第4話
早くもさらに五年経った。
その間は特に何かあったわけでもなく…そう言えば気づいたんだが館の外は街だが何故妖怪が入ってくるのか?と聞いたところどうやら扉の先は魔法により二箇所につながっているようだ。
どうりで妖怪が入れるわけだと納得した。
あと執事長の他にメイド長なるものができた
名を紅美鈴武芸の達人だ。
俺も手合わせ願ったがさすがは武人…組手では庭から二階の窓へ飛び自室入りすると言う奇行を俺は成し遂げた。
まぁただ蹴られ飛ばされた場所が俺の部屋だっただけなんだが。
俺の負担が減るのはいいことだ。
更に飛ばしてもいいか?ダメ?じゃあせめて何か挟めだと?しかたない…フラン様が初めて話した時の話をしようか。
フラン様3歳の時。
「アレス…フランはどうだ?」
「どうだと言われてもまだ赤ん坊なので何もしないですよ…ま、妖力はあなたに似て馬鹿みたいに多いですが」
本当のことだこの野郎…寝返りで廊下の端まで殴り飛ばされたわ。
「む…フランに会いに行くぞ」
「今は睡眠中です…旦那様が行けば泣きますよ…えぇ必ず泣きます…旦那様といる時にあやすのは俺なんですから…」
「父が娘に会いに行って何が悪い!」
「っていって五分前に会いに行って泣かれたのは誰ですか!」
「喧しい!俺は行くぞ!娘の為に俺は壁を越える!」
「隣の部屋にいるんですから壁を越えないでください(物理的な意味で)天井か壁を修理するのも俺たちなんですから」
「とにかく…行くぞアレス…」
「次泣かしたら銀のナイフでこの部屋埋めますから」
「お前はフラディスと違って厳しいな」
「旦那様限定ですので心配なさらず」
「何か恨みでもあるのか?」
「それはもうたくさん」
「フラディスよ…早く帰ってこい」
「だったら元よりフラディス新人育成を命じなければよかったんですよ」
「まぁいい…」
そう言って出る旦那様…についていく俺。
隣の部屋に入るとスヤスヤ寝ているフラン様
「いつ見ても可愛いなーよちよちよちよち」
「後ろから見てたら吐きそうですね」
「お前は俺に恨みでもあるのか?」
「山より大きく」
でも確かに癒されはする。
旦那様が…キモい顔になるのもわかる気がする。
「あー…おとーたん」
もう喋るのか…ん?喋る?誰が?
「フ…フラン!もう一度行ってくれ!」
「旦那様…大きな声を出しすぎです」
「おとーたん…あえす!あっこ!」
「フランが喋ったぞ!一単語不満なのがあったが…よちよちよち抱っこしてあげるよー」
心の中では嘔吐虹色馬鹿野郎だよこの野郎。
「や!あえす!あっこ!」
「貴様…貴様!フランに何をしたー!!」
掴みかかってくる旦那様…改名親バカを地に沈める。
「泣いたらどうするんです?ほらおいで」
俺はフランを抱きかかえる。
「あーきゃっきゃっきゃ!おとーたん!や!あえす!あっこ」
同じ単語しか言えないみたいだが喋るのはすごいと思う。
レミリアの時はクリス様だけだった。
今この場になぜいないのか…不思議だ。
旦那様よりクリス様の方がいて欲しかったぜ
未だ地面で頭を燻らせている馬鹿よりな。
「おい…貴様…今何を考えている…」
「旦那様よりクリス様にいて欲しかったなと思っていたところです」
「貴様ーー!!表に出ろ!」
その後旦那様をボコり屋敷の庭がめちゃくちゃになり…またもやフラディスとクリス様に両名叱りを受け庭の修繕と整備を一週間飲まず食わずでやった。
何故か友情に芽生えたが抱きつかれそうになったので屋敷のプールに沈めた。
まぁこれくらいだ…。
でフラン様が生まれた年から数十年経つ。
フラン様もレミリア様も……何故か幼女以上には成長していない。
不思議だ…何が不思議ってそんなに容姿が変わらないのがとても不思議だ。
フラン様は能力のコントロールを覚えレミリア様は能力を開花させた。
運命がなんたらだったが覚えてない。
よくわからん能力だったのは覚えているが。
今は
「アレスーーー!!!」
ドォォォォーーーンッッッッ…。
フラン様の教育をしている…ガク…。
「死んだふりしてもダメだよー!!」
ドスン!
「ゲホッ…………お…お嬢様…手加減をしてください…」
「めちゃくちゃ手加減したよー!」
ならもうちょっと改善の余地ありですね…。
このまま行けば俺は死んじまいますよ…。
あぁ…そう言えば朝食……夜だが…旦那様達の朝食の用意をせねば…そのあとは新人育成に…掃除…そして執事会…その後お嬢様方の勉学と買い出し…やることが多すぎて頭パッパラパーになっちまう…。
「お嬢様…とりあえず御朝食です」
俺はフラン様にそう伝えたあと新人の執事やメイド達が集まる玄関ホールに向かう。
現在の執事…メイドは過去最高の170人。
人間から妖怪から使い魔まで…ありとあらゆる種族が集まる。
「さてと…今宵は何人自殺志願者が集まることやら」
……今すぐ玄関ホールから回れ右してもいいか?いや許可を求めている訳ではない…。
玄関ホールには相当な数の自殺志願者…またの名を新人達がいた。
ん?普通逆だろ?って?知らん!
「今回お前らに教えることになる執事長のアレスだ…ちなみに質疑応答はしない主義だ…嫌いな物は…この館の旦那様だ、以上!」
ポカーンとしているな…。
ふふふふ…腕がなる…。
庭にて
「そこ!ナイフの振りが甘い!お前は足音が大きい!そこ!ナイフを俺に向けるな!」
今回はどうやら57人の志望者が集まったようだ。
一体どこから集めている?
俺はまずここから気になるがな。
まぁ今は夜だから庭に大量の松明をおったてて勤しんでもらってるが…さっきから俺に2本ほどナイフが飛んでくる。
全て指で掴み投げ返してるがって…。
「なんであんたがいるんです?フラディスさん」
ほんとに何でいるんだよ…。
「旦那様に言われてな…邪魔をしろとのことだ」
「フラディスさん…今すぐニンニクと銀と白木の杭を持ってきてくださいます?」
「何をするつもりだ」
あの親バカを一度冥土に旅立たせるだけだ…なぁに…すぐに戻ってくる…トドメは刺すが
パリーーンンッッッ……。
「なんだ!」
「アレス!ここにいろ!旦那様達の様子を見に行ってくる!」
そう言って消えるフラディスさん。
「全員!訓練止め!静かにしろ!」
そう言うとシーンと静まり返る新人達。
だがすぐするとフラディスじゃない執事が血塗れで現れた。
「何があった?!」
「館が…ゴホッ…襲撃に…旦那様や…奥方様…が…執事達と…迎撃しています…ゴボッ…数が……多すぎます…旦那様…達が…危ない…」
そう言うとゴボッと口から血を吐いて倒れた
新人達はみんな顔を青くしてはいるが逃げ出そうとする者はいない。
すると今度は美鈴が上から降ってきた。
正確には窓を突き破ってだが。
「アレスさん!旦那様達が…」
「知ってる!侵入経路は!?数は!」
「数は魔導師と魔術師が裏門から…100ほど…正面の門からは妖怪が数え切れないほどいますよ!」
「館内には!?」
「今の所大丈夫だと思います…旦那様達は正面の門で交戦中…旦那様の部屋にお嬢様達がいてメイドが場を固めてます」
「お前はどうする?」
「そりゃー助けに行きますよ!」
「フラディスは?」
「旦那様達とは別の…裏門の守備に」
「ならお前は正門へ!俺は裏門に行く!新兵共を連れてけ!」
後ろで顔を青くする新人達。
どうせここにいてじっとしてたらフラディスに殺されるぞ?
俺は半分を引き連れてフラディスの加勢に行く。
「お前ら!初陣だからって逃げたら連帯責任!全員その場で消すぞ!」
ヒィィ…って聞こえた気がするが気のせいだ
「これは……」
裏門に着くと死屍累々の執事達…おそらく数で押されたであろうことが見て取れる。
なんせ魔術師や魔導師達の屍の方が圧倒的に多いからな。
壁には穴が開いており既に侵入されたものと思っていいだろう。
「チッ…フラディスさんは何を…フラディスさん!!」
俺は穴の近くで倒れているフラディスさんを見つける。
「アレス…か…私はもう…ゴホッ…ダメだ…はぁ…はぁ…旦那様達を…」
頼む…と言いたかったんだろうが息絶えていた……。
もちろん…頼まれたぞ…。
「お嬢様達の保護を優先する!行くぞ!」
俺は穴から屋敷内に入り旦那様の部屋へ向かう。
「調子に乗るなよ…侵入者共!」
館内は惨劇だった。
おそらく吸血鬼に仕える悪魔共めって感じで廊下を曲がる度に執事達の骸が転がっている
魔術師や魔導師の遺体も転がっている。
もうすぐで!旦那様の部屋!
俺は旦那様の部屋にたどり着いた。
「大丈夫か?」
メイド達は結構な数いた筈だが今は半数まで減らされていた。
「はい…お嬢様方は中に…あの?旦那様と奥方様の方は?」
「奥方?クリス様も戦場に?」
「はい…」
「ここは任せられるか?」
「分かりました!」
それを聞きすぐに正面玄関に向かう。
まだ玄関ホールには入ってきていないだろうと思うが実際の所まだ分からん…。
旦那様の部屋からは近い筈だ…この角を曲がれば!
「旦那様!」
そこは怪我人で溢れていた。
旦那様とクリス様もいる。
「ご無事ですか?」
「あぁ…フラディスの方は?」
「………………亡くなりました…」
「…そうか…惜しい者を亡くしたな…」
「お嬢様達は無事です…」
「そうか…今はクリスが防御魔法陣を引いてくれたお陰で一時休戦できているが…こちらは数が多い…千に値するかも知れん…」
そんな馬鹿な!一体誰が率いて…。
「こちらの…兵力は?」
「先で3分の2を失った」
「アレスさん…すいません…」
「どうした?」
「わたしが無謀特攻してしまい…新人の方達は…」
「そうか……」
こちらは100にも満たない兵力…相手はまだ500は残っているか…どうすれば…。
ズンッッドンッッドゴゴゴンンンッッ!
「扉が破られただと?!クリスの防御魔法が!?」
雪崩のように押し寄せる妖怪…ナイフで迎撃する執事達…両軍…どちらに軍配が上がるのか…。