第1話
俺は目が覚めた。
「ここは…どこ?」
「神社よ」
声のした方を見るとあの時邪魔をしてくれた妖怪がいる。
「消えてくれない?」
俺は左目を向ける…あれ?何も起こらない…何でだよ…。
「消えろ…消えろよ!なんで発動しないんだよ!」
「それはあなたの左目が封印されてるから…とでも言っておくわ」
「封印したやつは何処にいやがる!今すぐ消してやる!何処だ!」
「落ち着きなさい…巫女は死んだわ…あなたの左目に封印を施したその場でね」
「そうか…はは…好都合だよ…じゃあ何で!何で俺の能力は戻らない!」
「それは私にもわからないわ」
俺は右目を開き雷の矢を発生させる。
「俺には右目があるグッ…ワッ…」
右目を発動した瞬間俺の左目にまるで電撃が走ったような灼けるような痛みがくる。
「なにを…した…」
「死人に口無しよ…どうしても聞きたいなら巫女でも生き返らせて聞けばいいじゃない」
「俺は出る…この里人から忌み嫌われてきた能力で…あいつらが蔑んだこの能力で…里人どもは消す…里も消す…」
「そんなことする前に私があなたを殺すわ」
その瞬間ものすごい殺気が俺の方に来た。
「左目の封印を解け」
「無理よ…」
「ならばこうするまでだ」
俺は女の手に触れ能力を発動させる。
「今のあなたならこんなものね」
手に触れた所だけが軽度の火傷になっただけだった。
「…もういい…親を殺し今まで蔑んだ奴らは殆ど骸だ…」
俺は自分の中で何かがすでに壊れている。
「あなたはこれからどうするの?」
「この世界を壊す」
「させると思って?」
お互いの殺気が部屋を震えさせる。
「俺は左目の能力を取り戻す…それまではおとなしくしておくよ…」
俺は布団を出て外に出る…明るい空…白い雲…全てが鬱陶しく思える。
「お前の命もいずれ貰うぞ…」
「あなたが私の理想に邪魔になるなら…仕方ないわね…私も全身全霊を持って受けて立つわよ」
俺は妖怪に背を向け歩き出す。
原作500年前の…幻想郷。
いつか…お前には死を見せよう。
俺が先に向かったのは吸血鬼が住まう大陸…西洋だ。
俺はどうやらもう人ではないようだ。
妖力が体に芽生えつつある。
俺はもとより持っている能力と戦闘センスで道行く妖怪は殺し腹が減れば食べ喉が乾けば血をすすった。
俺の中には妖怪の怨念と妬み、蔑み、狂気などの感情が渦巻いている。
その感情が心地いい…。
「この世を壊す…壊しても面白くない…ならどうする…ははは…決まってる…この手に載せればいい…地から見たこの地は大きい…空から見れば小さい物よ…いつかこの世を…この手で…握りつぶして見せよう…大妖怪よ」
俺はどこかで壊れている…俺の中でこの世は壊れている。
また妖怪か…
「消えろ」
俺は目の前の妖怪に右目を向け炎で消し炭にする。
脆いな…妖怪も人も変わらん。
なら俺は何なんだ…死す体でもなし…人か…妖怪か…。
神なんて腐ったもんにはなりたくもない。
ん?今度は人間か…。
「何をしている」
「山菜採りにございます」
俺は何も言わず手をかざす。
左手を…触れる。
「何を…」
グシャッと音を立てて骸となる女性…左目の痛みが酷くなる。
あの巫女も厄介なことをしやがったな…。
右目でさえ痛む…。
一度水面を見たとき俺の左目に封印式が現れていた。
あの巫女が命をかけて封印を施したおかげかまるで侵食する病のように封印式が広がっていく。
「このままじゃまずいな…」
とにかく急いで行かないと…俺は封印されるだろうな。
左目が完璧に封印されるな…おそらく左手でももう能力は使えない。
そろそろ国境だな…さて…これからどうやって西の国へと渡るかな。
俺はその日を野宿して過ごした。
翌朝
俺は起きてから方法を考えた。
船舶では航海士がいない時点でたどり着けない。
どうせなら距離を操れれば…距離…空間そうか!?
俺は空間を作る。
吸血鬼の館に直接…。
俺は空間より体を滑らせすり抜ける。
ほう…俺の能力は我ながらいい物をもらったと思う。
でかい…が紅い…。
俺でも吐き気がしてきそうな館だ。
なんで吸血鬼の館が白昼堂々とこんな人の多い場所にドカーンと建ってるんだよ。
「門番もいない…見張りもいない…」
舐めてるのか…。
俺は門を開け中に入る。
出迎えですら誰もいない…いや…この気配…だれだ。
「何者だ」
「俺には名はない…東の国から渡ってきた」
「私の名はフラディス…この紅魔館で執事長をしている」
「へぇ〜…俺が何しに来たか分かる?」
「この屋敷に…1人で乗っ取りに来ましたか?」
「はっははは!お前は馬鹿だなぁ…」
「何を…」
「この俺…名もないただの妖怪のなり損ないは…この館の主に仕えたい所存でございます」
「貴様何を言って」
「もう一度言う…この館に仕えたい…西の国最強の一角であらせられる吸血鬼殿に仕えたい所存です」
「分かった…だが今日は無理であろう」
「いや…今終わった……疲れたぞ」
え、もう館の外見といい…この男といい…毒気の抜かれることこの上ない。
「で…お前は名もない妖怪のなり損ないだと言ったな…にしては妖気が多いな…」
「そうでしょうね…あなた様…お名前は?」
「グランディア・スカーレット…妻は現在出産にて会うことは出来ん」
「そうですか…では私は不採用…と言うことで」
「いや…フラディス…こやつに合う執事服を用意してやれ…そして今日よりお前の持つ物を全てこやつに叩き込め」
「では旦那様…採用…と言うことでよろしいのですか?」
「そうだ」
「なればグランディア様…これより私は忠誠を誓い旦那様のお役に立てるよう日々精進していく所存でございます!」
「名前がないと言っておったな」
「はい」
「アレスと名乗るが良い」
「と言われますと?」
「お前の名だ…アレスと名乗れ」
「はっ!」
俺は封印を解くためにお前らを利用してやるよ…。
「旦那様…あの半妖…信じるのですか?」
「来るもの拒まず去るもの追わずだ…だがあの剥き出しの殺気とある衝動…彼奴が暴れればお前は止められるか?フラディスよ」
「あの半妖に掛けられている封印が3分の2を超えれば恐らくは…今の5分の1の封印では恐らく足元にも及ばないかと」
「ならば彼奴を手懐けよ、そしてこの館随一の執事として実力者としてな」
「封印は?」
「私が解くが…裏切るようなら息の根を止める」
「ではこのフラディス…必ずや半妖…手懐けて見せましょう」