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自作小説倶楽部 第15冊/2017年下半期(第85-90集)  作者: 自作小説倶楽部
第85集(2017年7月)/「太陽」&「船」
4/38

03 紅之蘭 著  船 『ハンニバル戦争・スキピオ』

【あらすじ】

紀元前二一九年の第二次ポエニ戦争で、カルタゴのハンニバルはアルプス越えをしてローマの庭先に侵入した。南進して南イタリアでカンナエの戦いを行い、迎撃に出たローマ軍を壊滅させた。続いてローマを包囲したのだが、豪胆な元老院議員ファビウスの籠城策に根負けして撤退。そしてついにスキピオが表舞台に立つ。

挿絵(By みてみん)

挿図:奄美剣星



 カルタゴは海洋国家である。

 そのカルタゴをローマは二十三年かけて講和の席に就かせた。この時点でのカルタゴの失地はシチリアだけだった。ところが、傭兵に頼った国防軍であったのに、戦費がまかなえず、傭兵たちに反乱を起こされ、そこを付け込まれてローマに領土をさらに奪われ、大きな失地につながった。

 ローマは短期間のうちに五重漕船百隻、三重漕船二十隻からなる大型艦船を建造し海軍を編成した。

 主力である五重漕船は、全長四十メートル、幅七メートルある。船員が三百名に対して、海兵百二十名が乗り込む。従来の海戦では、船の戦端を相手の船に突っ込ませて穴を開けるか、甲板の海兵たちが弓矢を射合ったりするものだった。ところができ星のローマ海軍は画期的なコルウウスの発明で、ライバルのカルタゴに圧勝した。

 コルウウスは甲板に設置された可動式の渡橋、跳ね橋だ。

 ローマの軍艦は敵艦に横づけさせると、そこから、海兵百二十名を斬り込ませた。もともとローマ軍は短剣を使った白兵戦に習熟していたので、歩兵同士の斬り合いになったら無敵になるのだ。

 この五重漕船を配備したローマ艦隊が地中海で睨みを効かせていたので、小型の三重漕船のカルタゴ艦隊がハンニバルと連絡をとるときは、すり抜けるようにして往来するしかなかった。必然的にローマ海軍は、地中海でも、ハンニバルの勢力圏である南イタリアとカルタゴ本国のあるチュニジアとの間を艦隊で遮断していた。

 カルタゴ本国は、補給が難しいハンニバル軍を見捨てて、ローマ海軍艦隊の手薄な、イベリア半島に潤沢な資金や物資を補給した。そのため……。

     ◇

 紀元前二二二年、ローマの執政官コルネリウス(父スキピオ)とグネウスの兄弟がイベリア半島スペインで戦死した。そこは、ハシュルドゥルパルが守る、ハンニバルの根拠地・で、ローマ本土・イタリア半島がハンニバルに蹂躙されているときも、唯一戦線の優勢であったところだ。

 軍資金を受けたハシュルドゥルパルは、多数の傭兵を雇うことができた。これを使って、ローマ将領の兄弟を敗死させたわけだ。

 執政官を失った軍団は、三分の一にまで兵士を減らしながらも、一介の百人隊長に率いられて、エルベ川を渡って、ピレネー山脈の麓にあるタラゴーナの町に逃げ帰った。そして後任のネロ執政官の下でコルネリアス兄弟の弔い合戦をしてハシュルドゥルパルを追い詰めた、しかしハシュルドゥルパルは奸計を用いて、和睦するように見せかけ、そのまま騙して逃げてしまった。

 この失態を知ったローマ元老院は新たに執政官を選出する必要が生じた。

 紀元前二一〇年の執政官選挙に立候補したのが、アシアティクス(兄スキピオ)とスキピオ(大スキピオ)の兄弟だった。この段階では名声というには経験が浅かった。だが、百戦錬磨の百人隊長たちからのコルネリアス家の信任は厚く、法令で、執政官は四十歳という規定を覆して、三十そこらのアシアティクスが執政官に、二十代前半の弟のスキピオが案察官という形をとり、当選した。

 そして補充された兵員を乗せた、イベリア行きの五重漕船に乗ったというわけだ。

 ローマ艦隊は、港湾都市タラゴーナに入った。

 こうして渡し板から青年将領スキピオが降りた。

 この一歩はローマにとって大きな一歩だった。

     (船、了)

【登場人物】

.

《カルタゴ》

ハンニバル……名門バルカ家当主。新カルタゴ総督。若き天才将軍。

イミリケ……ハンニバルの妻。スペイン諸部族の一つから王女として嫁いできた。

ハシュルドゥルパル……ハンニバルの次弟。イベリア半島での戦線で活躍。

マゴーネ……ハンニバルの末弟。将領の一人となる。

シレヌス……ギリシャ人副官。軍師。ハンニバルの元家庭教師。

ハンノ……一騎当千の猛将。ハンノ・ボミルカル。ハンニバルの親族。カルタゴには同名の人物が二人いる。第一次ポエニ戦争でカルタゴの足を引っ張った人物と、第二次ポエニ戦争で足を引っ張った大ハンノがいる。いずれもバルカ家の政敵。紛らわしいので特に記しておく。

ハスドルバル……ハンノと双璧をなすハンニバルの猛将。

.

《ローマ》

コルネリウス(父スキピオ)……プブリウス・コルネリウス・スキピオ。ローマの名将。大スキピオの父。

スキピオ(大スキピオ)……プブリウス・コルネリウス・スキピオ・アフリカヌス・マイヨル。大スキピオと呼ばれ、ハンニバルの宿敵に成長する。

グネウス……グネウス・コルネリウス・スキピオ。コルネリウスの弟で大スキピオの叔父にあたる将軍。

アシアティクス(兄スキピオ)……スキピオ・アシアティクス。スキピオの兄。

ロングス(ティベリウス・センプロニウス・ロングス)……戦争初期、シチリアへ派遣された執政官。

ワロ(ウァロ)……執政官の一人。カンナエの戦いでの総指揮官。

ヴァロス……執政官の一人。スキピオの舅。小スキピオの実の祖父。

アエミリア・ヴァロス(パウッラ)……ヴァロス執政官の娘。スキピオの妻。

ファビウス……慎重な執政官。

グラックス……前執政官。解放奴隷による軍団編成を行った。

クラウディス……〝ローマの剣〟と称賛される執政官。マルクス・クラウディウス・マルケッルス。

レヴィヌス……ブリンティシ執政官。寡兵でマケドニア王国に睨みを利かす知将。

ネロ前執政官……スキピオの前任の執政官。

.

《マケドニア王国》

フィリッポス二世……アンティゴノス朝の国王。カルタゴと同盟する。

.

《シラクサ王国》

アルキメデス……ギリシャ系植民都市シラクサの王族。軍師。

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