ようこそ、デッドワールドへ
第2章 「ようこそデッドワールドへ・・・」
宙に浮いて体からどんどん離れていく和樹は急に意識がなくなり気がつくと何もない小さな部屋の真ん中に和樹は座っていた。
和樹「ここは・・・どこ?」
和樹「たしか事故で死んで・・・それから・・だめだ思い出せない。」
部屋のまわりを見渡すと何もなくドアだけがポツリとあるだけだった。和樹は少し不安になりながらドアを開けその部屋を出た。部屋を出ると真っ白な空間に大勢の人が何かに並んで大行列になっていた。近づくと最後尾の所に警備員のような人がいる。
警備員「はい、ここが最後尾なので並んでお待ちください。」
和樹は不思議に思いながらも並んだ。和樹はたまらず自分の前に並んでいる人に聞いてみた。
和樹「これは何の行列なんですか。」
前に並んでる人「いや何かわからないけど、どうもみんな一度死んでここにいるみたいだよ。実は私もさっきガンで死んだんだよ。」とその人は不思議そうに言った。
それから少しずつ前に進みながらその人と何で死んだのか、ここはどこなのかなどを話していた。進んでいくと大きな教会に行列ができていることがわかった。
だが、何もへんてつもない教会に和樹はあることに気付いた。
和樹「こんなに人が並んでいるのに教会から出て行く人が一人もいない」
確かにざっと行列を見る限り500~600人はいるが教会に入った人は誰1人も教会から出て来なかった。そんな事に気付いても和樹は不思議と気にしなかった。どんどん教会に近づきついに自分の順番が来て教会の扉がゆっくりと開いた。教会の中は静かで並んでいた人達は誰もいなかった。いるのは1人の神父と左右にドアがあるだけだった。
和樹はその変な教会の雰囲気に初めて恐怖のようなものを感じた。
神父「次の者は前に・・・」
その言葉に和樹は恐るおそる従い神父の前に立った。
神父「私の質問に応えなさい。」
和樹「・・・はい」
神父「名前は・・・」
和樹「相川和樹です。」
神父「死因はなんだ。」
和樹「バイクの事故です・・・女性の霊に殺されました。」
神父「そうか・・・では和樹今お前には選択肢が2つある。1つは現世に未練や恨みがある場合現世に戻り霊として漂うか。もう1つは我々の世界の住人となり新しい生活を送るか・・・選びなさい。」
和樹「・・・」
和樹は黙って眉間にしわを入れながら考えたが、答えを出すのには時間は掛からなかった。
和樹「ここの住人になる。現世の生活には飽きていたし、未練も恨みも無いからこっちの住人になって第二の人生を送った方が面白そうだ。」
和樹は少し笑って答えた。
神父「分かった。では右の扉から行きなさい。」
神父が言うと和樹は扉の前に立ち扉を開けた。扉を開けると真っ白い空間が広がっていた。和樹が教会から出た時神父が、
神父「第二の人生せいぜい気を付けなさい。」
和樹が声に振り返った時には教会と扉は消えていた。和樹が前を向くと今度はバス停がポツンと立っていて、バスも止まっていた。
和樹は吸い寄せられるようにバスに乗り込んだ。バスの中には20人ぐらいの乗客が乗っていてバスはゆっくりと走り出した。窓の外は深い霧に包まれてどこを走っているのかわからない状況だった。
走行してしばらく経つと霧が晴れていき、前には大きな門が現れた。バスは門に入りある建物の前に停車した。建物の名は「死役所」(しやくしょ)。和樹と乗客は建物の中に入っていった。中は現世の市役所の雰囲気と変わりはなかった。
職員「それでは、皆さんこちらの用紙に記入し、受付をお願いします。」
そう言うと職員の人は全員に用紙を渡した。用紙の記入欄には、氏名、生年月日、死因、現世での住所を記入する欄があり和樹は記入し受け付けに行った。
受付員「こんにちは、用紙を拝見いたします。」
和樹「はい。」和樹が用紙を渡す。
受付員「相川和樹さんですね。え~と死因は事故死で住所は〇〇県〇〇市ですね。それでは、現世での和樹さんの財産を確認して住民登録しますのでしばらくお待ちください。」
和樹がしばらく待っているとアナウンスがなる。
アナウンス「相川和樹様、相川和樹様、登録が終了しましたので5番受付までお越しください。」
和樹が5番受付に行くと、
受付員「お待たせいたしました。こちら住民カードになりますので無くさないようにお持ちください。この後別室で住人説明会がありますので必ず出席してください。」
職員「それでは新規の住民の皆さん説明会がありますのでこちらの部屋にお集まりください。」
和樹と他の新規住人は別室に入るとメガネを掛けたスーツ姿の温厚な感じの男性が立っていた。
徳丸一二三「皆さん席についてください。」和樹達は机に座った。
徳丸一二三「私は皆さんにこの世界のルールを説明する、徳丸一二三といいます。どうぞよろしく、それでは説明に入る前に私から一言・・・」
徳丸一二三「ようこそ、デッドワールドへ。」
第2章 「ようこそ、デッドワールドへ・・・」終わり