表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作小説倶楽部 第15冊/2017年下半期(第85-90集)  作者: 自作小説倶楽部
第86集(2017年8月)/「氷」&「城」
11/38

05 雪波 著  氷・城 『氷の城』

挿絵(By みてみん)

素材:足成/笠井枝理依 さん他/© いしだひでヲさん




「ありの~ままの~ふふふん、ふふふふ~ふ~ん……」

 最近の私は氷の城作りに精を出している。

 別に、本物を作ってるわけじゃないけど。

 スマホのゲームアプリに「まーいんクラフト」ってのがあって、ハマってしまった。色んな種類の立方体、土とか岩とかレンガとか、ガラスとか植物もあるんだけど、それらを組み立てて世界を作る、仮想のブロック遊びだ。それには、サバイバルモードというゾンビとかが出てきてやっつけながら世界を作るモードと、ただ、作るだけのクリエイティブモードがある。私が気に入ってるのはクリエイティブモードだ。サバイバルだと、とろい私は一瞬でゾンビにやられて、手持ちの材料を全部失ってしまうから。落ち着いて遊びたい私はクリエイティブしかやらない。

 でも、ゲームにお金がかけない主義の私は、これらを体験版でやっている。数分に一度、30秒程度のCMが入ってしまうのが難だ。イライラするが、その間は待つしかない。そんな中で、大物を作っている。

 それは、氷の城。

 なんでそれを作ろうかと思ったかは、忘れた。適当にブロックを重ねてたら、氷が綺麗で涼し気だったからじゃないだろうか。とにかく、時間をかけて丁寧に作っている。パートに行く電車の中、家事の合間、子ども達が寝静まってから、深夜までかけて。凝り始めると止まらない性格なんで、雪の女王が出てくるディズニーのアニメの動画を見ながら、リアルに再現しようと研究もした。

 そして、それは今日完成する。最後の地下室を整備すれば、完成。

 これ、誰かに見せたいわ。旦那に見せたら、家事さぼってたんじゃないかって思われるかしら?子供たちに見せたら、ハマって勉強しなくなるかしら。私の子だから、絶対だめだわ。

あ、そうだ、これを動画にしてYouTubeにアップしちゃおうかしら。

そんな事を考えながら、パートへ行くための身支度を整えて、家の鍵を閉める。最寄りの駅まで5分、早くスマホを開きたくて、いつもより早足になる。改札を抜けて駅のホームに立ったところで「まーいんクラフト」を起動。

 さてさて、最後の地下室の床の岩を平らに整地しましょ。まずは、全体を2ブロック掘っていこうかな。それから、氷を敷いていこう。

 ブロックを削るときは、それを指で少し長押しすると気持ちの良い砕け方をする。手元が狂って余計なものを削らないように、夢中になって岩を掘り進める。

「1番ホームに~、〇〇線○○行が到着しまーす。白線の内側にそって……」

 あ、電車がくる。

 あとちょっと、この角のところだけ削っておきたい……

「あっ」

 床の底に穴が開いて、オレンジ色の光が見えた。

 掘り過ぎた!マグマが出た!ヤバイ、塞がないと、城が駄目になる。急いで補修しようとするけど、今持っているブロックは岩だ。全くマグマの勢いを止められない。ドロドロと広がるマグマが床全面を覆いつくそうとしている。そして、周りのブロックに燃え広がっていく。

「あっ、ぎゃ――! 溶ける!」

 慌てて氷ブロックに持ち替えて、マグマを固めていく。落ち着いて、落ち着いて。

 なんとか消火したが、被害は大きかった。地下と1階の舞踏会ホールが壊滅状態だ。ため息をついて顔を上げると、電車はもういない。

 乗り遅れた……遅刻だね。あと、ホームにいる人の視線がちょっとだけ痛い。大きな声出したかしら。少し、ゲーム自制した方がいいかも。

 私は反省した。

     了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ