第5話
くっ!このままじゃまずい…!
館内に入り込む妖怪の大群。
それを迎撃する旦那様を筆頭に妖怪の大群に突っ込んでいく。
「神槍…スピア・ザ・グングニル!!」
「英槍!ゲイ・ボルグ!!」
それを旦那様と一緒のタイミングで敵に投擲する。
緑の槍と紅い槍が混ざり合い輝きを増して妖怪の大群を真っ二つに切り裂く。
直線状にいた妖怪は消し炭となる。
妖怪共の進軍が一瞬止まる。
その隙を俺は見逃さない。
俺は宙にジャンプする。
眼下に広がる妖怪共に目を合わせ…視界の妖怪共を破壊した。
飛び散る妖怪の肉片…飛び交うナイフ…倒れていく執事…まさにここは…戦場であった。
しかし玄関ホール内に入られてはいないところを見ると劣勢ながらも必死な執事達も相当頑張っている。
旦那様は…前線で無双しているが完全孤立状態…クリス様は魔法による後方支援…まぁ魔法の威力が桁違いなんだが…。
ちなみに俺も魔法を覚えようとして魔道書を持ち出した…のはいいが魔法暴発…館の二分の一を破壊してしまった。
まぁ今はそんなこといいとして…。
「魔剣…ダーインスレイヴ…血を吸い尽くしてやる!」
俺は刀を抜く…。
前にいる妖怪から斬っていく。
血を吸って鈍く輝く刀。
「もっと欲しいとよ…!」
眼に映る妖怪を斬って斬って斬りまくる。
血を吸って紅く輝く刀。
気付けば俺の周りには敵しかいなかった。
「いっつの間にかっこまれてんだ…」
これぞ四方八方ってか…。
後方の味方からはだいぶ離れたな…。
その時…俺の横の敵が根こそぎ吹き飛ばされた。
「ちっ…貴様に遅れを取ってしまったとはなぁ…」
「旦那様…遅いですねぇ…」
「嫌味なんぞ聞かんぞ…」
俺は刀を…旦那様は槍を…構える。
敵はまだ半数は残っている…。
「アレス…分かっているな…」
「旦那様も…ですよ…娘を泣かせるなんて…許しませんよ?」
「貴様こそ…お前がいなくなればこの紅魔館のトップが2人もいなくなることになる…それは許さんぞ!!」
「分かってますよ!!」
2人はそれぞれの方向に走り出す。
目の前の敵から順に斬っていく。
背後から来る敵は破壊する。
刀を横に薙げば円を描くように敵は胴と下半身をずらす。
「キリがねぇ!」
敵の一体を縦に真っ二つにしたところで背後で膨大な妖力を感じた。
「なんだ?」
妖力の元へと走っていく。
「…クリ…ス様…」
膨大な妖力の主は旦那様…その目の前にはクリス様に刃を突き立てる旦那様…。
「旦那様!何をしているんですか!」
ゆっくりこっちを向く旦那様…だが目は虚ろで焦点が合っていない。
周りにはクリス様を守っていたであろう執事達の無残な姿。
「操られている…一体誰に!」
その時…旦那様の目がハッキリと俺を見据えた。
「ア…レス…私を…コロセ…こ…の体は…す…でに…乗っ取られて…イル…」
憑依タイプの能力持ちか…。
「旦那様…約束は…」
「は…ヤク…私…の…体の…主導権が…私に…アル…相手に…モドル…までに…コロセ…ハヤク!」
俺は旦那様の体に目を向ける…。
「言い残すことは…」
「お前は優秀だ…自慢の部下だった…これが私の最後の命令だ!娘を!レミリアとフランドールを!!この館を!!頼んだ…」
誇り高き吸血鬼の頬に涙が流れ落ちる。
「Certainly…The master…Take a rest(もちろん…旦那様…御休みなさいませ)」
俺は旦那様の肉体をなるべく残すよう吸血鬼の不死の体を能力を使い不死では無くなるようにした上で心の臓に刀を突き立てる。
「Your last order…I carry it out by all means…(貴方の最後の命令…必ずや果たします)
」
旦那様は最後…笑ったような気がした。
クリス様の横に並べる。
「さて…頼むと言われたからには…やり遂げなければならないな…妖怪共…生きてこの地を出ることが出来ると思うなよ!!!」
俺は後ろで戦意喪失している執事達に旦那様達の遺体を守るよう言い両手に槍を創造する
「スピア・ザ・グングニル…ゲイ・ボルグ…てめえらの行き先は…黄泉への道だ!」
そこから俺は走り1人妖怪の大群に突っ込んだ。
突き立て…薙ぎ…斬り飛ばす。
徐々に日が昇っていく。
赤く光る地面を踏みしめ疲れた体に鞭を打ち…傷ついた体を引っ張る。
空が明るくなった頃には…周りには何もいなくなった。
「旦那様…クリス様…終わりましたよ…だいぶ…執事も減りました…ですが…旦那様に頼まれたことをせずにいては…死んだ時また喧嘩になりますね…クリス様とフラディスに止められてしまいます…こちらはもう…そんな日は来ないでしょうが…」
完全に朝になった朝日を見つめ…目を細める…。
やっと終わったか…。
「アレスさん…」
後ろから声をかけられ振り向くと傷だらけの美鈴と後ろに続く執事やメイド達。
「今日…戦死した奴らを全員弔うぞ…妖怪どもは…頼む…お嬢様達のところに行ってくる」
俺はそう告げると館に向かい歩く。
血により更に赤くなった紅魔館…地面でさえ…血に濡れ赤く染まっている。
この日…この館の主とその伴侶…古参の執事とその他大勢の執事とメイド…合わせて180の者が散った。
紅魔館を襲った敵の数は1200…圧倒的な数により紅魔館は壊滅寸前まで追い込まれた。
結果は180の者が散った悲惨な勝利…これ程悲しく…虚しき勝利は…生き残った者の心に鎖となって巻き付いた。
親を亡くし悲しむ者…恋人を亡くし乱心する者…。
この先この様な戦いがあれば…己を犠牲にしてでも皆を守る…そう心に決めた執事は再度…朝日を見つめ館に消えてゆく。
お嬢様達を守り…紅魔館を守る。
それが…親バカと結んだ約束だからと。
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挿絵です!是非見ていってくださいね!