
私は永蓮の忠告を聞き流して
「分かった分かった…」
といつも通りの準備を済ませ縁側から出ていった。
「飯を食っていかんかー!」
永蓮は後ろから私にそう言っていたらしいが、無視して出発した。
そして初都からでている鯨油機関車で双京へ向かった。
それから双京から東へ30kmの清龍へ足を運んだ。
そして現在…
行き倒れた。
しまった。やってしまった。
死にはしないが、辛い。空腹感は何となくずっと感じるから。
ザッザッと砂利道を歩く足音が聞こえる。
清龍まで残り5km。
危ない輩がいてもおかしくない。
足音が近づく。危ない輩だった場合の覚悟を決める。
足音が私の横で止まった。
「大丈夫…ですか…?」
優しい男の声。
力を振り絞って顔を上げる。
その男と言うより少年は青い髪をしていた。
「あの…助け…て…」
私の意識はそこで溶けて無くなった。
二つの世界は並行しているのか、はたまた時系列があるのか。
それは私にしか分からないけども。
とにかく、この物語は終わっていく…。
なーんてね、中二病が…ぱないの!
清龍城砦は、「九龍城砦」と私の好きな紅茶「セイロンティー」がモデルとなり作られました。
街の大きさや人口は物語が進むにつれ明確になり、謎も出てきます。
さて、この街で流行っている疫病はなんなのか。
それはまた次回。